森ノオト編集部がゆく!大学学食めぐり 専修大学生田キャンパス編
川崎市多摩区にある専修大学生田キャンパスには、三つの学食があります(2026年現在)。そのうちの二つを運営している、地元のパン屋さん「富士ベーカリー」のSNS発信がユーモアたっぷりで面白く、かつおいしそうなので学食取材チームで訪ねてきました。

お話を伺ったのは、学食チームを率いる大和久歩由(おおわく・あゆ)さん(トップの写真右)。一緒に看板を持っているのは、歩由さんの夫(富士ベーカリー社長)のお母様、大和久のり子さんです。この看板は歩由さんの手書きです。店内外あちこちにある黒板やメニュー表示などもかわいい手書き文字で書かれていて、SNSで見たそのままの楽しい空気感が漂っていました。

 

富士ベーカリーは、パンと米食給食を提供する地元企業で、大学最寄りの小田急線・向ヶ丘遊園駅近くに本社工場があります。専修大学では食堂館2階の「レストランVIEW」と9号館の5階にある「CABIN」を運営しています。まずは、CABIN名物の鉄板焼きを目指して校内をうろうろ。

CABIN入口付近から、すでにいい匂いがしています

 

CABINの中は広々として明るすぎず落ち着いた空間です。左側の窓の外、野外にもテーブル席があります

 

これがCABINの定番メニュー「鉄板焼き」680円。しっかり味付けされたお肉がおいしい。卵がのってるのもうれしくボリュームたっぷり、お腹いっぱいになりました

 

こちらは「チーズハンバーグ イタリアントマトソース」700円。他に和風ハンバーグもありました。メニューは常に開発中で飽きさせないように工夫しているそうです

小田急線・向ヶ丘遊園駅からバスで約10分、徒歩14分の山の上(!)にある専修大学生田キャンパス。東京ドーム3.7個分の面積があるという大学の敷地には、11の校舎に、体育館が三つ、グラウンドが二つ、テニスコートにアーチェリー場や弓道場、野外音楽堂まであると今回初めて知って驚きました。生田緑地に隣接していて、周囲も構内も緑豊か。空気もよいので、まるで小旅行に来たかのようです。

CABINの入っている9号館は別名120年記念館。屋上部分が向かいにある食堂館の一階と同じ高さで、通路兼展望台になっています。空がどこまでも青く広くて爽快です!

専修大学の創立は明治13年(1880年)。2026年には146周年という長い歴史があります。東京・神田キャンパスに続き、生田キャンパスが開設したのは昭和24年(1949年)。富士ベーカリーの創業も同じ年で、今年2026年で78年目を迎えます。

 

「先代の大女将から聞いた話ですが、創業者は石井裕久治(ゆくはる)という人で、終戦後もののない中で、友人と二人で試行錯誤しながらパン作りを習って、小さなパン工場を開いたそうです。学食に関わるようになったのが、いつからなのか、きっかけははっきりとはわからないのですが、大学側から依頼を受けて学生たちのためにもパンを焼いていたようです。昭和28年(1953年)頃、裕久治さんのお母さんが背負子で大学までパンを売り歩きに行っていたとも聞きました」

 

専修大学の記録によると、今の食堂館がある建物は昭和39年(1964年)に完成して、その時に学食が誕生。富士ベーカリーも店子の一つとして入り、その後もいろいろな変遷を経て今でも続いているのはここだけ。一番古くからある学食なのだとか。ちなみに、昔は120年記念館がなかったので、食堂館からの眺めがよく、学生たちから食堂の名前を募集して「VIEW」となったそうです。「CABINの由来はわからない」とのこと。

 

大学の発展とともに歩んできた富士ベーカリーは、2026年現在、川崎市多摩区と麻生区にある25校分の学校給食のパンやごはんの製造と配達をしており、専修大学の学食でもパンを販売しています。

VIEWの入り口付近にあるパンの棚。コロッケパン、カレーパン、ピロシキなどの惣菜パンから、ティラミスあんぱん、チョコメロンパン、揚げパンなどの甘いパンまで種類豊富で目移りします

 

CABINの中にはパンの隣にお弁当売り場もありました。おいしそうな丼が500円で思わず夕飯に買って帰りたくなりましたが、ここは学生ファースト!と思い、グッと我慢

 

毎月、「学生限定の応援ランチ週間」もあります。300円で数量限定のため大人気。取材当日はちょうど期間中で行列ができており、12時前には販売終了していました

学生支援のメニューは、コロナ後、経済的に困窮する学生が増えたことから始まったそうです。大学側が負担することで、100円朝食や、300円ランチの提供が実現しています。

 

ところで、歩由さんが富士ベーカリーで働き始めたのはおよそ10年前。それ以前も飲食業界に携わっていたとのことですが、学食で働いてみて感じことや魅力を伺うと意外な答えが返ってきました。

 

「学生さんとのコミュニケーションが意外になかったんです。昔はよく話をしていたらしいですが、だんだんなくなったようで。つまらないなーと思ってSNSを始めました。どうやったら見てくれるのか?を考えるのが好きなんですね。直接話しかけてくれる子は少ないけれど、ダイレクトメッセージをくれる学生さんや、発信を見たと伝えてくれる学生さんも現れて。やってよかったと思っています」

 

SNSにはおすすめの学食やパン、新メニューの紹介や、月に何度かある工場前でのパンの直売のお知らせなどが主に紹介されています。投稿を始めたのは2019年の2月からで、その後、コロナで飲食業界全体が落ち込むような時期と重なっています。その後、学生たちが大学に戻ってきた今、「発信を続けるのは大変!」と言いながらも、歩由さんは楽しそう。学生たちや街の人に向けて言葉を紡ぐ作業はやめられないようです。

 

「大学にはたくさん場所があるけど、広すぎて、居場所があるようでない子もいるんじゃないかな。だから親近感を感じられる『人間味』を伝えられたら。学生さんたちにとって、学食が居場所の一つになるといいなとか、在学中に好きなものが一つでも見つかるといいなと思っています」

これは VIEWで食べられるおしゃれな「オムライス」。勉強に疲れている時もパッと明るい気持ちになるような盛り付けです

現在VIEWでは一日約600食、CABINではお弁当も入れて約300食を提供しています。

スタッフは40名ほどいて、厨房で働く人のほとんどが地域の方。長い人は勤続20年、30年という大先輩もいるそうです。

 

「学生の長期休みがあることを逆に利用して、休む時は休む、働く時は働くとメリハリつけられるのがいいみたいです。小・中学生と同じタイミングで休めるから、子どもがいても働きやすいし、夏の厨房は暑く冬は寒いので、この過酷な期間に休めるのはうれしいですよね。休みの期間にも短縮営業があったりパーティーや宴会の料理の対応はしますが、基本的に夜の営業はないので、有名なホテルとかお店で働いていたシェフが高齢になってから勤めてくれるという場合も結構あります」

 

なるほど、多様なメニューが楽しめるのは厨房をまとめるシェフの力も大きいのですね。学食に鉄板焼きがあるのも、いつかのシェフの置き土産かもしれません。

たかが学食されど学食。VIEWのメニューを眺めながら、学生たちへの愛情と、プロフェッショナルたちの知恵と工夫の積み重ねを改めて感じました

「山の上だからか(笑)、一般のお客さんは多くはありませんが、近隣の方にも、もっと来て欲しいなと思っています。お子さん連れで来る方もいますし、昼休みを避ければ混雑もないです」と歩由さんもおっしゃっていたので、まずは気軽に訪ねてみてくださいね。

 

専修大学まで、私たちは、横浜市青葉区方面から車で乗り合わせて近隣の生田緑地西口駐車場を利用しましたが、たまプラーザ方面からバスも出ており、向ヶ丘遊園駅前からシェアサイクルを利用する手もあります。もう一つの学食、10号館のスカイテラスも広くて贅沢な空間となっています。そちらからの眺めもまた素晴らしいので一見の価値ありです!

 

 

<取材を終えて>

この取材の下見では、学内で育てている「ホップの収穫後に学食(VIEW)でランチする」というイベントがあると元ライターで多摩区の街づくりに励むスミナツコさんから教わり、これ幸いと参加させてもらいました。これは、ネットワーク情報学部の佐藤研究室の学生たちがIOTを活用して、学内初め、地元地域と被災地能登でもホップを育てて、クラフトビールを作るプロジェクトの一環で、この時収穫したホップは年が明けた今頃(1月)、ビールになっているはず。しかし驚いたのは、そのプロジェクトや研究室に、たまプラーザの次世代郊外まちづくりで出会った方々が関わっていたことです。近いようで遠く、知らないと思ったら知っている。地域をつなぐ層の厚さや重なりの妙というのか、奥深さのようなものを感じました。

Information

専修大学生田キャンパス

神奈川県川崎市多摩区東三田2-1-1

9号館5階 CABIN

食堂館2階 レストランVIEW

営業時間10:30〜15:00(月〜金)

(大学の長期休みやイベント等で変更あり)

 

富士ベーカリー専修大学内学食Instagram

https://www.instagram.com/fujibakery1949/

 

佐藤研究室Instagram

https://www.instagram.com/sato_project2025/

 

大学は、まちの大事な資産。そんな考えから、森ノオトでは、「地域や人との関わり」という独自な視点で近隣の大学の学食をめぐる記事をシリーズ化しています。他の大学の記事もぜひ読んでみてください。

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この記事を書いた人
梅原昭子スタッフ/ライター
引き算の編集が好きです。できないこと、やりたくないことが多過ぎて消去法で生きています。徒歩半径2キロ圏内くらいでほぼ満ち足りる暮らしへの憧れと、地球上の面白い所どこでもぶらりと行ける軽さとに憧れます。人間よりも植物や動物など異種から好かれる方が格上と思っている節があります。
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