生きた野菜図鑑! 神奈川区羽沢町・平本貴広さん
「濱の料理人」代表の椿直樹さんと巡る農家シリーズ、第2弾は「はざわ育ち」ブランドで知られる神奈川区羽沢町の農家・平本貴広さんです。キャベツのようにまんまるい笑顔の平本さんは、年間100品種もの野菜を育てていて、畑の畝ごとに色とりどりの葉っぱ、花苗と、畑自体が生きた野菜の図鑑みたい!
羽沢町の台地の上に広がる平本さんの畑。空が近い

羽沢町の台地の上に広がる平本さんの畑。空が近い

江戸時代から続く農家の12代目という平本貴広さんに連れられて、家の裏手から丘をのぼり畑に向かうと、スコーンと広い空が広がり、台地の上に整然と並ぶ畝には、たくさんの種類の野菜や花芽で賑わっていました。

 

「種類で言えば50くらい、品種ならば100以上の野菜を育てているから、試して、つくって、採って、出して、片付けて……と、とにかく忙しくて」と、トウのたった白菜の花芽を見ながら笑います。

 

「今は、芽キャベツ、プチヴェール、カーボロネロ、ビーツ、かぶ、パクチー、チコリー、フェンネル、高菜にセロリ……」と、ひと畝ひと畝歩くごとに、違う名前の野菜が次々に出てきて、平本さんはまるで野菜の博士のよう。そして、平本さんの畑は、生きた野菜の図鑑みたい! と感心してしまいました。

「畑に自生するパクチーを見てみますか?」(平本さん)「どれどれ……」(椿さん)

「畑に自生するパクチーを見てみますか?」(平本さん)「どれどれ……」(椿さん)

「平本さんは新しいことにどんどんチャレンジするので、次はどんな野菜をつくるのかな、と、料理人としてワクワクします。そして、一つひとつの野菜を、きちんと愛情込めてしっかりとつくりこむのが、平本さんのすごいところ」と、横浜駅西口「大ど根性ホルモン」オーナーシェフの椿直樹さんは平本さんに絶大の信頼を寄せます。

「有機堆肥をメインに、なるべく農薬に頼らない野菜づくりをしています」と平本さん。こまめに畑を回って作物の様子をみては、適材適所でその時の野菜に必要な栄養素を追加したり、資材で成長を支えるなど、手間を愛情をかけて野菜を育てる

「有機堆肥をメインに、なるべく農薬に頼らない野菜づくりをしています」と平本さん。こまめに畑を回って作物の様子をみては、適材適所でその時の野菜に必要な栄養素を追加したり、資材で成長を支えるなど、手間を愛情をかけて野菜を育てる

神奈川区羽沢町は、横浜イチのキャベツ産地で、平本さんも6、7年前までは、キャベツを中心に、ブロッコリー、大根、レタスなど、小品目を大量出荷していました。転機が訪れたのは、あるスーパーとの出会いから。「保土ヶ谷区の松原商店街にあるスーパーの方から、“地場野菜のコーナーをつくるんですが、売り場を畑にしたい。畑にあるままの姿で野菜を売りたい”と相談されたんです。そこから、つくる野菜がどんどん変わっていって、多品種を直接販売するような形に変わっていきました」(平本さん)

 

椿さんと平本さんのお付き合いも、平本さんが少量多品目栽培に切り替えたころのことで、「レストランのシェフから教えてもらって野菜をつくることもあります。自分でも珍しい野菜を探すようになって、農業がどんどん楽しくなっていった」

取材をした3月末には、ブロッコリー、フェンネル、ロマネスコ、チコリーなど試作品も含めて8種類の苗を育てていた。「種苗店の同級生がいて、珍しい種が入ったら教えてくれるんです」。平本さんの強みは、多彩なネットワーク!

取材をした3月末には、ブロッコリー、フェンネル、ロマネスコ、チコリーなど試作品も含めて8種類の苗を育てていた。「種苗店の同級生がいて、珍しい種が入ったら教えてくれるんです」。平本さんの強みは、多彩なネットワーク!

平本さんは「はざわ育ち」というブランドを仲間と立ち上げ、今では料理教室や食育イベントなどに引っ張りだこ。キャベツのようにまん丸でひと懐っこい笑顔と、やわらかな語り口にファンがつき、「少量多品目、生産者と消費者が直接つながる」横浜の農業スタイルを牽引する立役者になっています。

 

「平本さんは、よくお店にきて、お客さんと交流してくれる。野菜のことを聞けば、なんでも答えてくれるし、一緒にいて、本当に頼もしい農家さんです」と、椿さん。

人参一つをとっても、これだけの色、種類にがあることに驚かされる。どれも、とてもきれい。「本当は7色キャロットで売り出したいんだけどね。それがなかなか……これだと5色か(笑)」

人参一つをとっても、これだけの色、種類にがあることに驚かされる。どれも、とてもきれい。「本当は7色キャロットで売り出したいんだけどね。それがなかなか……これだと5色か(笑)」

平本さんに今後の夢を聞いてみると、「食育を大切にしたいですね。学校やイベントなどに出向いて、野菜ぎらいの子どもたちに、野菜の美味しさを伝えていきたい」と言います。

 

「食べてみて、美味しいと思えること。それが私の考える羽沢のブランドです。これからも、味にこだわった野菜作りをしていきたいですね」と語る平本さんが、次にどんな野菜に挑戦し、横浜の食卓を彩るのか、注目しています!

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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