東急田園都市線・たまプラーザ駅から徒歩3分。たまプラーザ中央商店街から一本奥に入った通りに、「お料理しましょ」はあります。10時から13時までが料理教室、その後14時からがカフェという、ちょっと珍しいスタイルのお店です。
私は料理が好きなものの、不器用なためどこか苦手意識を持っていました。加えて、日々仕事や他の家事に追われていると、毎日のご飯作りがだんだん憂鬱に。「もっと料理を楽しみたい」、そんな風に思っていた時に出会ったのが「お料理しましょ」です。レッスンに参加すると「料理って楽しい!」、「今晩の夕飯作り頑張ろう!」と前向きな気持ちになれるのがうれしく、それから不定期ですが通っています。
ある時レッスンで直子さんが、「お店を持つのがずっと前からの夢で、ようやく叶ったんですよ」と話されたことがありました。その言葉が印象に残っており、どうやって夢を叶えてきたのか、お店誕生までのお話をいつか聞いてみたい!と思ったことが、今回取材のきっかけとなりました。
元々食に関心があり、料理をするのも好きだった直子さん。大学は家政科に進み、卒業後は食品メーカーに勤めます。しかし会社勤めはしながらも、昔からの夢であった「自分のお店を持つ」という思いは諦めずに持ち続けていたと言います。その後結婚が決まったことを機に会社を退職。そこから直子さんは、夢に向けて行動を起こしていきます。
まずは専門的に料理の世界に関わっていくために、調理師専門学校に通います。一年間、若い学生さんたちと共に切磋琢磨しながら料理の学びを深めました。卒業後は大手料理教室に就職し、料理、パン、お菓子作りと幅広くレッスンを担当。そこでは今の料理教室につながる、教えることの基礎を学べたといいます。そうして3年間研鑽を積み、次のステップとして自宅で料理教室をオープンすることになります。
独立するにあたり悩んだのが集客のやり方です。そんな時、教室の始め方を学べる講座を知り、受講することに。そこで初めて生徒さんを募集し、教室を開催する経験をします。「5名募集のところ、ありがたいことに10名様の応募があって。その時のご縁を大切にしたくて、応募してくれた方へ、自宅で料理教室を始める時に案内メールを送らせていただく提案をしたんです」
その後初めて自宅で教室を開催します。初募集は12名。残念ながら満席にはならなかったものの、あざみ野でつないだご縁から5名の方が参加してくれました。その後は口コミで徐々に生徒さんが増えていき、月17講座、計85名枠が満席になる人気教室に。「特に大きな宣伝をしたわけではなかったので、生徒さんの口コミのお陰なんです。本当にありがたいです」と直子さん。
自宅での教室が順調な中、10年が経過します。直子さんはここでも夢の為に大きな決断をします。一旦自宅での教室を閉め、パン屋の製造部門で働き始めることにしたのです。「自分の中で弱いと思っていたパンを作る技術を磨くというだけでなく、お店を営業するにあたっての基礎知識も学びたいと思ったんです」
パン屋では、ただ作るだけではなく売るための商品作りという視点や、衛生管理、物品管理といったお店のバックヤード的なことも学べ、店舗経営に必要な土台を身につけることができました。そうして2年半研鑽を積み、2022年8月念願のお店をオープンする事ができました。
店舗で開催するようになり、レッスン数は自宅教室よりさらに増え月22講座、計132名の生徒さんが参加されるまでになりました。しかもその予約枠が、申し込み開始直後数分で満席になるというから驚きです。「たくさんの方にご予約いただいて本当にありがたいと思っています。感謝の気持ちはレッスンでしっかり返していきたいです」
レッスンのレシピは毎月新しいものを提供します。「一つのレシピを作るまでには、何十回もの試作を重ねていきます。味のおいしさはもちろんですが、毎回教室にきてよかったと思ってもらえるような、学びとなる料理のコツ、ポイントをちりばめられるようにとも考えています」。また自宅で再現してもらえることを大切にしているので、なじみのある調味料や器具などで作れることも大切にしています。「奇をてらわず、基本的なことをしっかり伝えていきたいです」
レシピが決まったら、レッスンの組み立てを考えていきます。限られた時間内で完成させ、温かいものは温かく、冷たいものは冷たくなど、それぞれがおいしくいただける状態で仕上がるよう段取りを組みます。そして机上で考えるだけでなく、必ず毎回実際の本番と同様に作業を行います。それぞれの作業にかかる時間を測り、スムーズに行えるか、今の進め方でいいのかきっちりとシミュレーションをしていくそうです。
カフェメニューは、ドリンクとケーキ、そして期間限定スイーツからなります。どれも良心的なお値段で、ケーキセットはなんとワンコイン500円!「関西人だからか、お値段も気になるので頑張っちゃいました」と笑う直子さん。もちろん味にもかなりこだわり、看板メニューのブリュレチーズケーキは、100回以上の試作を重ねて作られたものなんだとか。人気なのもうなずけます。
カフェの時間には、講師を招いて行う「ミニ講座」も不定期で開催されています。スマホ写真レッスンや美文字レッスン、片付けレッスンなど多彩な内容を、おいしいケーキやドリンクをいただきながら学ぶことができます。「新しい楽しみを知るきっかけの場にしてもらえたらうれしいなと思っています」
カフェに関しては、2名のカフェスタッフが中心となり盛り上げようと頑張ってくれているとのこと。期間限定メニューやミニ講座の企画、講師との調整、運営など仕事は多岐にわたりますが、「安心してまかせています。どんどんアイデアも出してくれて心強いですね」と直子さん。実はお二人とも、元は教室に通われていた生徒さんだったそうです。
毎日の料理作りが負担だな、料理が苦手だなと感じている人へ(まさに私のことです!)、ちょっと料理が楽になり、楽しくなるようなヒントも伺ってみました。
「作り置きがお勧めですね。何品も作らなくていいんです、ちょっと野菜を洗っておくだけでもいい。何か一つやっておくだけでも、ゼロから作りはじめなくていいから少し気持ちが楽になります。あとは一つのものを展開させていくこともお勧めです」
展開とはどういうことでしょうか?
「例えばポテトサラダを作るとしたら、ジャガイモを多めに茹でておき、ついでにマッシュポテトも作ってしまう。もしくは多めに作って、ベーシックな味付けのものと、少し味変してピクルスを入れたものも作ってみる。あとはジャガイモを多めに切ってスペインオムレツも一緒に作ってみるとか。そうやってついでの作業でめんどくささを減らしていくと、料理へのハードルが下がると思うんです」
確かにお話を聞きながら、「それなら私にもできそう!」とワクワクしてきました。
念願のお店を持つという夢を叶えた直子さん。改めてお店を持ってよかったと感じることや、今後やってみたいことはどのようなことでしょうか?
「お店を持ってよかったことは、人との出会いが広がったことですね。お店というオープンな場所なことに加え、カフェやミニ講座もしているので、そこからお料理教室を知って参加してくれる方もいるなど間口が広がり、出会いも広がりました。生徒さん同士の交流も広がっているようでうれしいですね。今後については、まずは継続していけるように頑張りたいです。何年やっているの?と聞かれたとき、○○年ですと自信を持って言えるように、少しずつ積み重ねていきたいと思っています」
取材中印象的だったのは、たくさん聞かれた「ありがたい」という感謝の言葉でした。しっかりと努力と準備を重ねて夢を叶えた直子さんですが、決して自分の力だけではなく、出会ってきた人との一つひとつの出会い、そしてその出会いがつないでくれたご縁をとても大切にされているように感じました。
そんな直子さんだからこそ、生徒さんやお客さんに「できるだけ気軽に、新しい楽しみや人と出会える場を提供したい」という思いを持っているのではないでしょうか。
料理教室、カフェ、ミニ講座と、色とりどりの楽しさを提供している「お料理しましょ」。直子さんの夢が形になったこのお店で、これからたくさんの出会いが生まれ、誰かの新しい一歩や楽しみの扉を開くきっかけが芽生えるのかもしれません。
お料理しましょ~料理教室時々カフェ
住所:横浜市青葉区美しが丘2-17-37
アクセス:東急田園都市線・たまプラーザ駅徒歩3分
レッスン開催日:月・水・木・金・土 10時~13時(金曜日のみ19時~22時も開催、夜の部のみ男性の参加可能)
レッスン料金:3000円(税込)
レッスン予約方法:予約サイトにて毎月1日22時~翌月レッスンの申し込みスタート
カフェ営業時間:月・水・木・金 14時~18時
最新の営業日、レッスンスケジュールはHP、SNSをご覧ください
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