目指す未来が一緒の生態系をつくる。NPO法人グリーンズ・小倉奈緒子
NPO法人グリーンズが運営するメディア『greenz.jp』は、2006年創刊。非営利でメディアを運営している「寄付型メディア」の先駆けです。19年の歳月を重ねた今、「支援者に支えられるメディア」の在り方について、グリーンズはどう捉え実践しているのでしょうか。NPO法人グリーンズ事務局長で理事の小倉奈緒子さんにお話を聞きました。

10月の晴れた日、横浜市青葉区鴨志田町の森ノオト事務所に、ある方をお招きしました。NPO法人グリーンズ事務局長で理事の小倉奈緒子さんです。

明るい笑顔が印象的な小倉奈緒子さん。グリーンズの以前は国際支援のNGOに勤め、ファンドレイジングや運営の観点からNPO法人グリーンズに関心を寄せていたそうです

NPO法人グリーンズは、「生きる、を耕す。」を合言葉に掲げた非営利メディア『greenz.jp』を運営しています。2025年7月に創刊19年を迎えた『greenz.jp』は、時代の変化とともに合言葉を柔軟に変えながら、「社会課題に立ち向かい、自分なりの問いを携えて挑戦を続ける人たちの思いに耳を傾け、その本気さに寄り添い、共にアクションをする」という姿勢を一貫しています。

 

森ノオトとグリーンズの共通点は、NPO法人をつくり、活動に共感してくれる方の支援を募ってメディアを運営していることです。実は森ノオト、2013年には創刊編集長の鈴木菜央さんを招いて勉強会を開いたり、2018年にマンスリーサポーターを始める際に、グリーンズの共同代表の植原正太郎さんを講師にお迎えするなど、グリーンズからたくさん学んできた経験があります。いわば森ノオトにとっては「先輩メディア」のグリーンズは、創刊20年を前にしてどのような未来を見据えているのでしょうか。

 

 

greenz.jpの現在地

「私たちは、正会員やgreenz people(寄付会員)のことを、グリーンズという生態系をともにつくる『仲間』と呼んでいます」と、小倉さんはまず話しました。

 

グリーンズにはさまざまな事業があります。WEBマガジン「greenz.jp」、働くで社会を変える求人サイト「WORK for GOOD」、学びと実践の場「グリーンズの学校」、出版事業「グリーンズ出版」、寄付読者制度「greenz people」……。そこには事業を動かすスタッフやライター、フォトグラファー、編集者がいて、その周りには読者や取材先、ラーニングコミュニティの卒業生、支援者、プロジェクト共創相手などのつながりが広がっています。

 

「グリーンズを取り巻くこのゆるやかな関係は、目指す未来でつながっています。私たちが旗を立てて、その周りに関心や共感を持った人が集まり、それぞれがつくりたい未来に向かって活動していける環境。これはコミュニティとも少し違う感覚なんです」

「greenz people」トップページ。イラスト左下に「g」の旗印が。旗の下に火を焚く人が集い、その周りには農業、漁業、畜産、さまざまな商いをする人々の姿が。こうして見ると、グリーンズの生態系は私たちの暮らしの身近に感じられます

これまで社会課題を自分ごととして捉えてアクションを起こす「ソーシャルデザイン」を掲げてきたグリーンズが今、立てる旗印とはどのようなものなのでしょうか。

 

「私たちは今『リジェネラティブデザイン』という旗を掲げています。リジェネラティブは再生という意味です。私たちの暮らしや社会は、水、空気、食、エネルギーなどあらゆる面で自然に支えられていますが、持続可能という現状維持のスタンスでは、自然環境も暮らしも維持することはできないと私たちは感じているんです。人が関わることで自然を再生し、より良くしていくという能動的な行動が求められる段階に来ています。まずは3年間リジェネラティブについて自分たちでも探究、実践、発信するとともに、『グリーンズを応援すると社会がリジェネラティブになっていく』仕組みをつくることに、団体で一致団結して取り組んでいます」

 

そのためにグリーンズが取り組んできたことが「リジェネラティブデザインカレッジ」と呼ぶラーニングコミュニティの運営と、greenz.jpで2023年から続く連載「リジェネラティブデザイン」。この連載では農業や産業廃棄物中間処理業、小売業などさまざまなフィールドの実践者35名にインタビューしています。2026年2月には書籍となり、読者にとっては実践の手引きとなります。

2026年2月27日発売の『リジェネラティブデザイン』。「本にまとめることで、意志が一つの形となり、さらに広げていきやすくなる」と小倉さん(写真提供:NPO法人グリーンズ)

つくりたい社会につながる道のような存在

リジェネラティブデザインという旗のもとに育つ生態系。その中でグリーンズはどのような位置付けなのでしょうか。

 

「グリーンズは道のような存在でありたいです。すでにリジェネラティブを実践する先駆者の方々とこれから実践したい人、そしてその実践をサポートしたい人をつなぐ道です。実践のフィールドは農業や食、建築、水源、健康などさまざまです。グリーンズを見ればほしい未来をつくるための選択肢がたくさんあって、つくりたい社会に向けてダイレクトに資金・人材・スキルを届けられる。そういう仕組みをつくっていきたい」とまっすぐに話す小倉さん。

 

そして非営利メディア「greenz.jp」の寄付会員「greenz people」の捉え方も徐々に変化しているそうです。

 

「これまでの『記事をつくるための寄付』から先に進み、『ほしい社会をつくるための共済金』というイメージが今は近いです。メディアへの参加ではなく、目指す未来のために自分ができることを持ち寄り、基金(特定の目的のために資金を集め、適切な仕組みで管理・活用する受け皿)のような仕組みをつくれるといいなと思っています。

 

その共同体の中で、グリーンズは旗を立てたり学び合う場をつくったり、これまでと変わらず得意の部分でバリューを出していきます。一方で、私たちが苦手なこと……例えば資金調達や研究など……は、共同体の得意な方たちが担っていく。そんないかしあいのネットワークをつくっていきたいんです」

 

そしてグリーンズは実践者でもありたい、と小倉さんは話します。

 

「社会を良くするためにどういうことをすればいいのか、クリアに見えにくくなってきたように感じています。ここ数年で地球がこんなにも暑くなるなんて、多くの方にとって予測不能だったのではないでしょうか。

 

何が正しいことなのか私たちもわからないからこそ、暮らしの中で実際に手を動かす実践者でありたいんです。手を動かして、これで合っていそうという手ざわりをつかむ。誰かの言葉を届けるだけでなく、自分たちが暮らしで実践していく。そんな営みをともにできる仲間の輪を広げていきたいですね!」

写真は「リジェネラティブデザインカレッジ」のプログラムの一つ、バリ島でのフィールドワークの様子。6日間の滞在の中で、豊かな自然との関わりの中で育まれたバリの精神性や哲学を学んだり、バリの社会起業家を訪ねました。バリ島の「リジェネラティブ」は、その土地の水や土、そこに暮らす人々の営みに入っていてこそ分かる……グリーンズが大切にしている「現場での経験」の一コマ(写真提供:NPO法人グリーンズ)

ワンチームでインパクトを出す

大きく舵取りを始めたグリーンズですが、変化を起こすのも、仕組みを考えみんなで息を合わせながら進めていくのも、たくさんの力が必要です。それを「グリーンズで実現していく」というメンバーの意思は、どこから生まれているのでしょうか。

 

「グリーンズはNPO法人で、金銭的に大きな対価を用意できるわけではありません。一方で、グリーンズは組織内でも対話をとても大切にしていて、3カ月に一度の社員合宿や、年に2回の面談を行なっています。グリーンズに関わることでその人の人生が豊かになってほしいのは、スタッフも同じ。一人ひとりがどうしていきたいか、対話や相互理解を重ねて、互いにいかしあえているかを確認する時間をとっています」

 

グリーンズは、運営メンバーの世代交代も進んでいます。

 

「今運営を担っているメンバーを第二世代と呼んでいます。草創期のメンバーからの引き継ぎは何年も時間をかけました。プレッシャーもありますが、覚悟をもって受け継いでいます。これまではメンバーそれぞれの興味や個性、強みを最大限にいかし、個々の実践を深めていく風土でした。しかし今は、事業部を超えて一致団結し、ワンチームとなって社会にインパクトを出していくフェーズにきていると、私たちは捉えています。メディアの合言葉を『いかしあうつながり』から『生きる、を耕す。』に変える際も、全員で時間をかけて考えました。この言葉はグリーンズからのメッセージであるとともに、実践できているかな、と私たちが立ち返るための言葉にもなっています」

 

小倉さんは最後に、「リジェネラティブの先はコモンズを見据えている」と話してくれました。コモンズは人々が共同で利用、管理する資源や空間を指す言葉です。再生のその先、グリーンズはほしい未来を見据えています。

取材中、森ノオトからは普段メディア運営するうえでの悩みや迷いが出ました。私たちの言葉一つひとつに想像をめぐらせ、経験をオープンに語ってくれた小倉さん。グリーンズの周りにいる人は「仲間」である……そんなグリーンズのマインドを直に感じ、大きな力をいただく時間となりました

(取材を終えて)

創刊20年を目の前に迎え、非営利メディアの先駆けとして活躍してきたグリーンズ。タグラインや掲げる旗印が変わっても、「いかしあうつながり」の在り方は変わらず、より積極的に、より大きな流れをつくる形に進化しています。

 

個人の意思や価値観を生かすことと、団体としてまとまって一つの方向性を目指すこと。これを実現する過程には、摩擦が生まれ、たくさんの対話が求められるはずです。社会に視野を広げてみても、「働き方」「夫婦それぞれの姓の在り方」「少子化との向き合い方」……異なる考えの意見が時に相反し、みんなが納得する着地は難しいと強く思う場面ばかりかもしれません。

 

しかしその状況を諦めずに実現を目指していくフェーズに、社会も、メディアも、グリーンズも、そして森ノオトもあるのかもしれない。小倉さんの力強い言葉を聞いて私は感じました。

 

書き手の関心ごとから生まれる記事づくりを大切にしている、私たち森ノオト。個を生かすことで生まれる活力を知っているからこそ、結束をつくり出していけるはずです。

 

非営利メディアがこれからの社会にできることを、私も考え続けていきたいと思います。

Information

greenz.jp

https://greenz.jp/

 

書籍:リジェネラティブデザイン

2026年2月27日発売

詳細:

https://greenz.jp/project/regenerative-design/books/

 

予約:

https://amzn.asia/d/0fS1E2xU

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この記事を書いた人
佐藤沙織スタッフ/ライター
横浜市泉区生まれ、西区在住。そこに住む人の等身大の言葉でつくられた森ノオトの記事に魅せられてライターへ。身近な人の気持ちや様子をそっと書き残していけたら。読書と犬が好き。趣味のゴルフは毎回大乱闘。
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