「それって本当?」1枚のカードから、「当たり前」を考える。Sharing Caring Cultureのワークショップに参加して見えた景色とは
「みんなと同じじゃないとダメ?」「これはアタリマエのこと」
そんなカードが並べられているテーブル。「当たり前」と思っていたことが、実は誰かを戸惑わせているかもしれない。ダイバーシティ・トークカード®を囲み、自分自身の価値観を見つめ直す時間を体験しました。(ライター養成講座2026修了レポート:五十嵐恵美)

このワークショップは都筑区を拠点に神奈川県内で活動しているNPO法人Sharing Caring Culture(以下SCC)が主催しています。

SCCは、日本に住む外国出身者やその家族が安心して暮らせる社会を目指し、子育て支援と多文化交流を通じたコミュニティづくりを行っています。

 

さまざまな国の親子が交流する機会や、図書館での多言語読み聞かせの会、横浜市北部の外国人在住者向けの子育て情報冊子『OYACO』の作成の他、現在は学校向けに対話型ワークショップを展開しています。

 

今回、私は日本で暮らす外国出身者の思いや体験をもとに作られたダイバーシティ・トークカード を使って行うワークショップに参加しました。

 

このカードはSCC代表の三坂慶子さんが子どもたちへ外国文化の紹介を続ける中で、「文化を知ること」と「違いを理解すること」は別だと気づいたことが開発のきっかけ。

外国人と接点が少ない人にも日常の中にある違和感を身近なテーマとして考えてもらうために開発したものです。今までは教育機関でワークショップを実施していましたが、今回は一般向けの開催です。

 

カードを多くの人に届けるために実施したクラウドファンディングの支援者やワークショップに関心がある人が主に集まりました。

 

ダイバーシティ・トークカードは日常のさまざまな場面で生まれる「違和感」や「すれ違い」をもとに構成されています。

27枚のカードは、話し合いの視点ごとに、外見・アイデンティティ、言葉・コミュニケーション、学校文化・ルール、ジェンダー・性別分業役割意識、宗教・食・生活習慣、価値観に分類されています。

 

全カードに共通するのは、「当たり前」への気づき。自分にとっては普通でも、他の人にとってはそうではないかもしれないという視点を大切にしています。

このカードを使うことで、文化・価値観の違い、無意識の思い込み、そして多数派の「当たり前」に気付くきっかけを生み出しています。

日常生活の中にある「当たり前」に、「それって本当にそう?」と疑問を投げかける内容になっているカード。表に対話のテーマ、裏に外国出身の方のエピソードと対話の切り口が書かれています

 

参加者はクラウドファンディング支援者も含め学校の教員や行政職員、海外駐在経験のある方、多文化共生団体の方等、この会場自体がダイバーシティ。あざみ野駅からすぐの「アートフォーラムあざみ野」にて、多様な意見が飛び交いました

この日のワークショップの構成はこちら。

 

・ワークショップのグラウンドルール説明

・ダイバーシティ・トークカードを眺めて「共感」「もやもや」「おどろき」のシールを貼っていく「テーブルギャラリーウォーク」&気付きの共有

・ダイバーシティ・トークカードの中で深堀りしたい1枚を選択しそのカードについてのグループトークと全体共有(発表)

・一人ずつが今日感じたことや持ち帰りたい言葉を共有

 

 

何気なく過ごしている日常は、実は違和感の宝庫だ

たった1枚のカードでも、話していくと個人の価値観が強く表れるダイバーシティ・トークカード。

ワークショップにはオープンな対話を促す仕掛けが組まれています。

 

まず、何が正解かを探すことが目的ではないことが参加者に伝えられました。

 

異なる意見や考え、違いに出会う時間という点を共通認識として持った上で、話し合うためのグラウンドルールを全体で確認します。

 

相手の意見に耳を傾けるとともに、自分の言いたいことも大切に互いを尊重すること。

大きな主語ではなく、私を主語に個人の意見を話すこと。

全員が話す、聴き合うこと。

ここで聞いた話を外へ持ち出さない……。

 

これらの話し合いのルールを毎回冒頭で確認することが、安心安全な対話の場づくりには欠かせないと三坂さんは話します。

 

確認の後、ワークショップが始まりました。

はじめに参加者は、テーブルに広げたダイバーシティ・トークカードを見て、気になったタイトルのカードを直感的に選びます。

カードの裏に書かれたエピソードを読んで、「共感」「もやもや」「驚き」という視点でシールで分け、なぜそう感じたのかをそれぞれが話していきます。

 

カードはタイトルだけで目を引くものばかり。

 

「外国人なのに字が上手!」

「『国に帰れ』と言われたら?」

 

参加者はカードを見つめながら、どんなことを思ったか共有しました。

 

それぞれの考えに耳を傾けた後、さらに深掘りしたいカードを1枚選びます。

多数決ではなく、対話で合意形成を図るプロセスを大切にしながら、絞り込んだ1枚について、グループで対話するという構成です。

当たり前すぎて、普段から考えることが少ない内容のカードも多々。それぞれどう感じるか、自分で落とし込むのにも意外と難しいなあと頭を悩ませる参加者も

今回は3グループあり、うち2グループが「みんな同じじゃないとダメ?」というカード、もう1グループが「外国人だって災害のときに助け合いたい」というカードを選択。

 

「みんな同じじゃないとダメ?」のカードの裏にはこんなエピソードが書かれています。

 

「日本では、まわりと同じであることが求められ、違う行動をすると浮いてしまうと感じることがありますが、私が生まれた国では子ども一人ひとりの違いが大切にされる場面が多いと感じます」

 

うーん、確かに。

 

そのエピソードの次には、話し合いのきっかけになるような問いかけが書かれています。

 

「クラスで自分だけみんなとちがうとき、どんな気持ちになりますか。そのとき、まわりの人にどんな声をかけてもらえたらうれしいですか?」

「学校や社会で違いを大切にするためにどんな工夫ができますか?」

 

同じカードに着目しても、人の数だけ、感じることは違います。

その説明文をフックにして、企業の目線、学校の目線、日常生活の目線、いろんなアイデアや感想が飛び交います。たった1枚のカードが、日常の当たり前を「それって本当?」と違う視点から見て考えるきっかけになります。

 

「ルールと文化は違う」

「見た目だけで偏見を持たれることが多く、どこの国に行ってもつらかった」

「同調圧力の強い企業・社会で個性は出しにくい」

「違いを受け入れる前に、違いを知ることが大事」

どうしたら外国にルーツを持つ方もそうでない方も暮らしやすいか、さまざまな切り口から意見交換が行われました

それぞれの観点から、感じたことだけにとどまらず「これからどうしていったらいいのか」を個々人が考える時間になりました。全体で感じたことを共有した時には、これからの決意表明のようなシェアが続きました。

 

「何でもコミュニケーションを取ること」

「相手と対峙する勇気を持つこと」

「普通こうだよね、を疑うこと」

 

ワークショップの最後には、SCCメンバーへの質疑応答を通じて、当事者の声を聞く時間が。

今回はインドネシア人のメンバーが日本で生活していて驚いたことについて話しました。日本に暮らしていて素通りしてしまいそうな景色も、他の国の人から見たらものすごい衝撃が走る光景なのだと参加者が気付いた瞬間でした。

 

こうしたちょっとした違和感は、文化の異なる人と話すことで気づくことがあります。それは言葉に出して話さないとわからないし、違いがあるからお互いに学べる機会になります。

 

 

外国人に寄り添う、だけが多文化共生じゃない

多文化共生というと、外国人のことを思いやる、外国人の立場に立つことだけが強調されそうですが、SCC のワークショップのスタンスは少し違います。

 

まず一つ目に、どこかのやり方を押し付けることや、その事象の正誤を問うのではなく「こういう考えもあるんだ」と知ること。知ることからすべてが始まる、と代表の三坂さんは話します。

そして大きな主語ではなく「私個人を主語にする」ということ。

 

まずは「私」という個人から違うバックグラウンドの人の意見を「知る」ことが大切、と三坂さん。

「違うからダメ!」ではなく「なぜ違うんだろう?」と疑問を持って考えることも、異文化の理解につながります。

 

「SNSや生成AIの時代だからこそ、特に次世代の子どもたちに大切にしてほしい力は、情報をうのみにせず、自ら考える『批判的思考力』、相手を思いやる『共感力』、合意点を探る『調整力』です。

SNSの発達で、同じ意見に偏りやすくなるからこそ、対面での対話を通して、こうした力を磨いていく必要があると考えています」と三坂さんは話します。

代表の三坂慶子さん

3.5%で世界を変える

3.5%。この数字が何かわかりますか。

ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェス氏が提唱する、「人口の3.5%が非暴力で行動すれば社会は変わる」とする「3.5%ルール」を三坂さんは活動の念頭に置いています。

 

非暴力的な抗議行動は、武力紛争の2倍の確率で成功する可能性があること、そして、人口の3.5%以上が関与する抗議行動は必ず何らかの変化を生んでいると言います。

 

日本全体の人口の3.5%は約400万人。

横浜市全員を足しても少し足りないくらいの人数です。

 

「偏見が少ない子どもの頃からダイバーシティ・トークカードのような対話の体験を重ねることで社会は変えられると感じています。

異なる考えや価値観を簡単に排除するのではなく、相手の背景(文脈の違い)まで読み取ったうえで何ができるかを建設的に考える力が今、社会に求められている気がします。

外国につながる人たちだけでなく、日本人でも『同じ』ことを求められることに違和感を持った経験があるという声も多く聞かれます。不登校など、生きづらさの課題は、外国人だけの問題ではないことに気づきます。

多文化共生について考える輪を日本の3.5%に広げていけば、世界は変えられる 」

 

そう三坂さんは話します。

 

 

最後に

日本人、外国人と一言に括られることも多いですが、日本人の中にもいろいろな背景、意見を持っている人がいます。

 

このワークショップで感じられた「まずは違いを知ること、違いを持っている人と 対峙・対話することの大切さ」は、国籍に関係なく多様な価値観の人がこの世界で生きていくために必須だと感じました。

分断が進みやすいこの世の中だからこそ、「異なる立場や背景の人について知る」ことはさらに大切になっていきます。

 

SCCの目指す日本の「3.5%の輪」を広げる活動をこれからも応援しています。

 

SCCでは、毎月参加できるイベントを開いています。

詳しい内容は以下ホームページやSNSをご確認ください!

 

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