中米産スペシャルティコーヒーでほっと一息。美しが丘西「カフェブランコ」
黒く大きな煙突、窓越しには何やら大きな白い機械が見えます。店の工事中から「どんなお店ができるんだろう」と様子を眺めていた「カフェブランコ」が、この春、ついにオープンしました。自宅から歩いて行ける距離にできた自家焙煎珈琲豆屋さんに、お話を伺いました。

私が住む美しが丘西地区は、駅から少し離れたエリアではあるものの、住宅街と大きな公園、そしてスーパーやドラッグストアなどがほどよく点在しており、生活するにはとても便利な場所となっています。しかし、足りないものがひとつ。それは、気軽に寄ることができ、おしゃべりと喫茶を楽しむことができる場。並木がつづく道を散歩していると、ちょっと寄り道をしたくなるのです。そんな私の願い(?)が叶ったのか、自家焙煎珈琲豆の販売と小さな喫茶スペースのある「カフェブランコ」がオープンしました。

店名である「カフェブランコ」のブランコ(スペイン語で“白”の意味)の由来でもある白い大きな焙煎機。この店のシンボルであり、豆を焙煎する甘く香ばしい香りがここから周囲へと広がっていく

カフェブランコでは、店主である井口直之さんこだわりの中米産スペシャルティコーヒー豆を仕入れて、店内にある大きな焙煎機で焙煎をしています。スペシャルティコーヒー(*)とは、簡単にいうと、「生産段階から品質管理がしっかりされており、銘柄や価格に左右されることなく消費者が美味しいと感じるすばらしい風味をもつコーヒー」ということ。

 

*スペシャルティコーヒーの定義については、日本スペシャルティコーヒー協会のホームページに詳しく記されています。

 

コーヒーと言えば中南米産と大きく括られるイメージがありますが、カフェブランコでは中米にある農園指定の豆のみを扱っており、豆を説明する札には“◯◯農園 △△△(豆の品種名)”と書かれ、その豆の特徴が細かく記されています。

 

「スペシャルティコーヒーが確立されてきて、農園・品種・栽培方法などによる味の違いが明確になってきたこともあり、お店では農園指定の豆にこだわっています。さらに、中米というのは標高差も様々であり、それだけ豆の個性も豊かになります。おもしろい取り組みをしている農園もあり、これからまだまだ発見の余地があるところにとても惹かれます」

 

井口さんの言葉からは、珈琲に対する思いや多くの人にその魅力を伝えたいという気持ちが常に感じられます。しかし、実は、以前は珈琲がもつ独特の風味があまり得意ではなかったといいます。それが、ある時、鎌倉の珈琲店で注文と間違って出された一杯の珈琲をきっかけに、珈琲に対するイメージががらりと変化しました。そこで出会った珈琲の美味しさに感動し、珈琲の世界へと歩み始めたそうです。

 

そして、会社員として働く傍ら、都内にある珈琲店に通いつづけ、鎌倉での珈琲との出会いから6年目にして、「自分が味わった驚きや苦手意識がなくなるような珈琲との出会いを、ぜひ多くの方に味わってもらいたい」との思いから、自らのお店を開くことを決意します。

店主の井口直之さん(右)と奥様の井口幸子さん(左)。ご主人が“思いたったら即行動派”に対して、奥様は“なぜそうなるのか? を考える理論派”とのこと。しかし、開店の際にご主人の背中を押してくれたのは奥様だった。会話からも、日々のお2人のやり取りが伺える

鷺沼生まれ、たまプラーザ育ちの井口さん、店を開くのは地元で! という思いしかなかったといいます。しかし、物件探しでは、豆の焙煎機から出る煙の問題などもあり、近隣への配慮から、なかなか思うようには進みません。また、並行して進めていた設計においても予算的に諦めざるを得ないことが続き、思い悩んでいたといいます。こうした中、今の物件に出会い、目の前には公園の緑があふれ、子どもや散歩をする人たちの姿が見られる風景に、ここで焙煎をしている自分の姿が浮かびあがったと井口さんは言います。それからは、順調に準備が進み、結果的に物件も施工会社も巡り合わせるかのようにやって来てくれたと話します。

“きちんと作らないでほしい。丸く、ぽってりと……”との井口さんの注文に対し、気持ちよく対応してくれた大工さん力作の店内。木の温もりでいっぱい。奥では淹れたての珈琲が味わえる。カウンター背後には、老舗和菓子店から破格の値段で譲り受けたというこだわりのオレンジ色のオーブン。これで看板商品でもあるシフォンケーキを焼く

 

足場板と鉄でできた珈琲ドリップ台。大工さん手作りの開店祝いで、とても味のある表情。つくってくれた人のことを思い出しながら、嬉しそうに珈琲を淹れる井口さん。傍らには、“ぽってり”好きの井口さんがガラス作家さんにつくってもらったという豆の保存容器

 

1杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れる珈琲。手づくりのシフォンケーキは、シフォンケーキ専門店で習得した味。しっとりふんわりと、珈琲の風味を邪魔しない美味しさ

 

棚には、お2人が集めたアンティークのコーヒーミルやカップが飾られている。
店内のいたる所に、さまざまなエピソードをもつモノがあふれている

 

「今、ここに居られるのは、本当に奇跡的な出会いの積み重ねだと思っています。欲しいもの、なってほしいことを念じて口に出していたら、モノや人との出会いが必ずやってきました。このお店もまちの中で、そうした出会いの場として地域コミュニティのひとつとなっていけたらと願っています。お気に入りのパン屋さんがあるように、お気に入りの珈琲豆屋さんとして存在し、珈琲はコミュニケーションの手段のひとつとなれば……」と、穏やかに井口さんは語ります。

 

オープンしてから2カ月。豆を買いに来る人、珈琲を飲みに来る人、店主と話をしに来る人、その目的は様々。定期的に開催している珈琲教室では、教室に参加された方のご主人から「最近、妻の淹れる珈琲がおいしくなったんだよ」とのうれしい報告をいただいたこともあるとか。

 

カフェブランコでは、“珈琲”という媒体を通して、静かに人の輪が広がっていくのを感じます。日頃から、暮らしのなかに“ふらりと立ち寄れる場”の大切さを実感していますが、近所にも少しずつこうした輪(場)が広がっていくような気配がし、なんだかワクワクしてきます。1杯の珈琲が、何気ない日常会話が、なんでもない日々の生活をちょっぴり楽しくさせてくれるような気がします。

 

カフェブランコでは、定期的な珈琲教室以外にも、今後は珈琲とのフードペアリングなどのイベントも予定しています。ぜひ、一度“ふらり”と立ち寄ってみてください。

店内から眺める外の風景。緑が眩しく、また夕暮れ時には最高の珈琲タイム

Information

「カフェブランコ 珈琲教室」

毎週月曜日13:30-15:00

定員:4名

受講料:3,240円(税込) ※おやつ・お土産コーヒー豆50g付

お申込み:045-902-3951もしくはinfo@cafeblanco.jp

※受講希望日とお名前・ご連絡先をお知らせください。

清水 朋子
この記事を書いた人
清水朋子ライター
食べること、つくること、ワインとチーズ、焼酎を愛する食いしん坊。雑木林のような豊かな庭、愛するアンティークに囲まれた自宅の一角で、集会所+ときどき、喫茶として「Glänta(グレンタ)」を主宰している。小さな家の隅々まで愛おしみ使い尽くす、センスのよい暮らしぶりが注目を集める。
カテゴリー

まだデータがありません。