どうしたら伝わる情報になるのか
NPO法人ピッピ・親子サポートネット(ピッピ)は、横浜市青葉区を拠点に一時保育を重視した認可保育園や学童保育、障害児・高齢者デイサービスなどの福祉分野の事業をおこなっています。
森ノオトが始める求人企画の紹介とヒアリングに伺った際に、まず相談を受けたのは、産前産後ヘルパーの人材募集についてでした。
コロナ禍の影響を受け、ピッピでは、里帰りをせずに出産、育児をする家庭が増える中で、産前産後ヘルパー派遣の要望が増えていました。ただ、人手が足りないため、すべてのニーズに応えきれない、というお話を伺いました。自団体のウェブサイトなどで、求人募集のお知らせは出しているものの、なかなか雇用につながらない、という状況が続いていました。
森ノオトが企画に加わることで、横浜市の産前産後ヘルパー事業を必要な制度として広く知ってもらうとともに、仕事の価値を伝え、担い手を増やしていく求人企画を一緒に考えていくことにしました。
働く人の声から見えてくること
経営層とのミーティングを経て、業務を担うスタッフの方たちから話をお聞きしました。大きなポイントとしては、なぜ今の仕事を選んだのか、今の仕事をしていて感じることの2点です。
「子育てして辛かった時期がある。同じようにいま、子育て中で煮詰まっている方の手助けになりたい」「自分の経験してきたことが生かせて、他の人に笑顔になってもらえる。ありがとうっていう気持ちを受け取れる」といった、単なる仕事内容では紹介しきれない思いを引き出しました。取材では、スタッフの声とともに、利用する方へのヒアリングも実施しました。
森ノオトの求人企画では、関わる人たちの声を聞きながら、その仕事の価値、働く場としての魅力を、客観的な表現で伝えていくことを目指しました。
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働く場は違っても、働く人の語りが響き合う
産前産後ヘルパーの記事企画を進めている中、ピッピの他の事業所の求人発信について相談を受けました。ピッピは、認可保育園、おやこの広場・一時預かり、子どもたちの放課後の居場所やデイサービスなど、他の事業所でもスタッフを募っていました。
これまで、個々の事業所で求人の発信をしており、今回は事業所をまたいで合同の求人企画を立てることにしました。事業所ごとに利用対象は違うけれど、現場で働く人たちに、法人として共通する思いがあるのかーー。そんな問いを立てながら、各事業所のコアスタッフが集まり、なぜここで働くことを選んだのか、それぞれが感じるピッピらしさをヒアリングする場を設けました。
スタッフへのヒアリングでは、「『恩返しをしていこう!』と思ってはたらき始めたんですけど、自分が支援するよりは、自分が受け取ることの方が大きいことに気づきました」「みんなができることを持ち寄って、ちょっとずつちょっとずつ、社会をよい方向に変えている実感があるところも、ピッピの魅力」といった思いが語られました。
各スタッフへの個別にインタビューではなく、公開インタビューの形で語りを共有することで、お互いの言葉が響き合う時間になりました。記事では、一般的な求人情報では届けることのできない、踏み込んだ内容を発信することができました。
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ウェブ記事と同時進行で、生活クラブの配達に折り込むリーフレットの制作も進めました。チラシには森ノオト記事に飛べるリンクを掲載しています。
制作したリーフレットはこちら。
このプロジェクトを協働したピッピの理事長・若林智子さんよりメッセージをいただきました。
「原点を思い起こし紡いだメッセージが、新しい一歩に」
・目の前の「困った」から始まって
人材不足が言われている福祉事業において、私たちが最も苦戦したのは「出向く支援」を担
うヘルパースタッフを増やすことでした。長引くコロナ禍で、出向く支援の必要性はますま
す高まり、外出もままならない方や周囲のサポートも受けられない方たちからのSOSに応
えたいという思いは募ります。そんな中で、2022年4月、ヘルパー事業を再編し子育て支援
に特化したピッピヘルパーケア事業をスタートさせ、まず着手したのは担い手を増やすこと
でした。
・ヘルパーの仕事
家庭に入ってケアするヘルパーの仕事は見えづらく、社会的評価も高いとは言えません。
私たちは、子育てや家事といった主に女性たちが家庭内のアンペイドワークで支えてきたし
ごとを、価値あるしごととして発信したいと考えました。そこで、「伝わることば」を一緒
に紡いでくれるパートナーとして、森ノオトさんに参加してもらい求人プロジェクトを立ち
上げました。
・「わたしの仕事」を語ること
編集長の梶田さんの「なぜヘルパーをやってみようと思ったのですか?」という問いかけに
、自身も悩んだ子育て期のことや、現場で出会った親子のエピソード、そのニーズに応えた
いというスタッフの思いが語られました。その言葉は、自分が子育てしたまちに「あったら
いいねをつくりたい」から始まったスタッフそれぞれの経験に重なり、仲間の中で響き合い
ました。
「わたしの仕事」を語ることから始めてみようと、他の事業所メンバーも梶田さんのイン
タビューを受け、そのメッセージは第2弾の求人記事として発信されました。加えて、求人
リーフレットも作成され、その結果10人の応募があり2人がスタッフとして働く仲間になり
ました。さらに、プロジェクトから1年を経た今年5月にも、「1年前の森ノオトの記事を見
て」という応募が!
自分の暮らすまちで、働きながらもっと地域を良くしたいという原点を思い起こし紡いだメ
ッセージもそのプロセスも、とても貴重なものであり新しい一歩につながっています。
森ノオトでは、持続可能な社会づくりに向けてビジョンを分かち合える団体さまとの求人プロジェクト「Hello Local Work」を行なっています。横浜市青葉区、川崎市、町田市近隣の団体で求人についてのお問い合わせを受け付けています。
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