
最近コンビニでも販売されるなど一大ブームになっている「ビリヤニ」。みなさんは食べたこと、ありますか?「ビリヤニ」とは、インドやパキスタン、バングラデシュを中心に、広く南アジアで食べられている炊き込みご飯のこと。主にインドの高級米「バスマティ」を使い、多くのスパイスをまぜこんで香り豊かに炊き上げられているのも特徴です。下の方にゴロっと入ったお肉はボリューム満点!じわじわと混ざっていくカレーソースもおいしい!
ビリヤニがここまでのブームになる少し前のコロナ禍、2020年にオープンしたのがこちら、ビリヤニ専門店「インド料理ティッカビリヤニ」。川崎北部市場のほど近く、スーパーマーケット「マルエツ」やホームセンター「ビバホーム」の入る「宮前ショッピングセンター」の中にお店はあります。ショッピングモールの中のお店と侮るなかれ!私は初めてこのお店のビリヤニを食べたとき、本格的な味に仰天し、以来すっかりファンになってしまいました。森ノオトで「世界味めぐり」の連載をはじめると決まった時に、私が真っ先に思いついたのもこちらのお店だったのです。

ほんとうにビリヤニ専門店があるの?と一瞬心配になる外観。お店は1階、スーパーマーケットの入り口の横にあります。元々はファストフード店だった名残が随所に見えてちょっと面白い
本場の食べ方で、さぁ実食!
夏のある日。森ノオトライターたちと一緒にお店を訪れ、「チキンビリヤニ」と「マトンビリヤニ」を注文しました。ビリヤニは、小ぶりの土鍋でサーブされます。

店では一人分のビリヤニを、小さな土鍋で調理しています。できるだけ現地の味を再現したいとの思いからこのスタイルを採用したのだそう

蓋を開けると上までみっちりとビリヤニが詰まっているのが分かります。一見小ぶりの鍋ですが、思いのほかボリューミー!
パカッ!
蓋を開けると湯気とともに、カルダモンやクローブ、シナモンが混ざったスパイシーないい香りがします。「混ぜないで食べてくださいね。あ、私がお皿に入れましょうか?」と店員さん。お願いすると鍋の底からスプーンで大きくすくい出し、崩したり混ぜたりしないようにお皿にゆっくりと乗せてくれました。
ビリヤニは、3つの層でできています。一番下に、お肉とグレービー(カレー)の層。真ん中は、グレービーや肉の脂をまとってふっくらと炊き上がったバスマティライスの層。そして一番上は、フライドオニオンやサフランライスの香りをまとった層。それぞれのおいしさを、まずは層ごとに楽しみます。
驚いたのは、マトンビリヤニはお米にマトンのお肉の味が、チキンビリヤニからはチキンのお肉の味がしっかりと移っていること。同じビリヤニでもこんなに違うのか、と驚きました。
そして次に、味変。「途中で、ヨーグルトにきゅうりや玉ねぎなどの刻み野菜とスパイスを混ぜた“ライタ”をかけてみてください」。言われた通りにやってみると、ヨーグルトの酸味がキュッと口の中にひろがって一気に爽やかに。お肉の油や辛味も中和されてさっぱりといただけて、おいしい〜。

右のお皿に入っているのが「ライタ」。塩の入った、サラリとしたヨーグルトです。細かく刻んだきゅうりや玉ねぎ、ニンジンなどの野菜のシャキシャキ感も楽しい
ボリューム満点のビリヤニを、ライター3人で大満喫したのでした。

おすすめの食べ方はこんな感じ。各テーブルにも説明書きが置いてあります
ビリヤニには種類がたくさんある
後日、店長のバンダリ・ビクラムさんにインタビューしました。

流暢な日本語でインタビューに答えてくださったバンダリさん。お店でもいつもフレンドリーに接してくださいます
「ティッカビリヤニは、2020年にオープンしたビリヤニ専門店です。もともと会社ではカレー専門店を複数展開していましたが、コロナ禍をきっかけに店舗を整理し、その一つとしてビリヤニ専門店を立ち上げたんです」とバンダリさん。
2010年代半ばごろからメディアで取り上げられるようになり、少しずつ知られるようになったビリヤニ。バンダリさんによると「大阪・関西万博のパビリオンで食べられるようになったことで、人気に火がついた」のだそう。
ブームをきっかけにビリヤニ好きになった人が、たまたま店の前を通って来店することも増えているとか。「他のお店で食べたビリヤニと、なんか味が違う?と言われることもあるのですが、それは当然のことなんですよ、なぜなら、ビリヤニは一種類の料理ではないから」。
インドには30種類以上のビリヤニがあり、北と南では味も調理法も異なると言います。使うお米の種類、スパイス、肉の調理法、一緒に食べる料理まで、地域によってさまざま。「日本ではビリヤニ=細長いバスマティ米を使った料理”というイメージが強いんですが、バスマティ米を使わない地域も多いんです」。
ティッカビリヤニで毎日提供しているのは、北インドのラクナウ地方のビリヤニ。大きな鍋の中で米や肉などを重ねて調理するもので、結婚式などでも出されるハレの日の料理なのだとか。ラクナウ地方のビリヤニの特徴の一つは、肉の種類によって味が変わること。チキン、マトン、野菜など、それぞれでスパイスや素材、調理時間が異なるため、味わいがそれぞれ違うほか、同じ辛さで注文しても同じ味になるわけではないのだそうです。
「ビリヤニは、完成した瞬間から味が変化していく料理なんです。炊き上がってから時間が経つと、米が硬くなったり、ふわふわした食感が失われたりするほか、肉が硬くなったり、香りが弱くなったりしてしまう。実は、蓋を開けた瞬間から20分から30分くらいで食べ切ってもらえるのが理想!そのくらい炊きたてにはこだわりたいんです。そのため、ティッカビリヤニでは作り置きはせず、一人分の小さな土鍋を使って、炊き上がりをその都度出せるように工夫しています。できるだけ現地の食文化を再現したいな、と思っているんですよ」
文化を食べる経験を
バンダリさんがインタビュー中に何度も口にしていて印象的だったのは、「ビリヤニを経験してほしい」という言葉でした。
「店では、お客さんが初めてビリヤニを食べる場合にも挑戦しやすいよう、一つひとつ丁寧に説明することを心掛けています。辛さについては特にちゃんと説明したい」と話します。
「日本人には“インド料理=辛い”というイメージがありますが、辛さを抑えすぎると、スパイスの風味そのものを十分に経験できなくなってしまう。辛すぎるからと頭ごなしに敬遠することなく、まずはおすすめの辛さを試してみてくれたらうれしいです。また、マトンは“硬い、臭い”という先入観を持つ人もいますが、実際に食べてみると印象が変わることも多いんですよ。まずは一度試してみて、ビリヤニという文化を経験してもらいたいです」
「ビリヤニを売っている、というよりも経験を売っている感じ」と笑顔で話すバンダリさんは「いろんな種類のビリヤニを、みんなでシェアして食べてほしい」と勧めてくれました。実際、店では約7割のお客さんが数種類のビリヤニをシェアして味の違いを楽しんでいるのだそうですよ。
「ビリヤニという文化を経験してもらう」——。
そんなバンダリさんの考えは、期間限定メニューにも表れています。今年からティッカビリヤニでは、年に2〜3回ほど、インド各地のビリヤニを紹介するイベントを始めました。北インドのラクナウ地方のビリヤニを通常メニューとして提供しながら、期間限定で南インドなど別の地域のビリヤニを紹介することで、「地域が変われば、こんなに味が変わる」ということを知ってもらおうとしています。
たとえば、南インドのハイデラバード・ビリヤニは、パクチーやミント、青唐辛子を使い、最初から最後まで辛さが続くのが特徴です。ライタではなく、マトンのスープやカレー、野菜のサラダのような「カチュンバ」などと組み合わせて食べるのだとか。また、南インドのマラバル地方では、バスマティライスではなくジーラカサラ(クミンライス)を使うため、風味もかなり異なるそうです。
ビリヤニを「チキン味」「マトン味」「野菜味」といった具材の違いだけで捉えるのではなく、地域ごとのインド文化として知ってほしい。それがバンダリさんの願いです。
「ビリヤニはカルチャーの一つ」。その言葉どおり、期間限定メニューは、インドという広い国に根づく多様な地域の食文化を、少しずつ日本のお客さんにも知ってもらうための試みなのです。ティッカビリヤニが届けているのは、ビリヤニという料理を入り口に「知らない文化を知る経験」、なのかもしれません。

さまざまな地方のビリヤニの説明に熱が入るバンダリさん。付け合わせの一皿一皿にも、ゆたかなエピソードがありました。聞けば聞くほどどれもおいしそうで、食べ比べしてみたくなります!
ここまで読んだ人はきっと、ビリヤニが食べたくてうずうずしていることでしょう!はじめてさんでも、すでにビリヤニマニアだという人も。ぜひ、ティッカビリヤニで「インドの文化を食べる経験」をしてみてくださいね!
インド料理ティッカビリヤニ
住所:神奈川県川崎市宮前区犬蔵3-9-12 宮前ショッピングセンター 1F
東急田園都市線「宮前平駅」よりバス10分、「あざみ野駅」よりバス15分、小田急線「向ヶ丘遊園駅」よりバス20分
営業時間:10:00〜21:00
電話番号:044-978-1050
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