でこぼこな織り目は素敵な個性。アートでつなぐオリオリオルオル物語
青葉区や緑区を中心に、「織り」というアートを障がいのある人もない人も楽しめるワークショップを続けるオリオリオルオル。「織り目なんて気にしないで、もっと自由に楽しんで」とワークショップでは、今日もびりびり、ふわふわ、ねじねじと五感に響く手仕事がいっぱいです。

オリオリ?オルオル?

オリオリオルオルは、その名の通り、「織る」ことや「織り」に関わる作業を楽しむことができるワークショップを開催するグループです。障がいのある人もない人も、大人も子どももすべての人が参加することができます。ワークショップは福祉作業所や特別支援学校、地域ケアプラザなどで開かれるほか、横浜市青葉区寺家町の田んぼなど屋外で行われることもあります。

 

今回、メインに活動されている佐々木由紀さん、澤妙子さんにお話を伺いました。

手前左は澤さん、右は佐々木さん。オリオリオルオルのスタッフさんと一緒に(写真提供:オリオリオルオル)

オリオリオルオルを立ち上げたのは、「DOORプロジェクト(Diversity on the Arts Project)」という東京藝術大学で行われているケアとアートを学べる講座の修了生(2021年度)の皆さんです。DOORプロジェクトとは「ケア×アート」をテーマに「多様な人々が共生できる社会」を支える人材を育成する活動で、東京藝術大学が開設した履修証明プログラム。履修証明制度とは、社会人とその大学に在学する学生を対象として大学が体系だった学習プログラムを提供する仕組みです。

 

 

素材に心を寄せて

使用済み段ボールの織り機を利用したまんまる織り。糸の選び方で個性が出る(写真提供:オリオリオルオル)

私がオリオリオルオルを知ったのは、2025年の8月、ワークショップに参加したときでした。教えてもらったのは、段ボールでできた丸い織り機で作る「まんまる織り」。用意された材料は、魅力的な糸や毛糸がたくさんあって、どんなものを組み合わせて作ろうかと選ぶのに時間がかかりました。

 

オリオリオルオルのワークショップでは、みなさんから寄付してもらった古い着物を裂いて糸にしたものや、余った毛糸などを使います。いま、おばあちゃんやお母さんから譲り受けた着物をタンスに寝かせている人は多いといいます。着物を愛する私としては、着られる状態のものは着てほしいというのが本音ですが、それがかなわない着物(小さすぎる、状態が悪いなど)も少なくないでしょう。それらは捨てるのではなく、素材としてまた生まれ変わってほしいなと思います。澤さんは、そういった材料を使って作品を作るとき、かけがえのない大切なものを借りていると考えるそうです。

オリオリオルオルの前身的活動での作品。大切にしまわれていた故人の着物をクッションカバーにしたもの。このクッションを並べた空間はまるで着物を着ていた人たちが見えない集会をしているようだと澤さん。見えないものを感じられるのは、素材の力と作る人の思いが織り込まれたからでしょうか(写真提供:オリナス アートプロジェクト)

 

羊毛や余った毛糸を使って作るアートヤーン。澤さんの手にかかればこんなおしゃれな糸に。「余った毛糸」も喜んでいるはず(写真提供:オリオリオルオル)

作品を仕上げるということよりも大切なこと

横浜市緑区の「みどり福祉ホーム」。主に重度重複障がい者の日常を支える施設。緑区で地域交流に力を入れている。隣接する青葉区には肢体不自由のある方の施設がないため、青葉区から通ってくる人もいるのだそう

2026年1月、十日市場にあるNPO法人みどり福祉ホームで行ったオリオリオルオルのワークショップを見学させてもらいました。参加したのは通所者のみなさんです。

 

その日の作業は二つ。固まった羊毛をウールピッカーという道具を使ってふわふわにする作業、そしてそのふわふわになった羊毛をねじって撚りをかけてペグという棒に引っ掛けていくペグ織りの作業です。

 

ウールピッカーという道具は釘が何本も打ち込んであって、扱い方に気をつける必要があります。中には怖がって手を引っ込める人もいるそうです。佐々木さんは「怖いって思うことも大切なんだよね」と言います。

ウールピッカーは日本ではあまり売っておらず、澤さんと澤さんの夫の民樹さんが試行錯誤して作ったものだそう

 

ねじって絡める。スタッフに手伝ってもらいながら作業します

 

ふわふわの羊毛を触ると思わず笑みがこぼれます(写真提供:オリオリオルオル)

 

羊毛は、オリオリオルオルのワークショップに欠かせません。原毛の買い付けは青葉区のこどもの国で。こどもの国では年に一度、6月ごろ羊の毛を刈りそれを予約販売しているそうです。買ってきた原毛は洗って干して、ほぐしてと、下処理が大変そうですが、澤さんは楽しそうに話してくれます(写真提供:オリオリオルオル)

この日のワークショップでは作品を仕上げるのではなく、作業を体験するということを目的としたそうです。みどり福祉ホームでのワークショップは3年目だそうですが、澤さんは、過去の経験から学んだこととして、参加者のみなさんは自分の作品を作り上げるということより、やったことのない作業を体験することに喜びを感じているように思うと教えてくれました。

 

危ないと手を引っ込めること、ふわふわが気持ちいいなと感じること、ねじるのがちょっと難しいなと思うこと、そんな体験の積み重ねが大切なのかもしれません。

 

佐々木さんと澤さんは共に障がい児を育てた経験のあるお母さんです。現役のお母さん、お父さんたちには、「うちの子には無理だろう」「この子はできないだろう」と決めつけずに、たくさんのことを体験させてあげてほしいと言います。

 

 

オリオリオルオル、始まりの物語

佐々木さんは2020年、15歳だった息子さんを亡くしています。息子さんは重度の知的障がいを持っていたそうですが、学校で作ったアート作品をたくさん遺してくれたそうです。

 

佐々木さんの息子さんのように重度の障がいがある子は、支援学校に通い、卒業後は福祉施設に通うのが一般的で、地域の人たちと関わる機会がほとんどないそうです。また、障がいによっては、言語を介してのコミュニケーションをとることは難しいのだと佐々木さんは言います。佐々木さんは息子さんが亡くなる少し前に障がいを持ったアーティストの個展を訪れ、力強い色使いにパワーをもらったそうです。そこでアール・ブリュット(※)という考え方に出会い、すべての人に表現することの自由があるのだと気がついたと言います。

(※アール・ブリュットとはフランス語で生の芸術という意味で、専門的な芸術の教育を受けていない人の作品を指す)

 

佐々木さんはアートを通じて、地域の人たちと言語を介さないコミュニケーションが取れるのではないかと考えるようになりました。

 

佐々木さんは息子さんが亡くなった後、アートと表現、福祉とアートについて学んでみたいとDOORプロジェクトを受講します。そこで芸術を専門的に学んできた澤さんと出会います。佐々木さんと澤さんは、障がいのある子どもを育てたという経験をこれからの表現に活かしていきたいという共通の思いがあったことで意気投合し、仲間たちとまずはオリナス アートプロジェクト(※)を立ち上げます。そこで、故人の着物を裂き織りにしたクッションなどの制作を行います(本記事3枚目写真の着物を裂いて作ったクッションほか)。そこで、「織り」の魅力を再認識し、「織り」を障がいのあるなしにかかわらず楽しんでもらおうと、オリオリオルオルの活動を始めることにしました。

 

(※オリナス アートプロジェクト:「大切にしまわれてそのままになっている故人の着物」を裂き織りとして再生する作業過程と、「確かに生きていた着物の所有者」「記憶に留めて偲ぶ着物の保管者」とのつながりや思いの共生を、いわば縦糸横糸として織り成すワークショップ型アートプロジェクトです。東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクトの助成を受けた2022年度一年間の活動)

佐々木さんの息子さんの作品の一つ(写真提供:佐々木さん)

 

息子さんの絵のカラーコピーを一緒に織り込んで作ったモチーフタペストリー。息子さんのシャツを裂いたものも織り込まれている(写真提供:佐々木さん)

アートを通してつながっていく取り組み

オリオリオルオルのワークショップでは一人で作り上げる作品もありますが、みんなが順番に織って仕上げていく“リレー方式の作品”と呼んでいる手法があります。障がいのあるなしにかかわらず、みんなが同じ作業をして織っていくそんな作品です。

みどり福祉ホームさんでのペグ織りもリレー方式の作品(写真提供:オリオリオルオル)

さまざまな楽しいワークショップを届けてくれているオリオリオルオル。

 

「織り目なんて気にしないで、もっと自由に楽しんで」……最初に載せたこのメッセージは澤さんがワークショップに参加したお母さんに伝えた言葉です。この言葉は、私自身にも刺さります。「こうしなくてはならない」「子どもにはきちんとさせなくてはならない」と無意識のうちに頭が固くなっていたのかもしれません。

 

オリオリオルオルの皆さんは、自分たちが縦糸となり、出会った人、地域の人たちと一緒に、ゆるやかでやさしい、そしてときにはユニークな織り目を作っていく、そんな活動を続けていくのだろうなと思いました。

Information

・オリオリオルオル(インスタグラム)

https://www.instagram.com/oriorioruoru23/

・DOORプロジェクト

https://door.geidai.ac.jp

・オリナス アートプロジェクト

https://sites.google.com/view/orinas

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この記事を書いた人
山田麻子ライター
横浜市青葉区在住。中学生女子、小学生男子の母。料理の仕事歴25年以上。管理栄養士。森ノオトでの初めての取材をきっかけに、絵本、詩、素話に出会い、その世界の虜に。以来、絵本と飲み物やお菓子の相性を考えるのが楽しみに。図書ボランティア活動、おはなし会のお菓子作りなどに心ときめく。現在の夢は「語り手」になること。 ブログ:スマイル*ごはんを始めよう
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