まるで避暑地!? 本と緑に包まれる 美しが丘西「book&cafe Nishi-Tei」
住宅街が広がる横浜市青葉区美しが丘西の一角。大通りから一歩なかへ入ると、そこに、鬱蒼と生い茂る緑を借景とした大きな平屋の一軒家があります。若いお母さんからご年配の方まで、近隣住人のオアシスのようなカフェをご紹介します。

横浜市青葉区美しが丘西エリアは、新しい小学校が開校するなど、ファミリー世代が多く移り住んでいる地域です。スーパーやドラッグストアもあり、生活をする上ではとても便利な場所です。しかし、女性がゆっくりとランチをしたり、お喋りをしたりする場は、思いのほかあまりありません。そこに、2016年6月にオープンしたお店が「book&cafe Nishi-Tei」です。

 片流れ屋根が特徴の大きな平屋の一軒家。“おうち”という表現がぴったりな大らかな佇まい。門をくぐると、お香の香りが出迎えてくれる。中へは靴を脱いでスリッパに履き替えて上がる。まるで、おばあちゃんの家に遊びに来たような感覚におちいる


 

カフェ空間。吹き抜けの天井、どっしりとした柱や木の枠組み、そして奥には光あふれるサンルームのような空間が広がる。左手には和室の大広間がある。どの席に座っても、窓からはたっぷりとした緑が眺められる

Book&cafe Nishi-Teiの店主である岡﨑牧子さんは、幼稚園と小学生のお子さんを持つお母さんでもあります。また、出版関係の経歴をもち、昔からカフェ巡りや本のあるカフェに興味があったといいます。
 
「子どもがまだ乳幼児の頃、この付近を散歩しながらいつも考えていました。どこか自宅以外でくつろげる場所はないものか、一時でもいいから家事や子育てのことを忘れて、ゆっくりできる場がほしいなと」
 
すぐに何かを始めるつもりはなかったそうですが、知人からこの建物を紹介してもらい、中を見た瞬間にこの家との縁を感じ、ご主人や友人の後押しもありカフェをオープンする決心をしました。オープンから1年ほど経ち、赤ちゃん連れのお母さんからご年配の方まで、今では幅広い世代の女性が集う場となっています。

右から、店主の岡﨑牧子さん、スタッフの向井さん、加藤さん、吉良さん。開店当初からのスタッフやお客さんからこの店が好きになりスタッフとなった方まで、現在は4人体制で営んでいる。共通点は、子育て真っ最中! お互いに助け合いながら、働ける環境が揃っている


 

お勧めの「Nishi-Teiオリジナル山形牛使用牛すじカレー(自家製ピクルス付き)」。トロトロに煮込まれた野菜とお肉にスパイスの香り、甘酸っぱいピクルスの相性が最高。他にもミートソースや季節のピザなど、ランチタイムにはたくさんの種類のメニューが並ぶ


 

「オレンジと紅茶のシフォンケーキ」。ふわふわしっとりとしたシフォンに、季節のフルーツが添えられる。春にはいちごが登場

たくさんの食事やカフェメニューが並ぶNishi-Teiですが、もうひとつの特徴は本棚やカウンターに並べられた「本」です。岡﨑さん自身が選んだものやお客さんから献本していただいたものなどが並びます。また、そのジャンルは暮らしに関わるものから教育に関するものなど様々です。これらの本を店内で読むことはもちろん、気にいった本が見つかればひとり3冊まで貸出もしています。子どもから大人まで、本を借りることができ、自宅に持ち帰りじっくりと読むことができるのはうれしい限り。

本棚には、小説や興味深い単行本がぎっしり。右手は、ハンドメイド雑貨や小物などが並ぶ


 

左は、岡﨑さんが本を選ぶ際に参考にしている書籍。右は、本の貸出の際に渡すチケット。レビューを書くと、ドリンク100円引きのサービス付!
「しっぽがハゲるとはずかしいんだなと思いました」という、子どものレビューがほほえましい……

オープンから1年経ち、岡﨑さんが考える未来や大切にしたいことについて伺いました。
 
「この地ではじめてみて、地域の方の文化的レベルの高さにまず驚きました。ハンドメイド作家の方も多いですし、何かを教える・学ぶといった方の需要がとても多い。これは良い意味で想定外のことで、この部分は今後とも伸ばしていきたいと思っていて、大切にしていきたい部分です。逆に、メニューについてはできる限り季節のものを取り入れ、変化を楽しんでいただければと思っています」
 
「そして、これからもあらゆる世代の女性が自分自身と向き合える時間、空間づくりをしていきたいと思っています。女性は、環境や子育てなどによりどんどん立場が変わっていきます。その折々に、何かつくることであったり、おいしいものを食べることであったりと自分とゆっくりと向き合うひと時をもつためのお手伝いができたら」
 
同じ世代の子どもをもつ母親として、岡﨑さんが話す言葉は心に素直に入ってきます。この10年余りの間に起きた環境の変化(結婚、出産、子育てなど)に、順応させようとどうにか過ごしてきたことは、私だけでなく世の中の多くの女性が歩んできた道のりだと思います。こうした過程のなかで、「自分自身と向き合える時間」の大切さは身に染みて感じています。
この日、岡﨑さんやスタッフの方のお子さんたちが学校帰りに立ち寄る姿が見かけられました。子どもとの距離については、あえて仕事と子どもとを切り離さず身近に感じられるようにしているそうです。母であるお母さんと仕事をしている別の顔のお母さんの存在を間近でみることにより、子どもたちは何かを感じることがきっとあるように思えます。
 
私自身は、仕事と子育てをできる限り切り離して考えることが多いのですが、どこか頭の片隅では、子どもといつも一緒にいられないことへの後ろめたさを感じることがあります。「仕事と子育て」のバランスは、多くの女性がかかえる悩みの一つだと思います。今回の取材を経て、女性が子どもを育てながらも自分に合わせて柔軟な働き方をしていくこと(時には、働く場をつくりだすことも!)へのヒントを垣間見た気がしました。

和室では定期的にヨガ教室も開催されている。窓からは緑が眺められ、気持ちのよい空間でのヨガは最高!(写真提供:book&cafe Nishi-Tei)

Information

book&cafe Nishi-Tei」 

住所:神奈川県横浜市青葉区美しが丘西2-40-3

営業時間:1000-17301700ラストオーダー)

     1400-1730はドリンクとデザートのみ。

定休日:土日祝(他に、月に2回ほど不定期でお休み)

TELFAX045-532-4843

http://www.nishi-tei.com/

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この記事を書いた人
清水朋子ライター卒業生
食べること、つくること、ワインとチーズ、焼酎を愛する食いしん坊。雑木林のような豊かな庭、愛するアンティークに囲まれた自宅の一角で、集会所+ときどき、喫茶として「Glänta(グレンタ)」を主宰している。小さな家の隅々まで愛おしみ使い尽くす、センスのよい暮らしぶりが注目を集める。
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