築50年のたまプラーザ団地が舞台!11/11(日)ダダンチダンチ!
東急田園都市線たまプラーザ駅周辺で、地域の人を巻き込みながら「まちなかパフォーマンス」を展開してきた「たまプラ一座」。第5回目となる2018年の舞台は、築50年のたまプラーザ団地!「ダダンチダンチ」が生まれるまでを、たまプラ一座代表の林月子さんにインタビューしました。(聞き手・文=北原まどか、写真提供=たまプラ一座まちなかパフォーマンスプロジェクト)

たまプラ一座まちなかパフォーマンスプロジェクト代表の林月子さん(左)と、音楽ディレクターの藤木和人さん。たまプラーザの3丁目カフェでの練習の一コマ

 

— 2013年に11月にたまプラーザテラスで住民150名以上が「フラッシュモブ」でパフォーマンスしてから5年。第5回目となるまちなかパフォーマンスの舞台は、たまプラーザ団地(横浜市青葉区美しが丘1丁目)、しかもタイトルは「ダダンチダンチ」とのことですが、今回、どうして団地をテーマにしようと思ったのですか?

 

林月子さん(以下、敬称略):

私がたまプラーザ団地に引っ越してきたのは、今から22年前のことです。3人の子どもをこの団地で育てて、そこで地域のいろんな人のお世話になってきました。たまプラーザ駅から近いのにもかかわらず、季節ごとにきれいな花が咲いて、鳥や虫の声が聞こえて、すごく豊かな環境が大好きです。団地の公園で元気に遊ぶ子どもの姿があって、遊歩道でおしゃべりする人、自然といたわりあえる関係性……これらはきっと50年という時間をかけ、ここに住んできた方がつちかってこられた、自慢すべき宝物だと思います。

 

そんなたまプラーザ団地も、入居開始から50年という時を経て、高齢化と老朽化の波が押し寄せてきています。いずれ建て替えも含めた団地再生の議論がおこなわれると予想され、その時に、この団地のみんなで一つのことに取り組み、色鮮やかな思い出をつくりたい、今の団地の風景にまちなかパフォーマンスの記憶を残し、語り継がれるものが生まれたらいいな、と、いち住民として感じていました。

 

実は第3回目のまちなかパフォーマンス「GUMBO」をやろうと構想していた2015年に、すでにたまプラーザ団地を舞台にしようという目論見はありました。ただ、当時から団地での実現は難しいだろうと思っていて、チャレンジする前から諦めていたんです。

 

「ダダンチダンチ」の音楽には、団地の遊具や砂場などの日常の空間から撮った音が使われている。音を拾う月子さん

 

— 団地でまちなかパフォーマンスをするのは、そんなに難しいことなのでしょうか?

 

林: 以前、美しが丘公園や商店街でまちなかパフォーマンスをやった時も、道路使用許可や、公園の使用許可など、様々な申請書を出し、行政や関連団体の後援を取り……と、様々な手続きをしてきました。団地の公園でやるとなると、そこは私有地ですから、住民の方の合意が必要になります。私自身も団地の住民ではありますが、団地を構成する様々な団体、例えば管理組合や自治会、街区ごとの評議委員会などに、一つひとつ説明して、団地でまちなかパフォーマンスをやる意義を納得してもらわなければなりませんでした。

 

今年、たまプラーザ団地は50周年なので、団地のお祭りの一環としてまちなかパフォーマンスをやったらいいのでは、という声もありました。一方で、アンケートをとってみると強固に反対する方がいたのも事実です。それでも、団地で活動するご高齢者のグループや、若い親子のサークルなども含め、いろいろな方に「団地でまちなかパフォーマンスをやることで、この団地のコミュニティでどのような育ちあいが起こっていくのか」をていねいに説明していくなかで、団地のなかに応援団が少しずつ増えていったんです。道行く人が、「林さん、公園の使用許可とれた?」「どうなった?」「私も参加してみたい」など、私のことを気にかけてくれて、じわじわと、まちなかパフォーマンスへの期待感が高まっていくのを感じるようになりました。

 

練習会場の3丁目カフェでの一コマ。今回のパフォーマーの最高齢は83歳!

 

— 団地内の公園使用許可がおりた時のお気持ちは?

 

林:

実際に申請をしてから許可がおりるまで、半年かかりました。理事会から一報がもたらされた時には、感動と安堵で、泣いてしまいました。理事会や評議委員会、自治会のなかでも意見が割れたと思うんですが、「住民同士が何かを一緒におこなってコミュニティを築き上げていくことが、今後の団地が抱える課題を考えても、団地にとって大切なことだ」と、団地の役員のなかにも応援してくださる方がいたんですね。

実は、たまプラ一座の実行委員会のなかでも、私が最初に「団地でまちなかパフォーマンスをやりたい!」と言った時から、なぜたまプラ一座が団地でやらなきゃいけないのか、その意義について活発な意見交換を重ねてきました。だけど、今後あちこちの団地で老朽化や高齢化が進み、コミュニティの基盤が弱くなってくるなかで、住民をひとつにまとめるきっかけが必要で、まちなかパフォーマンスでこれまで築いてきた経験はきっと生かされるだろうという確信がありました。

もちろん、交渉はハードでしたが、だけど私は一度これをやりたい!と決めたら、叩かれることに怖さはそれほど感じないんですね。むしろ、厳しい意見のなかにこそ、本当に大切なメッセージが隠されていたりして。団地での暮らしを愛している、様々な思いの人たちの声をたくさん聞くことができて、本当によかったなと思っています。

 

森ノオトライターもパフォーマーとして参加!? 衣装もみんなで手づくり

 

–「ダダンチダンチ」というタイトルはどうやって決まったのですか?

 

林:

私は今、日中は保育園で働いているのですが、子どもたちに読み聞かせをするなかで、ある絵本に「ポポンピポンポン」というフレーズがあって、それを口ずさみながら、「ダダンチダンチだ!」ってひらめいたんです(笑)。

 

–「まちなかパフォーマンス」のすごさは、地域に住んでいる普通の住民が、プロフェッショナルの力を借りて、本気のパフォーマンスを見せるところにあると思います。今回の見所は?

 

林:

今回の総合演出や詩の製作、イラストやデザインなど、団地に住まわれているプロフェッショナルにお願いしました。アートディレクターにはヴィヴィアン佐藤さんをお招きし、ダンス振り付けは「かえるP」の大園康司さんと橋本規靖さん、タップダンスの振り付けと指導は米澤一平さんにお願いしました。音楽は、これまでまちなかパフォーマンスを撮影し続けてくださっているPVプロボノから藤木和人さんが担当してくださいます。

コーラスやタップダンス、詩の朗読、パントマイム、フィナーレダンスなど、音楽も詩も書き下ろしで、団地の暮らしが生き生きと表現されるはずです。音楽は団地の公園の遊具を楽器にみたてて、そこから音を撮ったりしました。

 

ヴィヴィアン佐藤氏によるヘッドドレスのワークショップ。会場はWISE Living Lab.

 

出演者は、約90名で、3分の1にあたる約30名が団地にお住まいの方です。協力団体として、団地で活動しているご高齢の方のグループの「朋友会」さんからの出演もあります。朋友会の皆さんの中は、私が団地内公園の使用許可申請をしている最中から「私もこういう活動の仲間に入りたい」と涙を流して応援してくださる方もいて。元気なシニアの方々のフィナーレダンスも間違いなく見所のひとつですよ。

たまプラーザ団地で活動している「いずみ文庫」さんにもご協力いただきます。今回、若いファミリーでの参加もあって、賑やかになりそうです。

アートディレクションにヴィヴィアン佐藤さんが入ってくださったことにより、ヘッドドレスや手づくりの衣装にも注目です。今回のテーマカラーは黄色で、それぞれのパフォーマーの個性に、どんな風に色彩や衣装が光ってくるのか、楽しみにしてくださいね。

 

総合演出を務める日向里香氏。「今回も素晴らしいチームワークが生まれている」と、月子さんは絶大な信頼を寄せる

 

— たまプラーザ団地という、特定の地域の特定の場所が舞台ですが、今回の取り組みはきっと、特定の地域の住民だけでなく、全国各地で同じように老朽化と高齢化の課題を感じる団地に、大きな勇気と気づきを与える取り組みになるのではないかと注目しています。

 

林:

私はあまり大きなことは考えていませんが、まずはこのたまプラーザ団地のなかで、「団地の三角公園で、こんなことができるんだ!」「私も何かやってみたい」という思いを持つ人が現れてほしいな、と思います。そして、誰かの心に生まれた「やってみたい」という気持ちを、応援し合う関係が生まれてくれればうれしいです。

その気持ちの連鎖で、うちの団地でもやってみたい、私の地域でも……と、行動に移すきっかけをつくっていければ、そしてそれがつながっていけば何よりですね。

 

かえるPのお二人がフィナーレダンスの振り付けと指導を担当。パントマイム指導は中村まいさん。詩の朗読とどのように組み合わさるのか……期待が高まる

 

今回、団地での開催にこぎつけるまでには、いろいろな紆余曲折がありましたが、諦めなければ道は拓けるということを、私自身が身を持って体験することができました。まちなかパフォーマンスでは毎回、何かしらの大変な思いをするんですが(笑)、やるたびに、社会のいろんな仕組みを知り、そこに関わる人の思いを聞き、終わってみたら、ものの見え方が大きく変わっている、ということがあるんです。価値観が広がる、とでも言えばいいんでしょうか。

私は今回、自分が暮らす団地の仕組みや運営について学びましたし、これまで近くに住んでいたけれども見えなかったことや、知らなかった人の思いも受けました。この経験は、私にとっても大きな財産です。まちなかパフォーマンスをやるということに、こうした、地域を知る、思いを知る、という作用がついてくるんだと思います。

 

今回は黄色がテーマカラー。練習時に身につけるオリジナルTシャツも黄色で統一!

 

きっと、当日の「ダダンチダンチ」のパフォーマンスには、私の経験や、団地に暮らす人たちの様々な思いが、スパイスとなって現れてくると思います。その一端でも、見に来た方に感じていただき、何かを持ち帰ってもらえればうれしいです。

当日のパフォーマンスはもちろん大切ですが、その成否やクオリティに、今回私はそれほどこだわっていなくて。というのも、総合演出やアートディレクター、振り付けや指導、音楽ディレクターなどのチームが本当に素晴らしくて、安心してお任せできているんです。きっと、おじいちゃんやおばあちゃん、小さな子どもも含めて多様なパフォーマーがいるので、当日バタバタすることもあるだろうな、と思うんですが、この「団地でまちなかパフォーマンスをやりたい!」という気持ちが一つになって当日を迎えられることのプロセスそのものが、きっとパフォーマンスのクオリティ以上に、大きな感動を生み出しているのだろうな、と思います。

 

パフォーマー、スタッフ、すべてに信頼を寄せ、当日を心待ちにしている月子さん(中央)

 

— とはいえ、クオリティにも妥協しない、挑戦する気持ちをどんどん高めてまちなかパフォーマンスに取り組む月子さん、きっと期待を裏切らないステージを見せてくれるんじゃないかと楽しみにしています。

 

林:

「ダダンチダンチ」は11月11日(日)、たまプラーザ団地の三角公園で、13:00からと13:40からの2回公演です。参加、観覧はもちろん無料です。たまプラーザ団地が50年かけてはぐくんできた宝物を、ぜひ持ち帰っていただけたらうれしいです。

 

— ありがとうございました。

 

ぜひ、たまプラーザ団地三角公園でお会いしましょう!

 

 

Information

第5回まちなかパフォーマンス

 

日時:2018年11月11日(日)

1回目 13:00〜 / 2回目 13:40〜

会場:たまプラーザ団地 三角公園(横浜市青葉区美しが丘1丁目)

 

主催:たまプラ一座まちなかパフォーマンスプロジェクト

後援:横浜市建築局・青葉区

お問い合わせ:sodachiaitai@gmail.com

Avatar photo
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森ノオトのつくり方

森ノオトは寄付で運営する
メディアを目指しています。
発信を続けていくために、
応援よろしくお願いします。

もっと詳しく