「ママ、これはね《ベニー ブラッシュ》っていう、人を幸せにしてくれる魔法の色水なんだよ」
「Zakka Benny Brush」オーナーの西岡恵里さんの5歳になる息子さんが、色水を作って遊んでいるときに、淡い紫色の色水の入ったケースを振りながら恵里さんに見せてくれたのが、《ベニー ブラッシュ》でした。お店をオープンさせるにあたり、ずっと悩んでいたお店の名前が恵里さんの中でふっと決まった瞬間でした。
「あれ? いつの間にここ、雑貨屋さんになったのだろう」。田園都市線青葉台駅から桜台方面へ伸びる環状4号線沿いにあるレストラン「味の民芸」のすぐそばに、ちょこんとある「Zakka Benny Brush」。この冬からずっと気になっていたお店でした。私は雑貨屋さん巡りが好きで、中央線や井の頭線、はたまた東横線沿線など、雑貨屋さんのメッカをよく巡り歩いていました。子連れではそこまで足を伸ばす機会もなくなり、久しく「雑貨屋さん」という空間に身を置くこともなくなっていました。
「ザ・雑貨屋さん」という構えのお店がこんな身近に出来たなんて! 「Zakka Benny Brush」の赤い可愛らしい扉は大きく開いていて、私は、吸い込まれるように入ってしまいました。
可愛らしくて、それでいてエレガントなイラストが特徴の「Reiko Aoki – new york -」のポーチやタオル、お財布に鞄が、「Zakka Benny Brush」の看板商品です。恵里さんは以前、この商品を扱うお店に勤めていて、置いてあるものの雰囲気がその空間を彩り、人の心を穏やかにしたり、働く人が心から商品を愛する気持ちを育むことを、肌で感じたそうです。「Reiko Aoki」を身近で多くの人に手にとってもらいたいねと、当時の同僚と夢を語っていたそうです。その仲間との夢も一緒に乗せて「Zakka Benny Brush」は昨年2015年12月7日にオープンしました。
「自分の力で! というより、周りの方々の温かい力添え、きっと大丈夫という言葉に背中を押され、お店が開いた! という感じなんです。私一人では夢のままだったと思います。でも心から力を貸してくれた元同僚や、今までつながりのあった方々からパワーをもらって、息子の応援もあって、私の大好きなものが詰まったお店をオープンさせることができました」と、恵里さん。
お店の商品ラインナップはびっくりするほど多彩です。「Reiko Aoki」のようなエレガントな大人の女性をイメージする商品もありつつ、子育て世代に嬉しい、作家さんたちによる手作りのスタイ、スモック、母子手帳ケースなど、ほっこりする雰囲気の商品も豊富に取り扱っています。柄の可愛らしいスタイなどを見ていると、「誰か近々赤ちゃん生まれるんだったかしら? 誰かにプレゼントしたい!」と手に取りながら思いを巡らしてしまいます。
本格的なアンティークの食器やオーナメントが並ぶ棚の前では、あれも欲しい、これも欲しいと、感嘆のため息が出てしまいました。お店の中もアロマのキャンドルが揺れ、良い香りに包まれていますが、香りにまつわる商品もたくさんあります。お店の奥に目をやれば、ポップな色があふれるアメリカのおもちゃがぎゅっと並んでいたり。あっちへウロウロ、こっちへウロウロせずにはいられません。なんというか、恵里さんの息子さんの言葉にあった「みんなを幸せにしてくれる魔法」がかけられているような空間です。
そしてこの空間を心地よいものにしているのは、たくさんの愛らしい商品、ときめく商品たちとともに、なんといっても店長の恵里さんの笑顔だと思います。取材でお店に居させてもらっている間、いろいろな年齢の方々が来店していました。お買いものをしながら、みなさん実にいろんな話をしていかれるのです。そしてみな自分が探していたもの、あるいは、ここでふと出会ったものを手にして、軽やかな表情で帰っていきます。
あるお客様は初めて来店し、「出産を控えたお友達になにか贈りたいのだけど」とお話していました。印象的だったのは恵里さんと話しているとき、最初は少し緊張した雰囲気のお客さんの表情が生き生きと明るくなっていき、「贈りたいお友達はとっても元気な子だから」と、そのお友達に「ぴったり!」と思える明るい柄の商品に決めていました。贈り物の先にいる人のことを思いながら品物を選ぶ楽しさに、恵里さんはそっと寄り添っていました。
また、店頭にあった「生地の端切れの詰め合わせ」を選んだ年配の方は、「手を手術してね、でもまたなにか作れるようになって嬉しいのよ」と話しながら、ふと帰り際「私こういう雑貨を見るの大好きよ。楽しいわ」と目を少女のように輝かせていました。そんなお客さんの横顔を、恵里さんも嬉しそうに見つめていました。
恵里さん、「お店には自分が大好きなものしか置いていない」ということで、商品についてなんでもさらりと答えてくれます。例えば、レジの上にぶら下がっている大きな銀色の照明があります。「珍しいですね」と思わず言うと「それはもともとインドの客船についていた灯りで、船を解体するときイギリスに渡って、それを買い付けたのですよ」と何気なくそこにある一つの灯にも、想像を遥かに超えたドラマがあったことを教えてくれます。
恵里さんと雑貨を前にお話をしていると、話が尽きません。そして、なにより、並んだ雑貨たちには、作り手がいて、作られた場所があり、それらはやがて、手にした人の傍でより一層輝くのだなと、改めて感じました。「人を幸せにする魔法」という息子さんの言葉、そしてその言葉を大切にお店の名前として掲げた恵里さんの思いがあふれ、来る人がリラックスして品物と向き合える、そんな「Zakka Benny Brush」です。
今後、お店でも扱っているアクセサリーの作家さんによるワークショップや、小物の撮影を上手にできるカメラのワークショップなど、ワクワクするような企画もたくさん用意されています。このお店を、商品と人、そして、人と人も出会えるような楽しい場所にしたいなあ、と恵里さん。恵里さんと恵里さんの息子さんの魔法《ベニー ブラッシュ》は、今、始まったばかりです。
Zakka Benny Brush
住所:横浜市青葉区青葉台1-24-1
TEL : 070-4155-8861
営業時間: 10:00-17:00
定休日: 日曜日
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