この桐たんすは、両方とも祖母の持ち物で、60年以上前のものになります。花嫁道具だったと思われ、祖母が他界し、家を引き払う際に私が譲りうけたものです。引き戸ははまらないし、引き出しもスムーズには引いたり出したりすることができませんでしたが、愛着があって、それなりに使ってきました。
昨年、新しい家に引っ越しをした際、以前の古いアパートにはよく似合っていたこれらのたんすも、リフォームしたての新しい壁紙にはどこか不釣り合いに見えて、たんすの修理をお願いすることにしました。
どこへ修理の依頼をしようかと調べているなか、以前からKASHOさんのファンだった私は、KASHO主宰の加生亨さんのブログで家具の修理をしている記事を発見。ダメ元で連絡をとってみると、とりあえずたんすを見に来てくれることになりました。
そうして、修理をお願いできることになってから、約1年後(!)の先月……
わが家に桐たんすが戻ってきました!
その間、加生さんは工房のお引っ越しや、お子さんの誕生や、本業のオーダー家具に大変忙しくされており、こちらも急いでいるわけではなかったので、のんびりのんびりと待っていました。私は、何よりも、加生さんに手がけてもらえることが嬉しかったのです。
納品していただいて、早速扉を開いたり、引出しを引いてみたりしましたが、以前とは比べ物にならないほどに使いやすくなっていました。以前ははまらなかった引き戸が「はまってる!」と大感激の私。
これでまた何十年と使っていけるのだと思うと、感慨深いものがありました。家族の成長や変容や歴史を、全てこの桐たんすが見ているのだな、と思うと、家具以上の存在に思えてくるのですから、不思議です。
さて、納品の際に加生さんと一緒にたんすを運んでくださったのは家具工房「TERAMOTO」の寺本義昌さんです。お話しを聞いてみると、加生さんが以前寺家で使用していた工房の後に入った方で、注文家具製作や椅子張りをされているそうです。加生さんとは、技術専門校で一緒だったのだとか。すごく照れ屋さんだったのですが、無理やりと写真に写っていただいてしまいました。
そして、椅子の張替えと聞いた私は、すかさず一脚の椅子を持ってきて、寺本さんに見てもらいました。
今回のたんすの修理のお願いをきっかけに、加生さんとのやりとりのなか、ハッとさせられた言葉があります。
「世の中にあふれるモノの数は増えれども、“大切に使いたくなるモノ”の比率はどうなんでしょうね」
私も、日頃から使い捨て商品よりも長い目でみて使用できるものを選んでいるつもりではありますが、加生さんの言葉は、なんというか、深く胸に突き刺さるものがありました。それは、実際にモノをつくっている方の言葉だったから尚更響いたのだと思います。
「繕っても使ってもらうようなものをつくっていきたい」という加生さん。そんな彼がつくり出す家具だからこそ、私を含め、人びとは魅了されていくように感じました。
話は少し変わりますが、横浜市には、平成22年度から始まった「ヨコハマ3R夢プラン」というごみ処理基本計画があります。以前FMサルースの高橋陽子さんも森ノオトで紹介していました(https://morinooto.jp/morijoho/odaidoko/fmvol16.html)。
高橋さんの記事の中でも触れている「ゴミになるモノを手に入れない」生活とは、一体どのような生活でしょう? マイバッグ、マイボトル、マイ箸、NO個別包装……?
今回の桐たんすや椅子の修理というのも「ゴミになるモノを手に入れない」生活のうちの一つとも言えます。古くなったモノは処分して、新しいモノを手に入れることは、お金さえ払えば簡単です。
でも、処分されたモノは一体どこへ行くのでしょうか? また、新しく手に入れたモノは、どこで、どういう人たちによってつくられたモノなのでしょう? 小さなモノであっても、大きなモノであっても、そうしたことに少しでも意識を向けると、きっと何かが変わってくるはずです。
それから、私にとって一番の「ゴミになるモノを手に入れない」生活とは、「足るを知る」こと、なのだと思っています。
みなさんは、いかがですか?
家具工房 KASHO
町田市小野路町2284-1
加生さんのインタビュー記事
https://morinooto.jp/ecoloco/parson/vol14-3.html
家具工房 TERAMOTO
横浜市青葉区寺家町441
http://kagukun.blogspot.jp/
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