じゃぶじゃぶ池あらわる! 夏の川和保育園
8月に入り、本格的な夏がやってきましたね。私の娘が通う都筑区の川和保育園では、夏が近づいてくると園庭に巨大な「じゃぶじゃぶ池」なるものが出現します。夏の厳しい暑さのなかで、あり余るエネルギーを発散させる子どもたち。子どもたちにとって川和保育園の園庭は、まさに水遊びのパラダイス!

以前、森ノオトでもご紹介しましたが、80年の伝統と歴史を持つ川和保育園では、独自の保育スタイルで子どもたちがとことん遊び尽くせる環境をコツコツと工夫を凝らしながら築き上げてきました。園内の遊具や家具の多くのものに手が加えてあり、オリジナリティあふれる川和保育園。

 

夏が近づいてくると出現する「じゃぶじゃぶ池(通称:じゃぶ池」)もその一つ。今から33年前に寺田信太郎園長が現在のものより小規模なじゃぶ池をつくり出し、それを基にスタッフにより年々手が加えられ、ある時には卒園児の父親たちがの卒園記念としてカスタマイズしながら、今の形になったのだといいます。そして、毎年夏が近づくと在園児の父たちが集結し、じゃぶ池がつくられます。

 

朝のじゃぶ池。普段はジャングルジムとして園庭に設置しているが、夏はじゃぶ池仕様に変身! タープや周囲の木々の緑によって紫外線からも守られている

 

じゃぶ池は元々、園庭の小高くなっている側面を活かし、足りない側面部に廃材になった木の電柱をあてて、外に水が漏れださないよう後ろに防水シートで覆って土で盛り固めて池にしています。始めのうちは壁の補強が甘く、水が決壊してしまうといったトラブルが尽きなかったといいます。そうやって年々工夫を凝らしては進化して、今のシステムをつくり上げていったそうです。

 

川和保育園では地下水を利用して、園庭内に流れる小川をつくっています。この水は年中16℃に保たれており、じゃぶ池やプールにも使っています。子どもたちは園庭のいたるところでこの水を汲んできて、おままごとやどろんこ遊びを楽しんでいます。

 

すべての子どもたちが登園し、朝の準備を終えて園庭で遊び出す午前9時半ころからじゃぶ池に水が入りはじめます。

 

水が出始めると、待っていたとばかりに1歳児クラスの小さな子どもたちが集まってきて、さっそく冷たい水の感覚にはしゃぎまわります。同じ環境でも子どもたちの年齢によって遊び方は全く異なります。

 

水深が浅い時間帯は小さな子どもたちが中心となってじゃぶ池を満喫する

 

徐々に水位が上がってくると、今度は2、3歳児クラスの子どもたちが集まってきて遊びはじめる

 

実は、川和保育園には滑り台つきの大きなプールもあるのですが、プールは朝から満水にしているので、じゃぶ池で小さな子どもたちが中心となって遊んでいるあいだ、年長の大きな子どもたちから順にプール遊びが始まります。プールはじゃぶ池とは反対で、少しずつ水を抜いていき、そして少しずつ水温も上がった頃に小さな子どもたちがプール遊びに移ります。こうすることで、いつでも誰でも好きなだけ水遊びが満喫できる仕組みになっています。夏は毎日好きなだけ水遊びができる子どもたち。なんともうらやましい!

 

朝から満水になっているプールでは、年長児や年中児が思い切り水遊びを満喫している

 

「見てて! ゴーグルなしでも顔からも滑れるの!」といって、滑り出す子

 

顔からプールにじゃぽん! 年中児にもなると遊び方もダイナミック

 

冷たいプールに入って体が冷えてしまった後は、お日様のしたで日向ぼっこ

 

じゃぶ池中央の遊具には、昔の井戸に使われていた汲み上げポンプがつけられていて、遊具内の井戸に水を溜めて動かすと水が出てくる仕組みになっていたり、滑車でロープにつないであるバケツを操って水を汲んだり、大きな水鉄砲で外に水を噴射させたり……と、創意工夫にあふれた仕掛けがたくさん。お金をかければすぐに新品が手に入ってしまう時代ですが、こうして子どもたち目線で面白さを追求し、独創的に手を加えつくり上げられたものには、子どもたちも自然と愛着が湧いてくるのではないかと感じます。

井戸の汲み上げ式ポンプや、くみ上げ式のバケツ、大きな放水用ホースなどがある

 

他にもカヌーに乗って池の周りをまわる子がいれば、水をかけっこしてはしゃぐ子、スーパーボールを集めて遊ぶ子、さらにはペダルのないミニバイク、ストライダーで水に入る子まで登場! パンツ一丁で思うままに遊ぶ子どもたち。じ、自由すぎる……!(笑)

 

アウトドア好きの園長が海で使っていたカヌーは今ではじゃぶ池専用カヌーに。え、ここは日本?!

 

“だってたのしいんだもん”と書かれた木の冊は、卒園時の父たちからの贈り物

 

去年、子どもたちがストライダーやダンプカーに乗ったままじゃぶ池に入って遊んでいるところを見ていた園長が、それもまた面白い遊び方だと共感し、水中だと壊れやすい素材のストライダーのみに印をつけて、他の印のないストライダーでは水に入ってOKとするなど、新ルールをつくったのだといいます。

 

他にも、じゃぶ池内では、踏んだら危ないおもちゃ類は置いていかないのがルールとなっています。園庭内にはこういった遊びに関するルールがたくさんあり、保育中のサークルなどで日頃からよく話し聞かせているので、子どもたちは遊びに対するルールを熟知しているそうです。たとえ知らずにルールを破ってしまっても、すぐに周りの子どもたちが気づいて教えるといいます。

 

こうして1つの形式やルールにこだわらず、その時々に気づいたことを柔軟に取り入れ変容させていくスタイルこそが、川和保育園独自の面白さではないかと感じました。

 

もちろんこうした遊びに限らず、園の運営には父母の協力なしには成り立たちません。保護者たちの支えや理解が必要不可欠なのです。このじゃぶ池づくりでも父たちが集まるように、秋には園庭の借地代を賄うための父母の会主催のバザーのための準備があり、夏の花火大会のために父親たちが集まったり、園外活動など様々なかたちで父母が一丸となって支えています。日頃から父母たちのふれ合う場面が多いこともあって絆も自然と強くなるため、こうしたユニークな保育環境を長年維持できているのです。

 

園長の寺田信太郎氏。子どもたちは園長を見つけるやいなや「えんちょー!みててー!」と口々に自分のできるところをアピールする

 

私は娘を通わせて1年ちょっとが経ち、噂通り(?!)保護者としてやるべきことも多く、なかなか大変だった面もありましたが、この園のことを知れば知るほど学ぶことも多く、人と人が育ち合うことの大切さをあらためて実感した1年でもありました。そして何よりも、子どもたちの園庭でイキイキ遊ぶ姿を見ていると、苦労も帳消しになるから不思議なものです!(笑)

 

水遊び以外にも遊びは色々。園外で拾ってきた宝物の貝殻の観察コーナーでゆったりと楽しむ子たちもいる

 

そんな魅力も苦労も多い川和保育園ですが、園外の人でも見てふれて感じてもらうことを大切にしているので、園内はいつでも一般解放されています。現在4、5歳児クラスはまだ若干名空きもあるとのこと。この夏のじゃぶ池を体験しに、パワーのあり余っているお子さんを連れてぜひ一度見学へいってみてはいかがでしょうか。

Information

川和保育園

〒224-0057

横浜市都筑区川和町665

TEL:045-932-5933

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この記事を書いた人
高山えりかライター卒業生/デザイナー
森ノオトの花形デザイナーでおしゃれ番長。キャッチーなデザイン、キュートなイラストは見る人の心を鷲掴みに。写真の腕前も相当なもので、Instagramで発信する愛犬とのユーモラスな生活にファンも多い。料理、お酒、キャンプ、インテリア、ハワイが大好き。北海道出身で愛称は「ピリカ」。
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