手づくりが大好きなママたちが集まった
−2006年に立ち上げたfu*wa*ri展は、今年で5年目を迎えました。どのようなきっかけでfu*wa*ri展を始めたのですか。
冨岡ゆきさん(以下敬称略): 主人の転勤で大阪から首都圏に引っ越すことが決まるのと同時に妊娠が発覚しました。最初は立川に半年住み、その後横浜の青葉区に越してきたのですが、友人知人が誰もいない土地での初めての子育てに、少々不安を感じながらの日々を送っていました。
子どもが2歳になった時に地元で開催されている子育て広場に参加し、プログラムの最後のコーチング講座で「一人ひとり、ママじゃない私」というテーマで参加者がそれぞれ発表しました。その時に、手づくりが好きなママがおおぜいいて、彼女たちと一緒にサークル活動のような形でfu*wa*riを立ち上げたのです。
最初はイベント的に、当時我が家で暮らしていた賃貸マンションの一室で、ママたちが作品を持ち寄って展示販売をしたのですが、お友達がお友達を呼んで口コミで広がり、お客さんがどんどん増えていきました。1年後には我が家のキャパシティーでは限界になり、青葉台のウィズの森や藤が丘の飲食店を紹介してもらい、そこで年に3回、新学期用品が出回る春、初夏、そして秋・冬に開催することにしたのです。
ふわりは作家さんとお会いして作品を見せていただいて、ふわりに登録してもらうシステムなのですが、イベントに来てわたしも登録したい! という人が増え、ピーク時には40名を越すことも。今は少し落ち着いて、25名くらいですが。
−fu*wa*riが広まっていった要因をどのようにお考えですか?
冨岡: 私たちがやろうとしていたことと、お客さんが求めていたことが、うまくかみ合っていたんだと思います。
まず、お客さんにとっては、バッグやポーチ、アクセサリーなど、オリジナルでかわいらしい雑貨が格安の値段で買えること。特にお子さんの入園入学など、新学期向けのイベントは評判です。
そして作家さんにとっては、イベントに向けて集中して作品をつくることで、仕事をしていた時の輝きを取り戻し、イベントではお客さんに自分の作品を実際に手にとってもらい、「かわいい」「すてき」などの評価を受ける。それが自分への自信につながるんですね。
最初は「私なんかの作品でいいのかしら」と言っていた人たちも、一度ふわり展に出展すると、すごく変わる。自信がついて、作品の幅も広がってきます。
ママである以前に、一人のわたし
−子育てに没頭していると、●●ちゃんのママ、とひとくくりにされてしまい、一人の個人としての自分らしさをどうしても忘れてしまいがちですよね。
冨岡: 専業主婦で、小さな子どもを一人で育てていると、あまりに時間がなくて外出もできない、ということがままあります。それでも、ふわりのような場所に何とかでかけて、そこで人と人が集い、交流することで、自分のやりたかったことや、夢を思い出すきっかけになるようです。
ふわりでは、手づくり雑貨の販売だけでなく、たとえばアロマオイルのハンドマッサージや、ハワイアンリボンレイのワークショップのコーナーも設けています。「いつか自分の教室を開きたいんだけど・・・」という漠然とした夢が、ワークショップを開催することで、動き出すはじめの一歩になっていることが多いんですね。
ふわり展を主宰するわたしの役割として、手作りが好きで作品を発表したい、いつか自分の教室を持ちたい、だけど今は子どもが小さくて手いっぱい・・・そんなお母さんのための「はじめの一歩」を踏み出せる場を提供することだと思っています。
−大阪から青葉区に引っ越してきて、この街の印象はいかがですか?
冨岡: 青葉区は高級住宅街で教育熱心な街、という風に聞いていたのですが、実際この街でふわり展などを開催してみると、みなさんとても親しみやすく、温かいまなざしでわたしたちの活動を見守ってくださいます。 それに、子育てをしながらも、魅力にあふれている人たちがとても多い。わたしは、そんな人たちがより輝けるような場所と機会を大切にしていきたいと思っています。
これをやりたい! 強い思いが道を開く
−冨岡さんは昨年末、ご自宅の一室で絵本と雑貨のお店「Lalaru」をオープンしましたが、このお店をオープンするまでの経緯は?
冨岡: 実は、大阪時代も自宅で雑貨店をやっていたのです。トールペイントのインストラクターと幼児教室の講師の仕事をやりながら、月のうち10日だけオープンするというお店でした。それまでにも雑貨店勤務経験があるわけでもなく、経営のノウハウもない中で、ただ「雑貨が好き!」という思いで、自分で工夫しながらお店をやってきました。
妊娠、東京への引っ越し、出産を経て、「子育てをしながらも何かやりたい!」という気持ちがむくむくと沸き上がってきたころ、たまたま、小さな出版社が共同で開催していた絵本のフェアに行く機会がありました。そこで、兼ねてから思っていた「親子が集う場で絵本の読み聞かせをしたい」という思いが強まり、まだお店も場所もないのに「絵本を置かせてくれ」と、出版社に出向いて直接取引をお願いしたんです。
何の後ろ盾もない、店舗もないわたしの話に出版社の方は共感してくださって、取り引きできることになった矢先、横浜への転居が決まり、いったんその話は流れてしまいました。ところがふわり展で、共同出店していた別の出版社の方と再会し、個人的に仕掛け絵本の取引をさせてもらえることになりました。
−すごい! 情熱的ですね。
冨岡: 今から2年前に今の家を建て、家の一角に小さいながらもお店を構えることができました。オープンは昨年の12月。仕掛け絵本と、ふわりの作家さんの作品を扱うお店です。ふわり展は年に3回の開催なので、やっていない時の穴埋めではないですが、常時ふわりの作家さんの作品とふれあえる場所をもうけたい、という思いがあります。
小さな棚をつくって、そこを雑貨のアパートメントにして、作家さんたちに入居いてもらう。そんなコンセプトです。
−ほかにも、様々なイベントを行っていますよね?
冨岡: 自宅のリビングを使って、2〜3ヶ月に1回の割合でアロマカフェを開催したり、ワークショップを行ったりしています。
季節のいい時期は、駐車場のスペースを使ってフリーマーケットをやることも。キッズフリマでは、子どもたちがおもちゃを販売したりします。子供がお金を動かすのはせいぜい100円までにしていますが、それでも「お金を稼ぐのはこんなに大変なんだ」など、学べることは多くあると思っています。
わたしの場合は、ともかく雑貨が好きで、「雑貨屋さんをやりたい!」という思いでここまできてしまった感じです。「明日死んでも後悔ない」という気持ちで、今できることは全力を尽くしてきた結果、主人や友人に助けてもらい、いい出会いに恵まれました。
やりたいことが見つかったら、一歩踏み出してみること。そうすれば夢はかなう。地域の手作りが好きなお母さんにとって、ふわりがそのきっかけになれば、、、と思っています。
北原の一言
昨年11月にウィズの森で開催されていたふわり展に行き、そこで作品を売ったりワークショップを開催している女性たちの笑顔をみて、「これは母親たちの社会参加だ!」と思いました。冨岡さんはとてもふんわりした雰囲気で、全身からやさしさがにじみ出ている女性ですが、強い情熱と行動力の持ち主です。ある意味、「社会企業家」ともいえるのではないかと思いました。
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