わらべうたで子育てを豊かに! 語り手たちの会理事 菅野智子さん
参加する親子と心を通わせながら進めるわらべうたの教室。菅野さん(右)は赤ちゃん一人ひとりに励ましの声をかける
【リポーター養成講座受講生修了レポート:梶田亜由美】赤ちゃんを連れて出かけたわらべうたの教室で、懐かしく心がぽかぽかする幸せな出会いがありました。何世代にもわたってうたい継がれてきたわらべうたは、いまも古びることなく子育てを豊かに、楽しくしてくれます。青葉区を拠点にライフワークとしてお話やわらべうたを伝えている菅野智子さんに、活動への思いをお聞きしました。

「つくしは つんつん でるもんだ♪ わらびは わらって でるもんだ♪」
4月8日、大場地域ケアプラザで開かれた「とっぴんぱらり」。毎月一度のわらべうた教室の始まりです。菅野さんの声は、みんなの胸にすーっと入りこむとっても優しくて心地のいい音色。一人ひとりに語りかけるような優しさがこもっていて、赤ちゃんでなくても心が穏やかになります。

「とっぴんぱらり」でわらべうたを伝える菅野さん(右)。表現の豊かさに語り手としての経験がにじむ

「とっぴんぱらり」でわらべうたを伝える菅野さん(右)。表現の豊かさに語り手としての経験がにじむ

菅野さんは、26年前からお話の活動を続けてきた語り手で、来年40周年を迎える全国組織「NPO法人語り手たちの会」の理事でもあります。わらべうたの教室を始めたのは2008年のこと。お話の会を開いていた地域の保育園から声がかかり、半年間0歳児の保育のお手伝いをすることに。受け持ったのは夕暮れ時で、ちょうど赤ちゃんが寂しさを募らせる時間帯です。

 

泣きじゃくる赤ちゃんをベテランの保育士さんが優しく抱き、わらべうたであやす場面を目にしました。心を込めて歌う穏やかなメロディに、赤ちゃんが心を落ち着かせていく……。そんな様子を見て感動したそうです。

 

「わらべうたを知っていたら、私の子育てはもっと豊かになったはず。子育て中のママたちに伝えなきゃ」。そんな思いで、すぐに教室をスタートさせたのです。

「とっぴんぱらり」では、四季にちなんだうたを手遊びとともに紹介しています。初めて聞くうたがほとんどかもしれませんが、口ずさみやすい優しいメロディのものばかり。私自身、初めての子育てで、息子のあまりの泣きっぷりに、どうあやしたらいいのか途方にくれる日々もありました。

 

そんなときに出会ったわらべうた。赤ちゃんを抱いて散歩しながら、教わったわらべうたを口ずさむと、息子は「きゃきゃきゃ」と大喜びしてくれました。お気に入りのうたは、何度も繰り返し歌いました。自然と私自身の心も落ち着いたものです。

 

季節がめぐると、わらべうたとともに当時の気持ちを思い返します。こんなに優しい豊かなうたで、おばあちゃんやお母さんたちが子どもを育ててきたと思うと、時代を超えた親の愛情を感じます。

桜の花びらに赤ちゃんたちが釘付けに。親子で楽しめる遊びをたくさん伝えている

桜の花びらに赤ちゃんたちが釘付けに。親子で楽しめる遊びをたくさん伝えている

菅野さんがライフワークとして続けているのが、お話を届ける活動です。小学校や保育園、地区センターなどで子どもたちや親子にお話の会を開いているほか、大人向けの語りの場も展開しています。わらべうたを合わせると、定期的な活動場所は16会場にのぼります。熱心な活動の原点には、菅野さん自身の幼少期の記憶があるそうです。

 

お母さんの背中におんぶされ、まんまるのお月様を見上げていたこと。お父さんの布団の中で、ぬくもりを感じながら絵本を開き、お話をしてもらったこと。

 

「大事に育てられたんだな、と折に触れて思い出す幸せの原体験です。小さいときにしっかり愛されたという記憶は、成長する土台になるんです。信頼できる人がいることで、しんどいことがあっても乗り越えて生きていく力になります」と菅野さんは話します。

 

肉声の温かい語りかけで、いまの子どもたちに幸せの原体験を重ねてほしいと願っています。「お話をすることは、子どもを愛すること。心を込めて語りかけることで、こんなに一生懸命に私のためにお話をしてくれている、と思いが伝わります」

お話についてあふれんばかりの情熱で語る菅野さん。今夏はイギリスへストーリーテリングの旅に出かける

お話についてあふれんばかりの情熱で語る菅野さん。今夏はイギリスへストーリーテリングの旅に出かける

3歳-9歳はお話を届けるゴールデンエイジだそうです。
「ハッピーエンドの幸せなお話をたくさん聞いてほしい」と菅野さん。物語の中で、主人公は困難がたくさんあっても、援助者の力を得て乗り越えていきます。体が小さく力がなくても、人の話を素直に聞く力があれば、今は一人ぼっちでも最後は幸せになれるよ。物語は、そんな励ましのメッセージを何世代にもわたって子どもたちに届けてきました。

 

「お話が子どもたちの生きる指標になることでしょう。昔話には笑い話やとんち話、本格昔話と豊かな世界が広がっています。そういった昔話をたくさん聞いて、お話って楽しいなと感じてもらいたいですね」

 

お母さん、お父さんたちに子どもとお話で遊んでもらいたいと、語り手たちの会は、2011年から山内図書館でワークショップ「おはなしごっこ012」を始めました。この事業を通じて、自分の子どもだけでなく、ほかの子どもたちにもお話を届ける人になってほしいという願いが込められています。講座の卒業生が、2013年からの「おはなしごっこ たまプラーザ」にスタッフとして加わり、地域でお話を楽しむ若い人たちが少しずつ増えています。

 

わらべうたもお話も、遠い昔から語り継がれた伝承文化です。菅野さんのお話を聞きながら、幼少期に祖母の布団の中で聞いた昔話を思い出しました。私の幸せの原体験を見つけ、亡き祖母のぬくもりを感じて涙があふれました。

 

菅野さんたちの活動によって、豊かなお話やわらべうたの文化が、子どもたちを思う心とともに次世代へと受け継がれていくことでしょう。

Information

菅野さんの主な活動場所

●とっぴんぱらり 日時:第2金曜日10:30-11:30 会場:大場地域ケアプラザ

●おはなしの森ひろば 日時:第1木曜日11:00-11:30 会場:大場みすずが丘地区センター

●空とぶじゅうたん 日時:第2、4金曜日11:00-、11:30- 第2、4水曜15:30-16:00会場:山内図書館

●おはなしのゆりかご 日時:第1、3月曜日11:10-11:40 会場:藤が丘地区センター

●おはなしごっこ012 日時:10月から3月までの毎月第4木曜日10:30-11:45 会場:山内図書館(10月に申し込み)

●おはなしごっこ たまプラーザ 日時:第4水曜日15:15-16:00 会場:たまプラーザ地域ケアプラザ(要申し込み)

*開催日が変更になる月があるため、お出かけの際は各施設にお問い合わせください。

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この記事を書いた人
梶田亜由美ライター
2016年から森ノオト事務局に加わり、AppliQuéの立ち上げに携わる。産休、育休を経て復帰し、森ノオトやAppliQuéの広報、編集業務を担当。富山出身の元新聞記者。素朴な自然と本のある場所が好き。一男一女の母。
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