「なぜ廃棄されるの?」素朴な疑問から「花」に向き合う。みたけ台中学校の生徒たち
「SDGs」を当たり前のこととして、考え、学ぶ取り組みが教育現場で広がっています。横浜市立みたけ台中学校(青葉区)では、総合学習の時間に、「フラワーロス」の問題を取り上げました。社会の中で一度役割を終えたものに、新たな価値を見出した子どもたちを代表して、生徒会本部役員の皆さんにインタビューをしました。

※この記事は、青葉区の花・緑・農の魅力を発信し、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)と区民をつなぐ、横浜市青葉区の取り組み『あおばGREEN DAY』の一環でお届けしています。

 

 

華やかな世界を裏側から見てみたら

十分にきれいだけれど市場には出ない花や、廃棄処分されてしまう花があること(フラワーロス)をご存知でしょうか?ホテルや展示場などイベントで会場装飾に使われる花が、その一つです。

 

みたけ台中学校では、廃棄される運命にある花をもらい受け、その命を生かすために、各学級や各種専門委員会で、どうしたら良いかを考え、行動に移しています。

 

インタビューに答えてくれたのは、生徒会本部役員の皆さんで、3年生の星野晴輝さん(生徒会長)、竹尾心優さん(副会長)、望月丈瑠さん(会計)、田切美帆さん(書記)、2年生の猪股沙衣さん(副会長)、胡子美桜さん(会計)、小内愛菜さん(会計)。

ロスされる花を見て、「もっと枯れた花のことかと思っていたから、なんで処分されてしまうのか?花にも規格外があることなども初めて知った」と、驚いたと言います。これまで、切り花の世界にそれほど興味のなかったところから、「どうにかしたい」という思いが生まれ、まずはシンプルに、もらったそのままの花を校内に飾ってみたそうです。

 

「教室の入り口や昇降フロアとか、日によって場所を変えて展示してみました。花があると華やかな明るい雰囲気になって、気持ちも明るくなるような効果を感じられました」と生徒会の皆さん。また、保健美化委員では、「花をドライフラワーにしてから細かくして、アロマオイルを加えて、石けん作りもしました。できた石けんは、学校の手洗い場で実際に使いました」と、とても楽しそう。

子どもたちが手作りした石けん。コロナの時期で手洗いが推奨されていたこともあり、人気でよく使われたとか

水やりや、花の入れ替えの作業を通じて、「大変だと思っていたお花の世話がそうでもなかった。難しそうとか、ゴージャスだという偏見もあったけど、花って身近なものなんだなと思った」という感想にも、みんな、そうそう!とうなずいています。

 

生徒会長の星野くんは、今年度、いじめの問題を子どもたち自らが考える、横浜子ども会議の区交流会に参加して、「なぜいじめが起きるのか?と考えた時、一人ひとりの『心の乱れ』があるからではないかと思った」と言い「花を飾ることで明るい雰囲気にしようと考えた」と、廃棄されてしまう花が心のケアにつながる、役立つ、という気づきを語ってくれました。

 

 

ところで、そもそも、なぜ、フラワーロスの花を貰い受けることができたのでしょうか?

生徒会の担当である石井翔太先生にお聞きすると、「実は2年前(2022年)に、ガーデンネックレス横浜実行委員会が市役所アトリウムで実施した『ローズフェアwith趣味の園芸』の会場展示として使用した花を、引き取ったのが始まりです。その時もらった花は、当時の生徒たちが考えて、みんなで分けたり、学校内のSDGsガーデンに植え替えて育てたりもしました。その時につながりができたのが、タヒチプロモーションという会社です。昨年、新たに、タヒチプロモーションさんから、『ふれあい車椅子花壇という、車椅子の方が花を楽しめるプランターを作ったのでモニターとして設置してもらえないか』という呼びかけがあった時に、ぜひ!と手を挙げました」。

「ふれあい車椅子花壇」は、車椅子に座ったままで、花を見て、香りを楽しんだり、手で触れることができる高さに設計された、切花用のプランターです。この写真では、百合の花が飾られています

株式会社タヒチプロモーション は、タヒチ文化を伝えるイベントやタヒチの食材・雑貨の販売などを行っている市内の事業会社です。

南太平洋にある島国タヒチは、花冠をかぶって踊るタヒチアンダンスなど、日常的に花を楽しむ文化が根付いており、同社ではこの“花”に関するさまざまな事業も手掛けています。

 

社長の大石暢さんに伺うと、「三ツ沢公園にカフェをオープンしたことで、車椅子の陸上競技に参加される方が、足元にある花壇をのぞき込んで見ている姿を見たんですよ。それで、多様性に対応できる花壇があったらいいなと思って、さまざまな方に相談しながら、手探りでオリジナルのプランターを作りました。

市内の学校などへ設置して、社会の課題に気づいてもらい、今後自分たちに何ができるのかを考えてもらうことを目的としています」とお答えいただきました。みたけ台中を含め、市内で6校の設置協力があり、各学校から意見をもらって、さらに改善していきたいと考えているそうです。

 

さらに大石社長は「お花に関しては、ホテル主催のイベントで一日だけ使われたお花を提供してもらっています。お花屋さんや生産者の中には抵抗感を感じる方もいらっしゃるので、それぞれの立場を尊重しつつ、イベントや式典会場などから提供いただける機会が増えていくとよいですね。ふれあい花壇を通じて、まずは、日常の中で、花や緑に触れることの良さを感じてもらいたいです」と語られました。

取材に伺った日に、ちょうど届いたお花たち。横浜のみなとみらい21地区にあるホテルからみたけ台中までタヒチプロモーションが直接運んでいます。この花をどうするか?また新たなお題が生徒たちに投げかけられます

 

今年の6月には、生徒会本部役員のメンバーで、これまでの活動をまとめて展示することにもチャレンジ。GREEN×EXPO 2027開催1000日前連携イベント「あおばGREEN DAY」の会場、たまプラーザ テラスにあるプラーザホールbyイッツコムで、多くの来場者との交流を経験しました

今できることを積み重ねていく

イベントには関心の高い人が集まっていたからか、“伝えること”、“伝わること”での自信や喜びも感じたそうです。「発表する場があって、人の反応を見たり意見を聞いたりしたことで、SDGsという大きなテーマが、身近なこと、校内だけの取り組みでもできているんだと思った」、「廃棄される花のことを知らない人たちに、新しい考えを見い出すきっかけになるような展示ができて、達成感を感じた」等々、生徒会本部役員の皆さんは、ちょっと高揚しながら話してくれました。

図書室で取材させてもらった時の一枚。授業に部活にと忙しい毎日の中で、生徒会の役割も楽しんでいることが伝わってきて、こちらもうれしい、楽しい時間でした

「代が替わっても、引き続き廃棄される花の活用には取り組んでいって、中学生と企業とがSDG sを考えて協力する、何か面白いモデルになっていくといいですよね。本来、子どもたちみんなが持っている能力を最大限引き出す環境が大事だと思っているので、その土台を今の子たちと作っている感じです。外に出ていくチャレンジも含め、他の職員や保護者の方も応援してくれて、良い経験を積むことができています」と生徒に負けないキラキラとした目で語る石井先生。一つひとつの活動の積み重ねに、手応えを感じていることがうかがえました。

校門を入ってすぐのところにあるSDGsガーデン。近所の農家さんの協力で、竹を使った藤棚があります。これから時を重ねるごとに、きっと、この空間がさらに充実していくことでしょう

「廃棄されるものの活用」として、生徒会本部役員では、現在、学校で回収している大量のペットボトルのキャップを使ったアートプロジェクトの企画が進んでいます。これらの活動を通して、誰もが幸せを感じられるような、持続可能な社会に思いを巡らせたことをきっかけに、これからもさまざまな分野の課題に向き合い、挑戦していって欲しいなと心から思いました。

最後に、GREEN×EXPO 2027のチラシを持っていただきました。青葉区ではGREEN×EXPO 2027の機運醸成に向けたさまざまな取り組みを行っています。一過性のイベントにとどまらない、花と緑に関わる区民の皆様の持続可能な活動を青葉区も応援しています!

Information

横浜市立みたけ台中学校 https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/jhs/mitakedai/

 

青葉区の花・緑の魅力を発信中 公式SNS『あおば GREEN DAY』

青葉区の特色である花・緑・農など、青葉区の“グリーン”の魅力を発信する、青葉区公式SNS(facebook・Instagram)を開設しています。

GREEN×EXPO 2027に向けて、花・緑のおすすめスポットや地域の取組などをお届けしています。ぜひフォローしてください!

facebookページ https://www.facebook.com/aoba.green.day/

Instagramページ https://www.instagram.com/aoba.green.day/

 

横浜子ども会議

https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/kyoiku/2024/20240816_kodomokaigi.html

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この記事を書いた人
梅原昭子ライター
引き算の編集が好きです。できないこと、やりたくないことが多過ぎて消去法で生きています。徒歩半径2キロ圏内くらいでほぼ満ち足りる暮らしへの憧れと、地球上の面白い所どこでもぶらりと行ける軽さとに憧れます。人間よりも植物や動物など異種から好かれる方が格上と思っている節があります。
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