※2020年9月にリニューアルされて店舗形式が変わっています。詳細は、infomation欄のリンク先でご確認ください。
豚のいるガソリンスタンドとして有名な金子石油店がある鴨志田中央交差点のすぐ近く、寺家ふるさと村へ向かう長い坂を登りかけたところに虹が描かれたハワイアン風なお店があります。子連れでも行きやすく、ママ達がゆっくりと食事をしながらじっくりとお喋りを楽しめる「フラメシ」が……というのは今年の春までのこと。
「あれ?!いつの間にか看板が変わっているよ!」
「ハワイアンから和食になったんだって! なんでかな? それにしても、和食も嬉しいね!」
「店長さんは変わっていないんだよね」
新学期の親睦会、ランチ会を企画するカモジケ周辺エリアの幼稚園や小学校のママたちはこの春、長年馴染んできたフラメシのリニューアルにざわめきました。
そんな折に私は、森ノオトの梅原昭子さんから、「フラメシ店長の藤好つむぎさん、お店でお味噌汁を出してみたいと思っていたんだって」という一言を耳にしました。なんだか衝撃的でした。あのどっぷりと南国なロコモコ、パンケーキの美味しかったお店から、「お味噌汁」を出すお店に変貌を遂げたのには、なにか素通りできない「思い」がそこにある気がしました。ぜひその理由を伺いたいと、この度ウチルカの店長・藤好つむぎさんに取材をお願いしました。
ウチルカでの取材のお約束はちょうどお昼を少し過ぎた頃、店内は子連れのママさんやファミリーで賑わっていました。どこのテーブルにも笑い声があり、美味しいお味噌汁の香りにいつの間にか包まれ、ご飯を食べ終わった子どもたちはママを困らせることなく、キッズスペースへ一目散。賑やかでありながらどこか穏やかな、大人にとっても子どもにとってもくつろぎの一時が流れています。
そんな賑やかなテーブルの間をぬって、笑顔で足早にやって来てくれたのがウチルカの店長つむぎさんでした。
つむぎさんのお話を聞くうちに、ウチルカというのは、一朝一夕にお店がリニューアルした形ではなく、フラメシが開店してから年月をかけて地域に溶け込んでゆき、進化した形なのだなあとわかりました。
つむぎさんは5年前にフラメシの店長になってから、フラメシのお客さんの多くは女性であること、キッズスペースもあるのでお子様連れが多いこと、地域柄ナチュラル思考な方々が多いこと、そしてお客様が駅前のお店のように通りがかりで来店するのではなく、わざわざこのお店を目指して来てくれていることに、今よりさらに添えないだろうかと考えたそうです。
そして、キッズメニューを増やしたり、ママたちのパーティープランをキッズメニュー込みで考えたり、地域の人々とのつながりをより大切にしようとカモジケエリアで他のお店と共に行うハロウィンを企画したりと、次々にアイディアを出し、実行してきました。それでもなお、もっとお客さんに応えたい、そしてさらにスタッフの持っている力を発揮できる環境を作りたいとつむぎさんの思いは留まることはありませんでした。
つむぎさんはお客さんだけでなく、お料理を作っている側もお母さんなのだということを強く意識していました。そのうち、お母さんの感覚で作る「子どもに食べさせたいもの」をメインのメニューにしたいという確固たる思いが定まっていきました。
ママさんスタッフの力を集結して、2013年には、フラメシと姉妹店であるコボルバを含めた各店の「セントラルキッチン」としての機能をフラメシに確立しました。3店舗全てのお料理の管理や仕込みをこのお店の奥でフラメシのスタッフたちがおこなうようになったのです。お店としての底力をつけ、さまざまな試みに手応えを感じながら、ついに昨年の秋、月1回で行われるお店のスタッフミーティングで、つむぎさんはまず、スタッフのみんなにこう切り出したそうです。
「お店で、みんなが得意なお味噌汁を作ってみない?ハワイアンから和食、どうかな?」と。
話し合いの中で、スタッフとつむぎさんの思いが一つになり、その場でお店の新しい名前「ウチルカ」まで決まったそうです。「ウチルカ」は「おウチ」へ「来るか?」という響きを合わせ、気軽におウチへ寛ぎにくる感覚で足を運んでもらいたいという願いが込められました。そしてその夜、つむぎさんは「ウチルカ」という名前を提げて、オーナーである金子拓也さんにリニューアルへの思いを伝えました。オーナーは驚きながらも、その思いがけない申し出をどんと受け止めてくれたそうです。
そしてそこから、つむぎさんとスタッフの大奮闘が始まりました。なにしろ自分たちでまさに「勝手に」決めたお店のリニューアル! リニューアルへの準備はオーナーに迷惑をかけないようにと、なんと自分たちで全ておこなったそうです。
「全てって、えっと……」インタビューしながら一瞬戸惑った私に、つむぎさんはにっこり。「全てです! お店の看板は、私が作りました。この壁も私が塗りました(お店のブラウンの壁を指差しながら)! そのクッションはスタッフが家で作ってきましたよ。フリマを開いたり、スタッフの手作り作品を出展したりしてお皿などを買う資金を集めました。新しいお店の名前と共に、新しいイメージでお客さんをお迎えしたかったので、そのためにはお店の雰囲気作りを大事にしました」。
それから、「月に一度のスタッフミーティングを一部ですけど、よかったら見学してみますか?」とつむぎさんに誘われ、後日、営業前のスタッフミーティングにも潜入させてもらいました。
地域の夏祭りやカモカモ祭りなど、今後続いていく様々なイベントで出店するメニューについて、店長、スタッフの垣根を越えて、良いものを作りたいという目標に向けて、遠慮なく意見を出し合っている様子です。「お祭りといえばたこ焼きだけど、これは1回目にやって、大変なことになったよね!」など、ときどき笑いがどっと起こりながら、話し合いはぐんぐん進んでいき、いつの間にかメニューがしっかり決まっているのが見事でした。
「女性は、結婚や出産、育児、親のこと、旦那さんの仕事のこと、そして自分自身の体のことなど、様々な理由で、幾度も生き方を変化させていかなければならない時があります。それは本人が望んでというより、半ば仕方なく変えなければならない感じで。このどうにもならない変化の中で、母親として妻として家庭にありながらも、社会とだって関わり続けていきたいと思う方は沢山居ると思う。自分も双子を出産して3年間、完全に育児にどっぷりと浸かって、気が付いたら、あれ? 私の家庭以外での居場所ってどこにあるのかな? と呆然とした時があるんです。育児も大事にしていきたいですが、同時に働きたいと切実に思いました。それはお金の問題ではなくて、母親である私だって、もっと誰かの役に立てるはずだ、社会の役に立ちたいという思いからでした」
そうして、再び社会へと乗り出していったつむぎさん。幾つかの出会いと転機の中で、こうして今があります。
「カモカモ祭りはウチルカの主催にとどまらず街の人を巻き込んで街のイベントとしてやっていきたいね」というつむぎさんの言葉に、大きくうなずくみなさんの表情はとても頼もしく、同じ地域のお母さん同士としてもわくわくせずにはいられませんでした。
やがてお店の開店11時直前になり、会議が終わったと同時に、スタッフさんはさっと厨房へ、つむぎさんはお店のドアを開けます。テラス席で開店を待っていた3人のお客さんを「お待たせいたしました。どうぞ、こちらのお席へ」と、つむぎさんはとびきりの笑顔で招き入れていらっしゃいました。こうして、また今日も鴨志田のウチルカの活気と笑顔のあふれる、美味しい香りに包まれた1日は始まります。夕方、スタッフさんがそれぞれお家に帰り、お母さんの顔になるまで。
ウチルカ
横浜市青葉区鴨志田町561-1 パインドエル金子 1F
TEL:045-961-6522
営業:11:00~16:00 (15:00L.O.) 日曜定休
URL:http://www.kaneko-foodsdiv.com/hula_meshi/
facebook:https://www.facebook.com/uchiruca/
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