平成3年に設立されたのむぎ保幼部「どろん子」は、1歳半から就学前の子どもたち約30人が通う、幼保一体の小さな保育施設です。「園庭は寺家ふるさと村」というほど、子どもたちは毎日、野山を分け入って虫をとり、川遊びにおいかけっこ、ときには本気でケンカして……と寺家町の豊かな自然の中で目いっぱい遊びながら育っています。
どろん子では、外遊びと同様に子どもたちの健全な発達を支える「給食」にもこだわりを持っています。農薬や放射能問題に配慮した食材を、減塩、減脂、減糖を意識した味付けで、給食スタッフが毎日ていねいに作っています。
私が息子を連れて、初めて「どろん子」へ見学にいった日の給食は、ホワイトシチューでした。在園児に囲まれた席で緊張しながらも、息子はペロリとたいらげおかわり。一緒に食べた私と主人も、遠慮もせずにおかわりしてしまいました。ゴロゴロと大きく切られた野菜に豆乳の優しい甘み。「こんなに美味しい給食が食べられるなんて、どろん子の子どもたちは幸せだなぁ」という思いが、我が家が入園を決めた大きな理由となりました。
そんなどろん子の給食の魅力をまとめたレシピ本がこの春、完成しました! 実はこれ、在園児の父母の力を結集して作った、完全自主制作のレシピ本なのです。
今年2月のある日、園内の掃除を手伝っていた父母の会話の中から「どろん子の魅力をもっと地域に伝えたいね。そういう本とかあったらいいよね」というアイデアが出てきました。そこで、ピンッときてしまった私。「やりましょう!」と すぐさま手を挙げていました。
ピンッときたというのも、3週間後に迫った卒園式でお世話になった卒園児の父母に何かプレゼント出来ないかと考えていたところだったからです。卒園してからもどろん子マインドを思い出せるような「本」という形で贈ることができたらと思ったのでした。本の編集方針は、子どもたちを温かく育み、父母を支えてきた「給食」や「食育」にし、その魅力を切り取った形でまとめることにしました。
思い立ったが吉日。そこからは私もよく覚えてないほど、怒涛のスケジュールでした。レシピ本プロジェクトと銘打って、父母の中で有志を募ると、「写真は任せて下さい!」「私が絵を描くよ」「構成の相談のるよ!」とそれぞれお仕事にしている分野や、得意なところで携わるという見事な連携プレーで、勢いよくプロジェクトがスタートしました。
記者経験のある私がインタビューとライティングを担当、プロ写真家である高橋エイジさんが写真を、画家である上野真由さんがレシピのイラストを、構成相談をラジオパーソナリティーの小松田あこさん、デザインは私の夫の宇都宮佑亮がそれぞれ担当しました。そのほかにも多くの父母の方にサポート、本の製作は誰も未経験ながらも、各々の力が集まると形として見えてくるのが早い早い。とは言え、スケジュールのあまりのタイトさに、途中で「間に合わないよー」と、眠れない夜を過ごした日もあったのですが、なんとか卒園式直前で印刷も完了し、無事にプレゼントとして渡すことができました。注文日の前日、私は、最後のあとがきを書きながらジワッと涙が出てくるほど達成感であふれていました。
ページをめくると「食育」にまつわる園長のインタビューをまとめたコラムを子どもたちの写真と共に紹介し、その合間に特に人気のある給食メニューのレシピを載せています。各分野のプロの力を合わせて、園への想いを込めながら作ったオリジナルのレシピ本は、手前味噌ながら自慢の一冊となりました。
卒園生へのプレゼントとして作った本でしたが、その後、在園児からも「ママ友や親戚にも贈りたい」といった要望が多く、すぐに増刷しました。「娘が母親になったときに、『あなたはこんな素敵な園で育ったんだよ』とプレゼントできるように大切にとっておきます」といった、何とも嬉しい言葉もいただきました。また、SNS上に今回のプロジェクトの件を載せると、園外の知人からも「私も欲しい!」とたくさんの方に声をかけていただいて、思いも寄らない広がりに発起人の私が一番驚く展開に。
そういった反響を受けて、今後は園の紹介冊子としてこのレシピ本を販売することになりました! 6月4日(土)に開催する「どろん子ふぇすた2016」や、毎月第2、第4木曜に開催している「地域の親子おさんぽ会」などで、1冊500円(税込)で購入することができます。
子どもたちの食を考える一つの参考書として、ぜひ多くの方の読んでいただけると嬉しいです。
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