みんなでDIY、アップリケな空間「森ノハナレ」誕生物語
NPO法人森ノオト事務所「森ノオウチ」の別館・工房兼ギャラリーの「森ノハナレ」を2018年6月に開設しました。DIY指導は一般社団法人青葉台工務店。工務店4社で出た端材を持ち寄り、壁に張り付けたDIYはまさにアップリケ(修繕)。約1カ月半に及ぶDIYの楽しさを振り返ります。

森ノオトは「衣食住のエコロジー」を発信するために、NPOとしてウェブメディアの運営や地産地消の推進、エコDIYなどを展開してきました。2016年度よりセブン-イレブン記念財団の環境NPO組織基盤強化助成を受け、「森ノファクトリー」事業をおこなっています。ものづくりが好きな女性たちの手仕事の場をつくり、捨てられてしまう布を再活用し、可愛らしい布小物をメディアに見立てて「布の循環」をメッセージとして伝えていこう、という取り組みです。

エコバッグになるあずま袋をつくるミシンワークショップから始め、事務所「森ノオウチ」の一角にミシン工房「森ノファクトリー」を開設したのが2016年秋。試作を繰り返しながら少しずつマルシェイベントなどに出店し、ファンを増やして、2017年秋には「AppliQué」というブランド名で初の展示会をおこないました

 

既存床をはがして断熱材を入れるところから工事がスタート。内装DIYを始める前に断熱DIYをスタートした

 

この展示会でをきっかけに、AppliQuéが複数のメディアに取り上げられ、神奈川県内各地から寄付布が寄せられるようになりました。その多くは高齢の女性から。裁縫が好きでお気に入りの布を買い集めていたけれど、歳を重ねるに連れて針仕事が億劫になり、タンスの中に眠っていた布。「こんな風に使ってくれる団体があるなら」と、ていねいなお手紙とともに、ダンボールにたっぷりの布が送られてきました。寄付してくださった方は30人以上にのぼります。どの布もとてもきれいで状態がよく、デザインも柄も素敵なものばかり。森ノファクトリーのスタッフがうれしい悲鳴をあげながら、布の仕分けをする日々が続きました。

 

天井塗装は養生が肝心! 事務局スタッフこだわりのペンキを選んで、森ノオトらしい空間の色づくりを心がけた。窓やキッチンにペンキが飛ばないよう、細心の注意を払いつつもみんな笑顔

 

そうこうしているうちに、四畳半の工房と事務所スペースが、布の段ボールでパンクしてしまいました。地震がきたら布の箱に押しつぶされてしまうのではないかと思うほどでした。

 

下地材の上に徐々に端材を張っていく。ハンドタッカー、丸ノコ、ノコギリ、カンナ、ノミなど、大工道具の音が響く

 

2018年1月からは毎月、森ノファクトリーの裁縫講座を開催し、そこに参加した方が「私もファクトリーのメンバーになりたい」と活動に参加するようになり、多い日は10人の大人に5人の子どもがひしめき合うような状態になりました。もはや、森ノオウチに集うヒトも置くモノも限界まで達していました。

 

床張りの下準備は大工の花井さんがコツコツと。柱の切り欠き部分などの調整は素人だけではどうしてもできない。大工さんと日々やりとりしている工務店の親方たちが面倒を見てくれるので、安心してDIYを楽しめた

 

事業拡大に伴い空間の拡張は免れないという状況下、ちょうど森ノオウチの裏には同じ間取りの空き家がありました。しかし、無断熱で外壁や柱などの傷みもあったので、そのまま使うのは難しい空間でした。リノベーションしたい気持ちはあるものの、まだまだ発展途上で自転車操業のNPO。大家さんに相談したら、NPOの活動を応援したいから、自由に改修していいよと後押しをいただきました。しかし、先立つものがない……。頭を悩ませていた時に相談したのが、一般社団法人青葉台工務店でした。青葉台工務店は2017年秋に地元青葉台に拠点を置く4社の工務店で設立、森ノオトでも「エコDIY講座」でお世話になった、富士ソーラーハウスの大澤正美さんも理事のお一人でした。

 

なんと!臨月の妊婦さんもDIYに参加。手ノコで端材を切る

 

さっそく大澤さんは、可能な限りDIYをすることで改修費用を最小限に抑える事ができるとアドバイスしてくださいました。青葉台工務店4社の代表がDIY講師になって、さらに4社にある建築端材を張り合わせて内装材にすることで、「AppliQué」(アップリケ=綻んだり敗れた布地に当て布をして繕う手法。修繕で布自体を強化したり、デザイン性を高める効果もある)のブランド名にふさわしい空間ができるのではという、思いがけない提案が。森ノオトが広く参加者を募り、DIYの様子を発信していく形にしたら、地域の多くの人を巻き込み、空間に愛着をもってくれるのではないだろうか。ぜひ、DIYで空間をつくりたい!と、ワクワクしました。

 

休憩中の一コマ。「工務店さんとおしゃべりしながら手を動かすので、家の相談もできて楽しかった」と、地元・青葉区から来た女性

 

青葉台工務店は、狭い地域でのライバル同士の地域工務店4社が設立した団体ということで、住宅業界で注目を集めていました。理事長が株式会社竹駒工務店の黒羽啓太郎さん、呼びかけ人は桃山建設株式会社の川岸憲一さん、富士ソーラーハウス株式会社大澤正美さん、株式会社古今の元井史郎さんの4名から成ります。「住まいづくりを通じて青葉台の町なみを美しく」を合言葉に、大手ハウスメーカーでは難しい自由度が高い住まいづくりを目指しています。技術力、国産材や素材を見抜く力、大工の育成、デザインへのこだわりなど、それぞれの強みをネットワークして、「町の工務店」としての存在感を高めています。

 

子どもたちも一緒にDIY。ボンドで端材を壁に貼り付け、その上にハンドタッカーで針を打つ

 

今回、森ノオトの別館のDIYリノベーションを青葉台工務店がサポートすることで、地元・青葉台の非営利団体同士が「地域の拠点」をつくる。しかも「寄付」「端材活用」という、エコロジーなコンセプトで。4月下旬に呼びかけを始めてから、のべ120名もの人が森ノオトの拠点に集まり、DIYを楽しみました。

 

高いところも脚立にのって作業。汚れないように割烹着姿で

 

DIYのスタートは断熱から。壁や天井の内装といった、目に見えるところを手がける前に、見えない部分を強くしていく必要があります。省エネの観点からも、断熱がきちんとなされていない建物は、冷暖房の熱を逃してしまうので、エネルギーを無駄にしてしまいます。別館では予算上、天井と床にしぼって断熱をしました。断熱DIYは過去にも経験があり、また断熱の大切さを伝える講座なども開催しているので、森ノオトとしても断熱の重要性は常に感じていて、特に床断熱は今回初めてだったので、前面棟と冬の底冷えがどう違うのか、体感するのが楽しみです。

 

エコロジーな塗料として知られるドイツ・オスモ社の塗料。壁用端材をペイントして表情を楽しんだ

 

5月に入ってからは、内装のDIYをおこないました。まずは天井塗装。色にこだわりのあるスタッフが、森ノオトらしいペンキを選んできました。ペンキを塗りたくないところをていねいに養生し、大澤さん、川岸さんのアドバイスのもと、天井を塗っていきました。

 

漆喰DIYの前夜遅くまで下地塗装の準備をしてくださった大澤さん

 

次第に青葉台工務店4社から端材の山が運び込まれてきました。これらの端材は青葉台工務店の寄付です。5月15日には、青葉台工務店の4人が講師になり、合計20名が集まりました。9cm幅と18cm幅の端材にボンドを塗って下から壁に張り、ハンドタッカーで針を打ち込み、端の部分は丸ノコや手動でカットして、壁を一面に貼っていきました。県外から来る人もいたり、芸術家もいて、それぞれ、色の組み合わせにはこだわりをもって力を発揮していました。学校帰りの小学生は「工務店のおじさんがやさしく教えてくれたから、楽しかった」と言っていました。

 

カナ鏝(コテ)を使って漆喰を塗る体験は、DIYでも指導がなければなかなかできない。今は簡単なローラーを使うのが主流

 

壁張りは1日では終わらず、数日にわけていろんな参加者を集めながら続けました。壁の隅や天井など、丸ノコが必要な時は大澤さんや花井さんが出てきて、きれいにおさまるようサポートしてくださいました。

材料もいろいろ。無垢材、ボード材、シナ合板、それぞれに厚みが違い、色も違うのですが、張り合わせることでおもしろい表情をつくっていました。

 

床を張るのはカナヅチで。職人肌の黒羽さんは、こんな時、とてもイキイキとしている

 

床張りの日には、黒羽さんを中心に、ノミやカンナを使って数ミリ単位を調整しながら、寸分たがわずきっちりと床材を張り合わせられるよう、DIY参加の女性たちを指導。会社勤めの方も含めて25名も集まり、DIYニーズの高さに私たち主催者もびっくりしました。

 

ファミリーでの参加もあった。やすりがけなら小さな子でも楽しめる

 

玄関や廊下、階段は北東なので、明るくなるよう白い漆喰を使いました。漆喰塗りは下準備が大切です。大澤さんや川岸さんが、階段では段差がなくなるよう土台をつくったり、前の入居者のタバコのヤニやアクを止めるシーラー塗りなど、夜を徹してサポートしてくださいました。おかげで、漆喰DIYの日は、参加者たちは塗ることに集中でき、広い廊下や高い階段まで、白い漆喰で明るくなりました。港南区から参加してくれた女性は「職人さんの苦労がわかりました」と、服を汚しながらも笑顔。

 

川崎市から来た女性は、細かい作業も熱心にこなしていた。元井さんは「ものすごい情熱をもって、真面目にがんばっている」とベタ褒め

 

約1カ月におよぶDIYがひと段落したところで、いよいよ工房の引っ越しです。置くところがなく床に積み上げていた布の段ボールを収納する棚や、効率よく作業できるようボタンやピンなどの小物を置く棚を取り付け、壁かけ什器の移設なども大澤さんや花井さんの指導のもと、滞りなく進みました。

 

出勤途中にDIYをのぞきに来た男性。川岸さんが「塗ってく?」と声をかけると、「汚れられないから……」と苦笑。漆喰ではなく、壁張りをしていった

 

6月に入って、最後の仕上げです。工房1Fの無垢材の床に、みんなでワックスを塗ります。神奈川県の小田原産、地産地消の無垢材に、和歌山県産のミツロウワックスを塗り込みました。大澤さんからは「薄く、薄〜くね。二度塗りしてね」と念を押され、参加者たちは「まるでバターみたい。いいにおい」とうれしそう。

 

前の工房で使っていた有効ボードをDIYで移設。この日、作業台の上に小物を置く棚もつくった

 

こうして、6月に入ってから少しずつ、工房兼ギャラリーにお客様を迎えるようになりました。AppliQuéのギャラリーを兼ねるので、有孔ボードを活用しながら壁面を使い、棚を取り付け、糸巻きなどをフックに転用するDIYで工夫して、AppliQuéらしいディスプレイをしました。玄関口には、スタッフの家にあった廃材を寄付してもらい、イベント情報などを掲示できるようにしました。

 

DIY月間最後の方は、自分たちでも養生や塗装ができるようになってきた。ドアにペンキを塗る前日、養生とやすりがけで準備

 

最後に残ったのは拠点の命名です。NPO会員25名が食べ物を持ち寄って、ワイワイ楽しみながら、全員で森ノオトの価値や魅力、そしてこの空間が生まれることでやりたいこと、新たな価値は何かを話し合いました。大人も子どもも平等に空間の名前候補を出し合い、最後には全員で投票して、森ノファクトリーの工房兼ギャラリー兼多世代交流拠点の名前は「森ノハナレ」に決まりました。

 

DIY最後の仕上げは、無垢の床にミツロウワックスを塗った。自然素材なので素手で塗っても手が荒れない

 

アップリケのように端材をパッチワークし、実は断熱DIYをして省エネにも配慮、1カ月のべ120名、みんなでつくった「森ノハナレ」。地域の皆さんにとって愛着のある場所として、家族のように地域の人が集えて、生ごみはコンポストに、携帯の充電はソーラーで、ちょっとエコなしかけもたくさんの「森ノハナレ」。それぞれの「もう一つのオウチ」のような存在になれれば、と願っています。

 

ワックスがけは、古今で自宅をリノベーションしたばかりの女性が「我が家も工費をおさえるためにDIYしたんだよ!」と、自宅DIYの経験を惜しみなく披露してくれた。大澤さんも「きれいに仕上げられている」と絶賛

 

森ノハナレでは、オープン記念で「AppliQuéオーダー会」を開催します。無垢材とアップリケの気持ちいい空間で、寄付されたたくさんの布の中から、自分だけのお気に入りの組み合わせを選んでぜひ、布のエコロジーを楽しんでください。

 

できあがった空間のお披露目を兼ねて、建物の命名パーティーを開催。大人も子どもも一緒に、名前候補に平等な一票を投じた

 

【自分だけのオリジナルあずま袋を!AppliQuéバッグオーダー会】

詳細はこちらをご覧ください。

https://www.facebook.com/events/230716574323048/

日時:2018年7月16日(祝)-17日(火) 10:00〜15:00

場所:森ノハナレ※森ノオウチ裏(横浜市青葉区鴨志田町818-3)

※駐車場のご用意はありません。公共交通機関、もしくは近隣コインパーキングをご利用ください。

参加費:無料 ※ワークショップは500円です。

予約:不要

お問い合わせ:applique@morinooto.jp

 

森ノハナレはAppliQuéの常設ギャラリーでもある。オーダー会の日は商品も買えるのでお楽しみに

Information

 

 

一般社団法人青葉台工務店

https://www.aobadai-k.com/

横浜市青葉区つつじが丘24-15​(BADAI BASE内)

[フリーダイヤル]0120-76-3838

 

 

 

セブン-イレブン記念財団

http://www.7midori.org

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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