子どもの頃から、犬や猫などを飼っていた私。私の成長の傍には、いつも愛する動物たちがいました。叱られて泣いている幼い私の顔を、ペロペロと舐めてくれた愛犬。モフモフと柔らかく、気まぐれに甘えてくる愛猫。どの子たちも大切な思い出とともに、今でも心の奥にいます。
今はペット不可の住宅に住んでいるので、動物たちと暮らしてはいないけど、犬や猫の存在には、敏感に反応してしまいます。
そんな私がずっと気になっていたお店、それが今回訪ねた、猫の里親探しをしているタバコ屋さん「ミタケ」です。ちょっとした生活雑貨や食料品を扱っているほか、宅配便の受付などもしています。その店主、榊原敏子さんにお話を伺いました。
(※編集部注:榊原さんの本名は、「木ネ申」(木編に神)の「さかきばら」さんですが、インターネット上の環境で旧字での表記ができず、本文では新字の「木示申」での表記といたします)
榊原さんが里親探しの活動を始めたのは、2006年頃のこと。お義母さまの住むマンションのゴミ捨て場に、子猫が1匹紛れ込んでいたのを保護したのが最初でした。
そのときは、里親探しをこんなに長く続けるとは思っていなかったという榊原さん、実は、もともとは犬派だと言います。ただ、動物は大好きで、助けを求めていればどんな動物でも助けたい……。猫の里親探しのきっかけは、そういう気持ちからでした。
その後、「うちで生まれちゃった」とか「1匹保護した」などの理由で里親探しを依頼され、猫を預かる機会が多くなっていったといいます。
そんな中、“横浜市青葉区ねことの暮らしを考える協議会”(通称:「ねこ協」)の関係者の方が、ミタケに人が集まっているのを目にして、ポスターを貼らせてほしいと訪ねてきました。それをきっかけに、今では、ねこ協に所属する椎名亜紀さんが捕獲した猫を、主に預かるようになったそうです。
榊原さんの里親探しの活動はボランティア。大きな検査費用などは、里親さんからいただいているといいますが、ちょっとした薬代やフード、トイレの砂、猫用の雑貨などは自腹。「多少の持ち出しはあるけど、ボランティアってそういうものだもの」と、榊原さんは朗らかな顔で話します。「うちの猫のために買ったけど食べないからとフードの差し入れがあったり、飼いたいけど自分は飼えない事情があるからと、現金のカンパをいただくこともあります。本当にありがたいです」
猫を預かったら必ずすることは、首輪と鈴をつけること。「男の子は青、女の子は赤。何匹もいる時は、鈴の色を変える時もありますよ」。これは、誰が見ても分かりやすいというだけではなく、「首の周りに異物があることに慣れさせるの。将来名札をつけるためにね」
ちなみに、榊原さんのオススメの名札は、小さくて軽くて丈夫なアクリル製のもの。表には猫の名前、裏にはお家の電話番号を記すといいそうです。
最近では、名札製作のショップはネットでも何軒もあり、簡単に注文できるそうですよ。ペンで書いたものと違い、文字を掘ってくれるので、擦れて見えなくなることもなく重宝するそうです。名札をつけていれば、もし迷子になったとしても、見つかる確率は格段に上がるといいます。
また、里親探しの前段階として、榊原さんが熱心に取り組んでいるのは、人馴れさせること。「母猫から生まれて、離乳期が終わったからそろそろ里親探しを始めようという猫と違って、捕獲された猫は少し警戒心が出てきちゃっている場合があるの。だから、人と慣れて警戒心を減らす期間が必要なのよ」「いつまでたっても人間を怖がっていたり、シャーッと威嚇しているようでは、里親さんだって困るものね」
場合によっては人慣れだけではなく、大人猫とのふれあい体験のために、ご自身の愛猫ちゃんと子猫を同じケージに入れ、一緒に過ごしてもらう……なんてこともしているそうです。
個々の性格に応じて、あの手この手と尽くす様子には、猫へのあふれんばかりの愛情だけではなく、将来、里親さんと猫の双方が幸せになれるようにと願う気持ちを感じました。
ミタケの場合、里親希望者さんが現れてから決定するまでには、いくつかの段階を踏みます。
まずは、榊原さんが面接→次に捕獲者である椎名さんが、里親希望者さんの住宅環境などを改めて調べ、猫を飼える環境だと判断したら→1週間同居をトライアル。その際、椎名さんが猫を里親希望者さんのお宅へお届けし、家族関係や住まいもチェック→その後相性に問題なければ、里親さんとして正式に決定。
最終の契約の際には、必ず捕獲者の椎名さんが立ち会い、終生責任と愛情を持って室内にて愛育することなどを約束してもらう誓約書を、里親さんに書いていただくそうです。
里親さんを決めるにあたって「一番大切にしているのは面接」と榊原さんは言い切ります。面接は、30分から1時間かけてじっくりと行うそうです。「猫は、20年位生きる子もいるから、その時に里親である自分がどうなっているのかを想像してもらって。あと、家族全員が賛成しているということも大切」また「完全室内飼いができる環境かどうかも、重要なポイント」だそう。
「どの猫たちにも幸せになってほしいからね。兄弟で、この子は幸せだけど、こっちの子は不幸せになったなんてことにならないように……」
ミタケでは、1匹に対し、里親希望者さんが多数……ということも、時々あるそうです。猫の性格なども含め、総合的に考えた上での里親決定となります。もしも里親に選ばれなかったとしても、「今回は縁がなかったけど、またお願いします」、そんな心持ちで望むとよさそうです。
最後に、猫を褒める時と叱る時のコツを教えてもらいました。叱るときは、「◯◯ちゃん、ダメ!」という風に、「名前」+「ダメ」という言い方はしないほうがいいそうです。何故なら、名前を呼ばれたら次にくる言葉は「ダメ」だと思い込んでしまうから。逆に褒めるときは名前をつけます。「◯◯ちゃん、いい子ね!」と思いっきり褒めてあげてくださいね!
取材を終えて、私は、榊原さんの、どの動物にも幸せになってほしいという気持ちに、感銘を受けました。
そして、動物を飼っているかどうかに関係なく、多くの人に榊原さんの活動と動物に対する思いを知ってもらいたいと思いました。それは「保護猫の里親探し」という、言葉の持つ意味、そのもの以上の大きな可能性……、命の尊さを感じるきっかけになるのでは、と思います。
また、命の大切さを考えることで、可哀想な動物たちが、増えることのない世の中へとつながっていくことを願います。
里親を希望する方は、まず、捕獲者の椎名亜紀さんにご連絡下さい。
電話番号:080-3018-0120
ミタケ
場所:東急田園都市線藤が丘駅から徒歩3分
定休日:日曜・祭日
営業時間:8:00-19:00
榊原敏子さんのブログ 「仔猫だらけの日々」アーント・キャット
横浜市青葉区ねことの暮らしを考える協議会
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