住宅街を抜けると、種苗の植え付けのため耕起され黒々とやわらかな畑が広がっています。その一角に角田みどりさんこだわりの畑があり、そこだけは藁が一面に敷き詰められていました。
「この藁は、地温を一定にし、乾燥を防ぐために敷いているの」と角田さん。
訪れた3月下旬は端境期で、作物の植え付けを待つ畑にはゆったりとした空間がありました。
それでもムラサキサヤエンドウ、グリーンピース、のらぼう菜、ニンニク、ネギ、ジャガイモ、葉ネギなど10種類近くの作物が見られます。
この日、収穫の真っ最中だったのは、のらぼう菜。関東の伝統野菜で虫に強く、育てやすい野菜だそうです。また、自家採種をおこなう角田さんにとって、他のアブラナ科植物と交雑しにくいところも長所。
「肥料をやらないから、作物は土の栄養を求めてじっくり根を張って、ゆるやかに成長するの。だからここのは小さくてね」と言いつつも、愛おしそうにのらぼう菜に触れる角田さんでした。
角田さんが農業を始めたのは6年前。ご主人がサラリーマンをやめて、両親が営む農業を継ぎたいと相談されたことがきっかけでした。
「最初は反対しましたよ。生活ががらりと変わるし、当時、下の子どもを私立の幼稚園に入れていたから、小学校に上がるあと1年待てないかしらという気持ちでした」と正直な胸の内を明かしてくれました。
そんな角田さんですが、ご主人と話し合いの末、夫婦で農業の道に進むことになりました。今では夫妻で運営するファームGreen&Richでキャベツ、人参、サヤエンドウなど少量多品種の野菜を栽培し、販売しています。
低農薬低肥料を信条とする角田さんですが、野菜の生育状況からままならないこともあります。葛藤を抱えていたある日、自然栽培のキャベツを口にする機会があり、その甘さに感動。お客さんからの要望もあって、自然栽培を学びたいとセミナーに通い、2014年9月に夫婦の農園とは別に一人で自然栽培の畑を始めました。
「やってみないと分からないし、(野菜が)できないならしょうがないし……夫にはいい迷惑かもしれないけど」といたずらっぽく笑う角田さん。
肥料や種など何かと資材にお金がかかる農業経営。自然栽培が軌道に乗ればコンパクトな運営ができるかもしれないことも魅力でした。
「昔は農家を百姓と呼ぶくらい、土づくりから種取りまでなんでもできたけれど、今は肥料も種も買うし、農業の分業化が進んでいるでしょ。だから、農業の全体を知りたいって思ったの」と角田さん。
「このままずっと自然栽培を続けていけるか分からない」と不安を口にしつつも、「今は、やっていて楽しい。だから続けていられる」と笑います。
家族の事情により、思わぬ人生へと導かれることも多々あります。そんな人生を受け入れ、楽しみ、好奇心をはたらかせ、行動してみる。角田さんの前向きでしなやかな姿が素敵でした。
最後に別の畑にも案内してくれました。
角田さんがまいたホワイトクローバーが一面に広がり、気持ちのよいところでした。
自然栽培では雑草も、極力抜かずに栽培するそうで、「雑草も虫もただいるのではなく、意味があると思いたいの」とオオイヌノフグリ、シロイヌナズナなど一つひとつの雑草を手にその名を教えてくれました。
3人の子どもの母である角田さん。
「子どもって舌が敏感っていうでしょう? 自然栽培の野菜をおいしいって食べてくれることもあれば、これはまずいって食べないこともあるから、参考になるのよ」
お子さんは辛口の批評家でもあり、心強い支持者でもあります。
私も、角田さんの野菜を食べてみたくなりました。どんな味がするんでしょう?
ファーム Green & Rich
住所:横浜市都筑区
営業日:不定休
E-mail: farmgr.info@gmail.com
facebook: http://www.facebook.com/farmgr
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