「美味しくて、からだにやさしいパンを」と、地元のものや、育てている人の顔のみえる野菜や果物、ハーブを使い、お花や果物からおこした酵母でパンを焼くパン工房ふらんすさん。卵や乳製品、さらにはお砂糖も使っていないふらんすさんのパンは、一般のお客さんはもちろん、アレルギーのあるお子さんも安心して食べられると、遠方から買いにくる方も少なくありません。
ふらんすさんのパンを眺めていると、まず目を引くのが、お花や果物など、季節の素材を使った自家製酵母のパン。基本のパンはホシノ酵母を使って焼いているそうですが、お花やりんご、みかん、梅など、その季節に応じた素材を使って酵母をおこし、その時期ならではの旬の酵母パンも焼いています。
私もパンづくりが大好きで、自分で起こした酵母でパンを焼いたりするのですが、これが、本当に難しい。その時の酵母の状態や、天気や気温など環境の変化によっても発酵の具合がものすごく左右されるので、なかなかいつも同じようには焼けません。でも、そんな自然の酵母を相手に、販売用に安定して、たくさんのパンを焼くって、きっと並々ならぬ努力や工夫があるに違いない! そんなパンづくりの秘訣を少しでもうかがえれば……と、販売に来ていた渡辺陸子さんに尋ねてみると、
「ヨーロッパの家庭など、日常的にパンを焼く家の台所では、酵母が充満していて酵母を加えなくてもパン生地が発酵するんだそうです。酵母を起こしてパンをつくるほど、おうちに酵母が住みついて、パンがつくりやすくなるのよね。特別なことをしなくても、回数を重ねれば安定してパンが焼けるようになりますよ」
自然なものだからこそ、こちらの都合で思うようにコントロールしようとせずに、自然に酵母が育ち、住みつき、広がっていくのを、ただ待つということ、そして共存していくということ。ふらんすさんの工房で、十数年と毎日つくられ続けてきた酵母パン。どんな知識や技術にも代えられない、長い時間のなかで自然に培われてきた環境が、酵母のパンづくりの何よりもの秘訣でした。
よく考えてみれば当たり前のことかもしれないけれど、自然とかけ離れた現代の生活に慣れてしまっていると、ついつい忘れてしまいがちなこと。なんだか心にスーッと入ってきて、すごく納得できるお話でした。
ふらんすさんは大和市上和田、小田急江の島線桜ヶ丘駅近くにお店を構えているのですが、ランチにいらしたお客さんが、ゆっくりくつろぎすぎて気づいたら夕方になっていた! なんてことも珍しくないのだそう。そんなお話をうかがっていると、きっと酵母にとっても、人にとっても、すごく居心地の良い空気が流れているのだろうなぁと、ますます工房にもおじゃましてみたくなりました。
さいごに、ふらんすさんの活動の原点となっている想いを渡辺さんにうかがうと、「やっぱり生きる基本って、食べることなのよね。子育ても同じ。食がしっかりしていれば、あとはどうにかなるもの。たとえ将来どんなにお勉強ができるようになったとしても、基本の身体がしっかりしていなければ、その先にはつながらない。逆に原点である食がしっかりして、健やかな身体があれば、他のものは後からどうにでもできるのよ」、と。
渡辺さんのやさしく穏やかなお人柄と、生きる原点として守るべき食への確かな信念は、パン工房ふらんすのつくるパンにまさに表れていました。
お店では、予約をすると100%植物性素材のノーシュガー雑穀ランチもいただけるそうです。今度は、みんながついくつろいでしまうという、自然の酵母がすみついたお店に、ぜひうかがってみたいと思います。
パン工房ふらんす
住所:神奈川県大和市上和田1066-7
TEL・FAX:046-267-4604
営業:水・木・金 9:00〜18:00
ランチメニュー(予約制)日替わり 900円
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