【現在は閉店】
ほっかむりをしたリスと目が合う。ニヤリと笑ったかたつむりのクッキー。紙コップが帽子をかぶっている。それをビリビリ破けばニコチャンマークが描かれたシフォンケーキが顔を出す……。つい、くすっと笑ってしまいそうなお菓子が店内にポツンポツンと並んでいて、肩の力が抜けてきます。仕事や子育てで忙しく気持ちにゆとりがない時に、efuca.のお菓子はわたしに魔法をかけてくれます。「まあ、いいじゃない。仕事はちょっと置いといて、ケーキでも食べてほっとしなさいよ」……な〜んて風に。さしずめ店主のイトウユカさんは「おとぎ話に出てくる魔法使いのお姉さん」といったところでしょうか。
「お菓子って、遊べるでしょう? 物語をつくっているような感じ」。そう話すユカさんは、小さなころからお菓子をつくるのが大好きだったそう。確かに。今なお少女のようにキラキラ輝く瞳に、創作の原動力を垣間みることができます。隣ではしっかり者の夫・健史さんがせっせとベーグルを焼き、「夢」と「(お腹を満たす)現実」、どっちも満足できるところが何ともうれしいお店です。
おっと、忘れてはいけない。肝心のお味は、はっとするくらい新しくて、美味しい。シフォンケーキはふんわりとしっとりが両立し、噛むと口の中でクリームのようにとろける絶妙さ。ベーグルはむっちりとした生地がゴボウやレンコン、ドライフルーツなどを包み込み、休日のブランチにぴったりです。何度も試作を重ねて、夫婦でお互いに批評し合いながら、今の味にブラッシュアップしていったそうです。
イトウ夫妻の遊び心は空間づくりにもいかんなく発揮されています。お店の場所は駅から遠い団地の商店街の一角という、普通に考えれば難しそうな条件ですが、古さすら強みに変えるのが感性の見せ所。コンクリートむき出しの床にペンキを、壁にはピンクの珪藻土を二人でせっせと塗りました。でこぼこしたタッチは光があたると微妙に表情を変え、ちょっとおかしなお菓子たちの舞台にぴったりです。
efuca.はこの12月から、お菓子とベーグルの店頭販売と通信販売を始めました。お店は、お菓子教室が開催される土日祝日に営業するとのことです。「教室ではお菓子を習うというよりも、その日のテーマに沿ってそれぞれが作品をつくるといった感じですね。同じ材料を使っても、出来映えは十人十色。皆さんの個性が出ておもしろいですよ」(ユカさん)
健史さんは近々、近所に住む人々にベーグルの宅配をしたいと考えています。「突然やってきた若い二人に対しても、この街の人たちはとても親切で、いつも応援してくださる。efuca.が街を盛り上げて、ご恩返しをしたい」。
けやき平に若く瑞々しい感性が新しい風を起こし、人と人が行き交うコミュニティが復活しようとしています。efuca.は小さなお店ですが、味は本物、志も本物。不思議の森がこの街でどんな魔法を見せてくれるのか、これからが楽しみでなりません。
*キタハラ’s eye*
わたしは仕事柄「光る原石」に出会うことが多いのですが、efuca.のお二人は間違いなく来年、大きな飛躍を遂げると思います。ベーグルとシフォンケーキの美味しさには、味にうるさい我が夫も太鼓判。お店に行けばそのセンスのよさに感心しきり。1年後には雑誌やネットでefuca.ブランドを目にする機会も増えてくるんじゃないかしら。先物買いで得した気分です^^(教えてくださった「12月」の富山さん、さすがの先見性です)。
efuca.(エフカ)
住所:神奈川県川崎市宮前区けやき平2-16
TEL:044-872-9878
OPEN:12:00〜18:00
定休:不定休(土日祝日営業)
駐車場:なし
アクセス:東急田園都市線宮前平駅徒歩20分 →Google Mapで見る
http://blog.efuca.ciao.jp/
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