女優、エッセイストでヒプノセラピストの宮崎ますみさんです!
映画やテレビドラマで活躍する女優としての顔、人の心身を癒すセラピストとしての顔を持ち、乳がんを克服した経験を生かしピンクリボン啓発活動や講演活動を精力的に行う宮崎ますみさん。自分自身を深く内観し、「人には自分自身を治す力がある」と得心した宮崎さんが選んだ生き方とは……(photo:大越歳生)

 

 

 

女優復帰直後に乳がん宣告。「自分で治す」道を選ぶまで

──宮崎さんは80〜90年代に女優として活躍し、90年代半ばに渡米してからは一線を退かれていました。ところが、芸能活動を再開した2005年に乳がんを宣告され、一転、闘病生活を送ることに……。

 

宮崎ますみさん(以下敬称略): 1994年に結婚したことを機に米国に拠点を移し、育児に専念していました。10年経ってまた仕事がしたいと動き始めるや否や、周囲に後押しされて映画「奇妙なサーカス」に主演して復帰を飾ることができました。映画を撮り終えて当時暮らしていたハワイに戻る直前に乳がん検診を受けたところ、悪性の腫瘍が見つかったのです。

 

手術では乳房の部分切除で済んだのですが、その後、放射線治療とホルモン剤の投与という形で治療が始まりました。がんは重度に進行していなければ自覚症状はほとんどない病気です。ところが、治療を始めることで副作用が出て、「病気との闘い」が始まっていくのです。私の場合、特にホルモン剤投与で全身のだるさや皮膚のかゆみなどのつらい副作用を発症し、心身ともに大きなダメージを受けました。約10カ月治療を受けて、「これはおかしい」と感じるようになりました。
──そして、放射線治療とホルモン剤の投与を止める決断をすることになるわけですね。

 

宮崎: 治療を受けながら、一方でヨガや食事療法、ハーブによるケア、アロマセラピー、免疫力を上げる自然療法など、さまざまな代替医療を実践していました。幸いなことに私のかかっていた病院は患者主体の治療を行う方針で、代替療法にも理解がありました。10カ月間治療を受け、このようなつらい副作用に苦しみながら放射線治療やホルモン剤投与をこのまま続けることに意味があるのかを考え、主治医に治療を止めたいと相談しにいったのです。

 

主治医からは、私のがんのタイプや大きさ、ケースなどから、10年後の再発リスクについてのデータを示してもらいました。術後10年で60%の人は無治療で再発なし。ホルモン剤を5年投与して再発しない人は70%、抗がん剤を併用すると85%まで数値が伸びる、と。5年間非常につらいホルモン治療をするのと無治療の場合を比較しても、10%しかパーセンテージは変わりません。だとしたら、無治療の60%の人が心身ともに健康になるための努力を真剣に行えば、どれくらいパーセンテージが伸びるのだろう、私はそれが知りたかった。

 

患者というものはえてしてお医者さんに「治してもらう側」に回るものですが、「自分で治す」ということにふみ出すと、自ずと医療者ともフェアな関係を築くことになりますし、同時に患者にも自立した姿勢が必要であることも学びました。生き方、マインドによって限界が変わってくると得心しました。だったら自分で治そう、と。そう考え、毎日飲んでいた薬を止めました。

 

もちろん、がんが再発する恐怖もありました。しかし、治療を止める決断をすることで、不思議と「死」を受け入れる覚悟が芽生えてきたのです。治療中は体調も悪く、心にもダメージを負い、家にひきこもって暮らしていたのですが、薬をやめたとたんに自分の命への責任感が芽生え、生きる力がめらめらとわき上がってきたのです。その時、ピンときました。「これが免疫力なんだな」と。

自身の乳がんの経験から、ピンクリボン啓発活動や、健康大使としての講演活動など、多忙な日々を送る宮崎ますみさん。全身に生き生きとしたエネルギーがみなぎっている

自身の乳がんの経験から、ピンクリボン啓発活動や、健康大使としての講演活動など、多忙な日々を送る宮崎ますみさん。全身に生き生きとしたエネルギーがみなぎっている

乳がんが導いてくれたセラピストへの道

 

──乳がんの治療を止め、ご自身で治すと決めてから今日までのご活躍は、目覚ましいものがあります。

 

宮崎: 実は、がん宣告を受けたのは医師からの電話だったのです。自分ががんになった原因を知りたいと思い、携帯電話を置いてすぐに瞑想をしました。そうすると、私のインナーチャイルド(※注:内なる子ども。子ども時代の記憶や感情、欲求などを内包する存在)がしくしく泣いていて、ピュアな私を泣かせている今の私自身の姿が浮き彫りになってきました。

 

自分のインナーチャイルドを見つけてあげた瞬間、私の中に温かい光が差し込み、ものすごい解放感と至福感を覚えました。そして、病の原因をつくっているのは自分で、それを治すのも自分自身であるということに気づいたのです。

 

──がんの経験から、宮崎さんのライフワークであるヒプノセラピーに出会っていくわけですね。ヒプノセラピーは催眠療法の一種ということですが、どのようなものなのですか?

 

宮崎: ヒプノセラピーでは、リラクセーションに入った状態で潜在意識の中に潜り込み、自分の内にある病の原因を探っていきます。

 

臓器によって病のテーマがあります。例えば子宮など女性器系の病気であれば、異性間の問題や母子間の葛藤などが病気を引き起こす原因と考えられます。

 

イメージとしては、小さな自分が身体の中を旅し、病に冒されている臓器の部屋に入る。部屋の中にいる病の原因と対話をすることで、病の原因を解放してあげるのです。すると一気に治癒力が発動し、自分で治る力がわいてくるわけです。

 

──「インナーチャイルド」がヒプノセラピーのキーワードになるようですが、これについてもう少し詳しくお聞かせいただけますか?

宮崎: 人の意識は自分で把握できる顕在意識と、自分の内側に潜む潜在意識に分かれます。その割合は、大人の場合は顕在意識が10%で、潜在意識が90%。実は大部分が潜在意識で占められているのです。

 

ところが、子どもは潜在意識と顕在意識は分かれておらず、非常に感受性が強い。大人の対応や言葉を、ストーンとそのまま受け止めてしまいます。だいたい8〜9歳で顕在意識と潜在意識の間の「膜」ができます。

 

この、8〜9歳までの間に虐待を受けたり、傷つくような言葉を投げつけられたり、愛に満たされない経験をしてしまうと、潜在意識が傷ついたまま膜の内側に閉じ込められてしまいます。認められたい、愛されたい、という本質的な欲求が満たされないまま大人になり、思いもよらぬ形でインナーチャイルドが自分自身を傷つけることになるのです。

 

本来、子どもは無限の創造力と愛に満ちた存在です。潜在意識の内側にふたをされて閉じこもってしまったインナーチャイルドに直接働きかけることで、病に至る行動様式やものの考え方といった根本原因を癒していくのが、ヒプノセラピーです。

宮崎さんは20代の時から様々なヒーリングに精通し、ロサンゼルスやハワイにいる時から瞑想して自分自身を内観する習慣があった。病と向き合う際も、自分自身を内観することで冷静に判断し、対処することができたという

宮崎さんは20代の時から様々なヒーリングに精通し、ロサンゼルスやハワイにいる時から瞑想して自分自身を内観する習慣があった。病と向き合う際も、自分自身を内観することで冷静に判断し、対処することができたという。昨年、ヒプノセラピーのサロン「ヒプノウーマン」を設立した。ヒプノセラピーのセッションのほか、女性の体に本来備わる自然出産力を引き出す出産法「ヒプノバーシング」や、妊娠を望むカップルが自然に妊娠できるような心身の状態をつくり出す「ヒプノファーティリティ」のプログラムなどを提供している

海の見える森のような空間で「癒しのリトリート」をやりたい

 

──インナーチャイルドのお話から、いかに子ども時代が人生にとって重要なのかがよくわかりました。宮崎さんがお子さんを横浜シュタイナー学園に通わせていることにも通じますね。

 

宮崎: ルドルフ・シュタイナーの人智学(オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した独自の思想で、特に教育においては人間の発達段階を7年おきに大別してとらえ、芸術や身体活動を通じてそれぞれの発達段階にふさわしい能力を伸ばすことに重きを置いている)に出会ったのは、私が23歳の時と、割と早かったのです。知人がシュタイナー教育を取り入れていたのですが、その家が木でできていて、木の椅子や布のしつらいなど、何とも言えない温かさに満ちていました。子どもができたらこんな教育がしたい、とずっと憧れていました。

 

長男は地元の学校に通っていますが、次男は横浜シュタイナー学園の1期生です。学園の先生方は、子どもたちの未来に対して責任感を持って接してくださり、子どものちょっとした仕草を見逃しません。その子が本当に求めているメッセージをしっかりと受け止めてくださり、このような教育者に恵まれたことは本当に幸せなことだと感謝しています。子ども同士の人間関係、結びつきもすばらしい。日々、私自身も学んでいます。

 

──私自身、宮崎さんのエッセイを拝読して、「自分自身を愛し、大切にしよう」というメッセージに感銘を受けました。

 

宮崎: ピンクリボン活動などでお話をさせていただく機会があるのですが、乳がんは早期発見、早期治療が大切ですよ、と訴えるなかで、本当はそれ以前が大切なんだけどなあ、と感じています。病気になる前の自分自身の心のケアや、本当に自分らしく、依存型ではなく自立型への人生を送ることを重視すれば、病気にもなりにくいはずなのです。

 

人は誰もが「幸せになりたい」と願っています。現状に満足していない心があるとすれば、どのような状況ならば幸せなのか? 自分自身がイヤだと感じていることをどうしたら解決できるのか? と、事細かに自分自身に問いかけてみる。そうすると、どんな小さなことでも、大きなことも、自分の中に問題を解決する力があることに気づくはずです。そして、どんどん自分を幸せにしていってほしい、と思います。

 

──宮崎さんの今後のビジョンについてお聞かせください。

 

宮崎: 先日、熱海でセッションをしたのですが、海が見え、背後には森があるロケーションで、このような環境で癒しのリトリート(日常から離れ、ゆったりとした環境で自分自身を癒す場所や機会のこと)を行いたいと思いました。できれば木に囲まれた空間で……。病気を克服したい、あるいは自分を立て直したいと願う人のための場所づくりをしていきたい。これが今後の夢ですね。

 

──ありがとうございました。

 

 

 

緑区在住の宮崎さんのパワースポットは、長津田の王子神社だそう。「王子神社の裏にある森には、すごい力があるんですよ。昔の人はそういうことを感じて神社を建てたのでしょうね」。

緑区在住の宮崎さんのパワースポットは、長津田の王子神社だそう。「王子神社の裏にある森には、すごい力があるんですよ。昔の人はそういうことを感じて神社を建てたのでしょうね」

 

##取材を終えて……(一言)

 

幼い頃から大河ドラマファンだったキタハラは、テレビで見ていたお姫様が目の前にいて、緊張してインタビューに臨みました。お話をお聞きするにつれ、宮崎さんの誠実な生き方、深い霊性にどんどん引き込まれ、インタビューが終わるころには自分自身が癒され、新たな価値観にふれ世界が変わったような感覚に。病を前向きにとらえ、その意味を知ることで自分自身の本質にふれる。病に苦しむ人、寄り添う人……より多くの人に宮崎さんのメッセージを伝えたい、と感じました。

 

Information

宮崎ますみ(みやざき・ますみ)

女優、エッセイスト、ヒプノセラピスト、ヒプノウーマン代表。横浜市緑区在住。1984年にクラリオンガールに選ばれ、芸能活動を開始。翌年映画『Be-Bop High School』に出演、以後、大河ドラマ『武田信玄』『太平記』、テレビドラマ『ずっとあなたが好きだった』『スチュワーデスの恋人』他、多数のテレビドラマ、映画、CM、ラジオ、舞台などで活躍。2005年に主演映画『奇妙なサーカス』でモントリオール世界映画祭・主演女優賞受賞。

結婚を機に渡米し、ロサンゼルス、ハワイで子育てをしながら、癒しを追求して心理学、精神世界、潜在意識、超意識の世界に傾倒する。

2005年に女優活動を再開した矢先に乳がんが発覚。西洋医学と自然療法による治療を取り入れ、見事にがんを克服した。

その経験を生かし、ピンクリボン活動や厚生労働大臣より任命された「健康大使」として全国各地で講演活動を行うなど、多忙な日々を送る。また、エッセイストとしての顔も持つ。

乳がんの経験から病にも意味があることを知り、催眠療法であるヒプノセラピーを学ぶ。米国催眠療法協会、米国催眠士協会認定ヒプノセラピスト。セラピストとして人を癒すとともに、日本でヒプノセラピーを伝える第一人者として多方面で活躍中。

 

宮崎さんが代表を務めるヒプノウーマンのウェブサイト

http://hypnowoman.jp/

 

 

宮崎ますみさんが参加するイベントのご案内

第3回メディカル市民フォーラム『みんなで考える、元気!のための医療』

日時:2010年5月8日(土) 開演13:30(開場13:15〜16:50)

場所:東京ウィメンズプラザ(東京都渋谷区神宮前5-53-67)

入場料:1000円 定員300名、全席自由

主催:NPO法人国連支援交流協会 メディカル市民フォーラム

 

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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