日用品でつなぐ、つながる。地球と地域と人と。ゼロウェイストショップ・HONOTOKIKI
月に何度かオープンする日用品のお店が、横浜市都筑区ふれあいの丘にあります。「ごみを減らせて環境にも手肌にも優しい」をコンセプトに日用品を扱う「HONOTOKIKI」。店主の小林貴子さんに、二人のお子さんを育てながら地域でお店を開くまでとそれからをお聞きしました。

竹歯ブラシにお風呂用ハーブ、みつろうラップ、量り売りの液体洗剤…。HONOTOKIKIのお店には、商品が美しくディスプレイされ、そっと手にとりたくなる佇まいで並んでいます。

 

都筑区のふれあいの丘エリアにあるレンタルスペースを借りて、月に何度かオープンするHONOTOKIKI。店主の小林貴子さんが店を始めたのは、2021年7月のことです。取り扱う商品は、できるだけ国産のもの、真摯に暮らしやものづくりに向き合っている作り手のもの、環境負荷が少なくごみを減らせるもの。そして実際に使ってみて使い心地がいいと感じた精鋭たちをそろえています。貴子さんがものづくりの背景を知り、個人でもやりとりできるところに1軒ずつアプローチしてつながりをつくってきました。

 

広島県にある障害者支援施設「広島ひかり園」もその一つ。専用の織り機で織った手袋を身近な植物で染めた「植物染手袋」は、お店の人気商品です。

季節の植物で染められた手袋は一期一会。訪れた日にあったのは、たんぽぽ、にんじんの葉、矢車草の3種類。同じ黄色でも微妙に色合いが異なる

「まだ世にそんなに出回っていないけど、とってもよい商品を作ってくださっています。ものづくりの背景はもちろんですが、実用的であり、見た目もよく、そのもの自体が魅力的。さらに障害者の方の就業支援にもつながったら、作り手と使い手とお互いにウィン-ウィンですよね」と貴子さん。

レンタルスペースで営む小さなお店には、手書きの紹介文とともに、丁寧に選ばれたアイテムが並ぶ

「環境に対する思いが、商品を通じて広がっていくことに喜びを感じています。こんないいものが世の中に埋もれている」と語る口ぶりから、お店で扱う品々への深い愛情を感じます。

町田市の共働学舎のトイレットペーパー。古紙の再生紙を使った無漂白で、芯なし、梱包はプラスチックフリー。HONOTOKIKIで1個から購入できる

私がHONOTOKIKIを知ったのは、Instagramを通してでした。全国あちこちで、さまざまな形のエシカルなお店が広がる中で、生活圏の中でそんなお店があったらいいな…と思っていたときに、パッと目にとまったのです。

 

やわらかな雰囲気の写真、丁寧につづられたモノのお話。そこかしこに店主の人柄や思いを感じ、いつか訪れてみたいな、店主の方とお話ししてみたいなと気持ちをあたためていました。

お店は、横浜市営地下鉄グリーンライン・ふれあいの丘駅から歩いて13分ほどの住宅街にある洋風の一軒家で、月に数回オープンする。駐車場も1台分ある

貴子さんは、夫の転勤で熊本県に3年暮らし、2020年3月に都筑区に引っ越してきました。ちょうど、コロナで世の中がざわざわとし始め、出かけることそのものが「自粛」という空気に包まれていたころ。「引っ越したばかりで近くに友人もいなくて。学校も幼稚園も休みになって、一人で出かけることもできず。とことん自分と向き合う時期があったんですよね」。もともと外に出るのが好きな貴子さんにとって、この状況は大きな転換点になりました。

かつては航空会社で働いていた貴子さん。物腰が柔らかく、ついいろんな話をしたくなる。自然豊かな都筑のまちを気に入っているそうで、緑道もお気に入りの場所

子どものころ「環境」「貧困」といった社会課題に関心を持っていたという貴子さんですが、「興味があったこと、好きだったことをしばらく忘れていた」と言います。

 

内に内にと向かう時間によって、さまざまな思考が深まっていきました。住んでいた熊本でのたび重なる水害、遊びに出かけていた町が水没してしまったこと、さまざまな自然災害、そしてこの感染症……。「自然環境のバランスを人間が崩している」と考えるようになったのだと言います。そして、過去の出来事が、突然のように思いだされたのだそう。

 

イギリスの航空会社に勤め、ロンドンで暮らしていた20代のころのこと。当たり前のように使われていたエコバッグ。ショートケーキすら紙袋にどさっと入れて渡す、ミニマムな包装。夜はほどよい暗さの中で暮らしを楽しむ、省エネに対して自然体な感覚。貴子さんの心を揺さぶった異国での文化が、時を経て貴子さんの中で結びついていきました。

 

「このままだと、子どもたちが安心して暮らすことができなくなってしまう。今、この問題に向き合うことが、自分の使命のように感じるようになったんです」。穏やかな声で、HONOTOKIKIにつながる思いを語ります。

 

環境問題への目が再び開いた貴子さんは、情報収集に動きます。ドキュメンタリー映画を観たり、本を読んだり、イベントに出かけたり。また、自宅で使う日用品を見直してみようと、自ら小さく暮らしの変化をおこしていきます。みつろうラップを使って使い捨てのラップを減らしてみる。洗剤を環境配慮型のものに変えてみる。海にマイクロプラスチックを流さないスポンジに変えてみる。そんな経験を通じて、「自然素材のものでも使いやすい。みなさんにぜひお伝えしたい」と思うようになったと言います。

そして、Instagramを通じてつながった環境に関心のある友人たちが、次々とテーマ性のあるお店を始めていく様子を目の当たりにします。始めた人のお話を聞きながら、日用品を扱うお店はあまりなく、「商品が劣化しづらい日用品なら私にもできるかも!」と心が向かっていきます。

お店では洗剤の量り売りも。湘南生まれの洗濯用洗剤 「All things in Nature」。100mlから量り売りしていて、水で希釈すればお風呂やトイレの掃除、食器洗いにも使えるという

「資金力があるわけでも、緻密な計画があるわけではない。手の届く範囲で、今の私ができることをやろう」。それが、HONOTOKIKIの始まりです。優しい響きが貴子さんらしい店名は、二人のお嬢さんの名前を組み合わせたのだそう。貴子さんがお店を通じて届けていきたい未来そのものです。子どもが小さいうちは柔軟にいたいと、オープンは月に数日、10時から14時まで。「いち主婦が、自由にやれる範囲でやる。やってみないと、どこが課題かはわからないですから、とにかく動いてみようと」

 

場所は、住まいのある都筑区のエリアに決めていたと言います。「自然環境が豊かで、子育てファミリーも多い地域。子どもたちのために、自然を未来に残していきたい。そんな私の思いに、この環境はぴったりきました」。そして、「地域の活性化につながれば」と言葉を重ねます。「こういうお店があることで、話題性にもなる。お世話になっている街を盛り上げていきたいです」と貴子さん。「地域で知ってもらって、地域単位で環境問題に対して大きな力を持っていけたら」と、地域でのつながりを大切に、イベント出店にも積極的です。

9月に早渕川親水広場での「みんなのバザール」に出店したときの様子。森ノオトのめぐる布市ブースでお隣でした!「環境や個性を大事にされているマルシェには、喜んで出店したいです」と貴子さん。第3土曜日まちなかbizつづきで開催されている「share A month」にもよく出店しているそう(写真提供:小林貴子さん)

お店をオープンして1年が過ぎ、「やってみて本当によかった!」と貴子さんは迷いなく言い切ります。「お客さんが商品を使って喜んでくださったり、お客さんにとっての発見につながっていたりすると、やってよかったと思っています。買ってもらうことが一番ではなく、商品をきっかけに環境に目を向けたり、買わずに代用できるかも、と思ってもらったり。それも大きな発見だと思うんです。コロナでコミュニケーションを取れる場が少なくなっていると聞きます。世間話、立ち話をできる場でもありたいです」と、ものを通じてつながる場への思いを語る貴子さん。

 

今はレンタルスペースでの営業ですが、ゆくゆくは、もっとお店らしい形を持ちたい、と夢を語ります。「商品を扱いながらイベントをしたり、講座を開いたり。講師の先生を招きながら、憩いの場やシェアする場を持てたらいいですね」と未来を描く貴子さんです。

HONOTOKIKIで出会い、たんぽぽ染めの手袋、お風呂のハーブ、セルロースのスポンジ、ランドリーバッグをわが家に。「スポンジは二つに切って使うこともできますよ」「ハーブはお風呂で使った後は乾燥させて芳香剤にもなります」。貴子さんの生きたアドバイスが重なり、2倍3倍にも使う楽しみが

コロナ禍で自分の内を見つめ、「手の届く範囲でできることを」と一歩を踏み出した貴子さん。時にすくんでしまうような地球規模の課題も、身近な地域、足元の暮らしからチャレンジをおこしていくその姿は、きっとだれかの背中を押し、仲間を増やしていくことでしょう。私もHONOTOKIKIでのお買い物を通して暮らしの風景があちこちで変わり、その変化をだれかに伝えたくなるような思いです。日用品に思いをのせて、あたたかなエネルギーが巡っていくのを感じます。

Information

HONOTOKIKI

Instagram:@hotonokiki https://www.instagram.com/honotokiki/

ウェブショップ:https://honotokiki.base.shop/

住所:都筑区見花山29-1 Mighty House

オープン日はInstagramをご覧ください。

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この記事を書いた人
梶田亜由美ライター
2016年から森ノオト事務局に加わり、AppliQuéの立ち上げに携わる。産休、育休を経て復帰し、森ノオトやAppliQuéの広報、編集業務を担当。富山出身の元新聞記者。素朴な自然と本のある場所が好き。一男一女の母。
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