食とカラダと社会はつながっている
ーー 今週末に迫ったVege&Fork Marketですが、お二人がこのイベントを開催するきっかけについて教えてください。
戸田耕一郎さん(以下、敬称略): 僕たちがVege&Fork Marketを開催するきかっけは大きく3つあります。いずれも個人的な動機からスタートしていますが、社会的な意義があると思っています。
一つは、妻の希がマクロビオティックを学んでいたことです。僕は、最初は玄米菜食にあまり関心がなかったものの、妻のつくる料理は美味しく、それをじっくり噛んで食べるようになったら、とても体調がよくなりました。もしかしたらマクロビオティックのような穀物と野菜を主体とした食事が、人間の本質と近いものであり、農業・食糧問題など、世界の様々な問題を解決する近道になるかもしれないと感じるようになったからです。
妻が「FIKA」というマクロビオティックスイーツのブランドを立ち上げたこともあり、オーガニックや菜食を広めるイベントを始めたいと思いました。僕たちの住む新百合ケ丘エリアでこのようなイベントがないか調べたところ、オーガニック/ベジタリアン向けの野外イベントがない。食育や教育に熱心なこの地域には、ベジフェスのように感度が高いイベントが比較的受け入れられやすいのではないかと考えました。
もう一つの理由は、僕の父がガンにかかってしまったこと。身体と自然は一体で、食を整えることでカラダを健康に保つ、あるいは健康を取り戻していくというマクロビオティックの視点から、父は食事コントロール(食事療法)を始めました。玄米菜食をすれば病気が治る、というカンタンな話ではありませんが、父にはマクロビオティックの食事療法が心身に馴染み、健康を取り戻しました。食事でカラダがよくなるという体験は、僕たちに大きな気づきをもたらしました。
もう一つが、いまこそが新しい時代の生き方、働き方を、僕たち自身がつくっていく時代なのかもしれない、という理由です。僕は会社に所属してはいますが、仕事内容が映像や音楽、イベントのプロデュースなので、自分でプロジェクトやコンテンツを立ち上げるという経験を日常的にしています。僕の仕事は比較的、個人の裁量で自由に動くことができるという恵まれた面がありますが、これからの時代は、会社に所属している/いないに関わらず、自分たちで仕事、プロジェクトをつくってそれを動かしてゆく時代だと考えています。だから、妻のマクロビオティックの食や生き方のお店をプロデュースし、発信していきたいと考えた時に、資金調達をしたり、会社を立ち上げるという道よりも、まずは2人でイベントを起こして動いてみる、そこから始めようと思いました。
ーー 希さんのマクロビオティックスイーツのブランド「FIKA」のコンセプトについて聞かせてください。
戸田希さん(以下敬称略): 「FIKA」とはスウェーデンの言葉で、「家族や友人と過ごす楽しいお茶の時間」という意味です。ヨガとオーガニックランチのワークショップで提供するほか、受注生産で販売しています。口コミでご注文が少しずつ増えているのがとてもありがたいです。
食材は新百合ケ丘の自然食品店で調達しています。あのお店がなかったらどうしているんだろう……というくらい大切な存在ですね。マクロビオティックのお菓子は、生クリームやバターなどの乳製品や、白砂糖を使わないので、どうしても甘さが控えめになり味もあっさり目で、後味が物足りないと感じることがあります。でも、お菓子を食べたい時って、頑張った自分へのご褒美だったり、お友達と楽しくおしゃべりしたり、ほっと一息つきかったりするので、そんな時はやっぱり甘さや贅沢な食感を求めるもの。だから、なるべくその要求に応えられるような、リッチなお菓子にしようと思ってつくっています。アーモンドプードルやピスタチオの粉を使ったり、コクを出すために大和芋をすり下ろして入れれば、動物性のものを使わなくてもとても満足感のあるスイーツができます。明るくてポップで、食べたら笑顔になるような、たんぽぽ畑のようなイメージで、誰にでも喜んでもらえるようなスイーツを提供したいと思います。
基準をしっかり打ち出すことで、メッセージを確実に届ける
ーー Vege&Fork Marketの出展基準は、動物性食品、白砂糖、乳製品、食品添加物類などを使わないことが条件で、ターゲットをかなりしぼったイベントだと思います。このように基準を明確にしている理由は?
希: 出展基準がゆるければそれだけ多くの人や団体が出展しやすくなるかもしれませんが、それだと他のお祭りとの差別化が図れません。私自身がマクロビオティックをやっていて、お肉やお魚、白砂糖を使わない食生活をしていることもあり、マクロビオティックや玄米菜食に通じる食や社会の仕組みを伝えていく、ある意味ニッチの層をねらうことで、それを求める人たちに確実にメッセージを届けていきたいという思いがあります。
ーー でも、基準が厳しいことで、出展者が集まりにくいということはありませんか?
希: 出展するお店や個人、団体は、中には都内の方もいらっしゃいますが、青葉区など田園都市線エリアや、私たちの住む新百合ケ丘から来る人が多いです。今回も30店舗以上のオーガニック・ナチュラルフードに関わる人たちがいらっしゃいます。イベントを始めると、人が人を呼び、つながりが生まれて、出店希望者はどんどん増えています。
来場者数も回を重ねるほどに増えていて、4月に開催した第2回目では2日間でのべ1200人の人が来ました。この地域には、オーガニックやベジィなライフスタイルに親和性があって、アンテナを張っている人がこんなにいるのかと驚いています。
ーー 過去2回Vege&Fork Marketを開催して、どんな手応えを感じましたか?
耕一郎: 自分がよいと思ってVege&Forkを発信していると、たとえそれが人がよいと思っていることと違っていても、場を提供することで「ありがとう」と言われて、たくさんの笑顔を見られて、それがイベントを主宰する大きな原動力になります。こんなにも人ってつながって、そのつながりが大きな力を生むのかと……。
僕たちがやりたいイベントのコンセプトは第1回目から変わらず、それは今後もゆるぎません。第3回目でも、ぶれずにしっかり足下を固めて、Vege&Fork Marketをこの地域にしっかりと根づかせていきたいです。
Vege&Forkはこれからの時代のオルタナティブ
ーー Vege&Fork Market Vol.3の見所について教えてください。
希: 初回から麻生環境センターの敷地で行っています。木々が美しく静かでとてもよい場所です。犬のお散歩のついでや、お子さんと遊びがてらでも、どなたでも楽しめます。
今回からは、お子さん連れの方に対するケアを少しずつ始めていきたいと思っています。近くはスポーツ広場などもあり、紅葉が始まる季節なので、お子さんにも楽しんでいただけると思うのですが、ちょっと授乳したり、オムツを替えるスペースがあれば、お母さんたちも安心して来場できるのではないでしょうか。また、バスフィズを手づくりしたり、古紙でつくる紙すきや廃油でつくるキャンドルなど、子どもが楽しめるワークショップのプログラムを設けています。
耕一郎: 4月に開催した第2回Vege&Fork Marketでは、東日本大震災の直後ということもあり、被災地への支援物資を募っていました。支援物資を届けてくださった無肥料無農薬栽培の「ファーマン」さんのお野菜や、被災地を元気にするボランティアイベント「スマイル&ピースキャラバン」さんの活動報告も行います。
また、アイルランドの民族音楽をベースにするバンドや、心にしみ込むウィスパーボイスのヴォーカル・アルコのライブなど、両日ともミニライブを企画しています。
ーー 私は前回・2回目に参加したのですが、出展者のクオリティも高く、スイーツも美味しくて、会場全体がとてもピースフルな雰囲気で、代々木公園などで開かれるオーガニックフェスにも匹敵する高いレベルのイベントだと思いました。今後の展開も大きく広がりそうですね。
耕一郎: いずれは敷地に隣接した野球場など、広い会場で、200-300店舗の規模で大きく開催したいと思います。同時に「30店舗の移動型ベジイベント」として東急田園都市線、東急東横線、小田急線沿線を中心に会場を見つけてその地域の方々にも出展いただき、開催したいと考えています。ぜひ、Vege&Fork Marketをいろんな地域の方に呼んでいただきたいです。
また、麻生区は全国第2位の長寿の町で(1位は青葉区)、「健康」「長生き」というキーワードに「Vege&Fork」なライフスタイルがどのように貢献できるのかをきちんと数値化するプロジェクトを将来的には見据えていきたいと思っています。具体的には、オーガニックやベジタリアン、マクロビオティックなどの生活が医療費の削減につながるということを、数字として証明したいですね。日本の医療費負担は今後上がってくると思います。米国のように医療費の10割負担というのは対岸の火事ではなく、私たち一人ひとりが、自分の健康を自身で保つ努力も求められるでしょう。「健康」は10人いれば10人に関係することなので、最終的にはそこを到達点に活動をしていきたい。
希: 私の夢は、Vege&Fork Marketを地域に根づかせて、もっといろんな人に知ってもらいたいと考えています。野菜好きを増やしたいし、つくっている人の顔が見えるというのもいい。食事は毎日のことなので、ちょっとでもいいものを食べることを、取り入れてほしいと思います。
また、授乳中のお母さんなど、甘いものを我慢してしまいがちですが、そんな方にも安心して食べていただけるような、ほっとできるお菓子を今後も提供していきたいですね。
ーーありがとうございました。私も必ずうかがいます。楽しみにしています!
##取材を終えて……(一言)
戸田さんご夫妻は同世代なのですが、地元発信で新しい時代のオルタナティブを求めている仲間、同志であると思っています。「トミーヤミー」「森の扉」「ミコト屋」など、森ノオトの仲間たちもVege&Fork Marketに出展します。この地域でオーガニックなつながりができたらいいなあ……その夢が着々と実現している!!
とても美しくスター性のある希さん。彼女をプロデュースしたいと考える耕一郎さん。私が知る何人かの成功しているご夫婦の、理想的な関係がここにあります。森ノオトでは時々「次世代のスター」「輝く原石」を見つけることがありますが、戸田ご夫妻もまさにそれ! 数年後、どんな風に羽ばたいていくのか楽しみだし、お二人と一緒に活動できれば、青葉区や麻生区を含めた多摩丘陵地域を、オーガニックの先進地にできるのではないかという大きな夢も描けそうです!
戸田耕一郎: One Tree Hill代表。Vege&Fork Market主催。普段はイベント業やプロモーション企画、事業プランニングなどを行う。
公式HP: Vege&Fork Revolution
戸田希: Vege&Fork Market主催。マクロビオティックスイーツの「FIKA」主催。毎月1回、ヨガとオーガニックランチのワークショップを開催している。
公式HP: vege&fork
http://vegenoz.blog54.fc2.com/
** INFORMATION **
Vege&Fork Market Vol.3
日時:2011年10月29日(土)、30日(日)10:00-16:00
場所:麻生環境センター
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