farm to miso 〜畑で大豆をつくり、手前味噌をつくる
毎日の味噌汁に欠かせない基本調味料・味噌。最近では手前味噌づくりも流行っていて、森ノオトでも2016年から毎年おこなう定例イベントとして定着しています。2017年には横浜市青葉区・緑区の「遊休農地を活用する会」の皆さんと一緒に、大豆の植え付けから収穫、選別まで、まさに「畑からつくる味噌」に取り組みました。森ノオト流「farm to miso」の1年を振り返ります。

「森ノオトさん、手前味噌づくりをしているなら、ぜひ地元の農家さんと一緒に大豆からつくってみませんか?」

 

横浜市北部の農地活性化に取り組んでいる北部農政事務所(横浜市環境創造局)の田並静さんからそんなお声がけがあったのは、2016年の秋のことでした。森ノオトでは2016年の春先から「手前味噌づくりワークショップ」をおこなっていて、その活動に注目をしてくださっていた田並さんは、ぜひ地元の農家さんと森ノオトをつなぎたいと考えていたそうです。

森ノオトではこれまで、2016年、2017年に手前味噌ワークショップをおこなってきた。実は北原は2006年から毎年手前味噌を仕込んでいる

 

2017年4月10日、北部農政事務所のスタッフの方々と一緒に待ち合わせをした先は、横浜市青葉区奈良町で代々農家を営む三澤元芳さんのお宅。元芳さんは森ノオトの「地産地消の調味料講座」「地産地消を未来につなぐ体験講座」でお世話になっている三澤百合子さんのご子息で、今ではJA横浜田奈支店の青壮年部に所属する若手のリーダー格として、「遊休農地を活用する会」を率いて若手農家と一緒にうどん用の小麦や玉ねぎを栽培するなどして、地元の農業の活性化に取り組んでいます。

遊休農地を活用する会の三澤元芳さん・中嶋芳貴さん。普段はそれぞれ家業の農業をやり、遊休農地を活用する会では、「生産性があって、付加価値があるものを」という方針で、うどんやパスタになる小麦や、落花生などをつくっている

 

これまで森ノオトでおこなってきた手前味噌づくりワークショップでは、山形県産の大豆と米麹を主に使ってきていましたが、せっかく森ノオトで地産地消を推進しているのだから、横浜産の大豆や麹で味噌をつくれたらいいなあ、と、漠然と思っていました。しかも、神奈川県には「津久井在来大豆」という、神奈川県の気候風土に根ざし、毎年種を継ぐことで命のリレーを見られる、貴重な品種があります。

おそるおそる三澤さんに「手前味噌用の大豆をつくっていただけますか」と尋ねてみると、「私たちも地元のNPOと一緒にやるのは初めてだけれども、やってみましょう」と、快く引き受けてくださいました。できるだけ、大豆がどのように育つのか、季節ごとに観察や体験をしてみたいとお願いし、さらに森ノオトに関わるメンバーは小さな子どもがいることもあり、無農薬栽培での生産を依頼しました。

大豆の播種(種まき)をしたのは7月3日。「種まき体験できたらいいんですけど」と言ったら、「一瞬で終わっちゃうから、体験するにも手持ち無沙汰だよ」と中嶋さん。確かに、ものの30分もしないうちに終わってしまった

 

遊休農地を活用する会の畑は、JA横浜田奈支店・「四季菜館」から恩田川沿いを渡って徒歩5分ほどの緑区長津田町にあります。あたり一面に畑が広がり、川と遊歩道がある、とてものどかな場所です。「森ノオト大豆」の畑は、20メートルの畝が14本で、約2000平米もの広さです。

 

この日蒔いた種=大豆。三澤さんの家で代々種を継いできた。約500gの種を植えて、20kgの大豆の収穫を目指す

 

「大豆は前につくった作物の肥料が残っていると安定しないので、確実にできるとはお約束できません。また、連作障害を防ぐためにも、小麦やさつまいもの後に大豆を植えて、施肥をせずに済むようにしますね」と、三澤さん。大豆は天候に左右されること、また種子消毒をしないと種まきをしてすぐに芽が鳥などに食べられたり、病気にかかってしまう可能性もあることも了承したうえで、まずは1年やってみましょう、ということになりました。

 

種まきをして2週間後。芽を出し葉を広げ、生育は順調な様子

 

JAの青壮年部の仲間たちに、土寄せ機の使い方を指導する三澤さん(左)

 

種をまいて約2週間後の7月22日には、土寄せをおこないました。
「大豆の苗を倒れないようにするために土寄せをおこないます。土が動いていれば、雑草が生えにくくなるし、一度土を寄せることで小さい雑草の根っこがとれます。大豆は豪雨が心配で、強い雨がいっぺんに降ると種が雨にたたかれて発芽しにくくなるけれど、今年は雨の悪影響はあまりなかったかな」

三澤さんは、思いのほか生育状況のよい大豆畑を見て、ほっとした様子でした。

10月の夕暮れ時の大豆畑。蚊がすごくて、たった10分畑にいただけなのに、10箇所以上刺されてしまった。農家は大変な仕事だなあ、と改めて実感した

 

8月には花が咲き、少しずつ実をつけてきた大豆たち。猛暑の夏を経て、私が次に畑を訪れたのは10月10日でした。「いい感じに枝豆ができていますよ。数株引っこ抜いて、食べてみてください」と三澤さんからメッセージをいただき、夕方、畑に行きました。

私の目の前に広がったのは、7月に見た時とはうって変わって、肩くらいまでにワサワサと葉が茂り、たっぷりと実をつけた大豆の畑でした。そこから数株を引き抜き、枝つきのまま茹でて「枝豆」として食べました。味はどこか淡白で、実も小ぶりだけれど、成長を見届けてきた大豆たちはとても愛おしく、最後まで美味しくいただきました。

 

津久井在来大豆は枝豆用の品種ではないので、「美味なる枝豆」とは少し異なる味わい。だが、堂々とした枝豆はビールのつまみに最高!

 

大豆は、種をまいてから土寄せをするまでの天候がキモで、今年はその時期をうまく乗り切ったため、「種子消毒をしなかったけれど、こんなにもうまくいくもんだなあ」と、三澤さんも驚いていました。

 

11月11日の秋晴れの日には、森ノオトのメンバーとその子どもたち数人で、大豆の収穫体験をしました。大豆は畑である程度枯らしてから、茶色くなったものを根元から引き抜いていきます。途中で種がポロポロこぼれるのを、2歳児、3歳児たちは小さな手で拾い集めて、畑にしゃがんで遊んでいました。

 

収穫は子どもの手でも簡単にできる。ある程度の枝を束にして、稲のようにはさ掛けして乾燥させる。まだ緑色の葉っぱは残しておき、茶色くなってから収穫する

 

莢(さや)からこぼれ落ちた種。乾燥して大豆になっているもの、まだ枝豆状のものなど、一つひとつの表情が可愛い

 

残った大豆も2週間後にはほぼ収穫を終え、三澤さんの家で脱粒(大豆を莢から落とす)作業をします。大豆の枯れた枝を機械にかけ、大豆を選別していきます。

 

「30kgはあるんじゃないかな。今年はよく採れた」と三澤さん

 

手際よく大豆の枝を脱粒機にかけていく。ガーッと大きな音がして、粉塵が飛び散る

 

袋にコロコロと飛び込み、みるみるうちにたまっていく大豆たち。森ノオト大豆もいよいよ完成です。最終的な収量は33kgほどでした。

地元の大豆で手前味噌をつくりたい、しかも、大豆からつくりたい。そんな夢を叶えてくださった三澤さん、遊休農地を活用する会の皆さんに、心から感謝します。

 

 

「収穫した大豆は、一つひとつ目で見て選別していくのよ」と、百合子お母さん。年明けに選別体験をさせてもらうことになった

 

2017年は、体験農業まではできませんでしたが、一年を通して大豆の成長を見守るなかで、生産者の方がいかに責任感をもって農作物と向き合い、様々なリスク対策をおこない、消費者に作物を届けるために真剣なのか、痛いほどわかりました。

 

今は、「欲しい時に欲しいものがいつでも手に入る」という、便利な時代です。その便利さゆえに、農家の方々が、自分の思い通りにはならない天候や病害虫との関わりを模索しながら、安全で美味しいものを消費者に届けるために、たいへんな苦労と努力をしていることを、見落としがちです。私は、生産者のこと、農地のこと、環境のことを考えた消費のあり方を模索したいと思っています。大豆をつくるのにも約半年かかります。畑では毎年同じ畝で同じ作物をつくれないため、どの時期に何を植えようか、数年単位で計画する必要があります。なんであれ、簡単につくれるものではない、ということがわかった今、できるだけ継続的に作付けを依頼し、「食べる側」が「つくる側」のリアルを知り、農ある景観と季節に根ざした行事、食の豊かさをこれからの未来世代にも伝えていきたいと思います。

さて、この「森ノオト大豆」の物語、続きは「100人のひとしずく 〜手前味噌プロジェクト〜」に続きます。

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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