うちは近所の台所! 鴨志田町・「鴨志田惣菜店」
駅から遠い、バス通りでもない、完全なる住宅街。なのにいつもここは賑わっています。鴨志田惣菜店はオープンして1年4カ月、その名の通り「お惣菜屋さん」=今風に言えばデリで、カフェも併設、可愛い手づくり雑貨も置いています。「素敵な惣菜屋さんだよ!ぜひ行ってみて!!」と友人に勧められていたのですが、素朴であったかいなおばちゃんがやっているお店かなあ? と思って訪ねてみたら……

ショーケースにずらりと並んだお惣菜。野菜にお肉にスイーツに。色とりどりで、どれも食べたくなっちゃう!

 

今年の新春のころでしょうか。バイクで鴨志田町を走っていた時に、花屋さんのある交差点で森ノオトのリポーターだった末吉真由華さんに会いました。当時彼女は大きなおなかで、近所の助産院に検診に行った帰り道。

「まどかさん、見てみて! 森ノオトで紹介してほしいお店があるの!」

と言って手渡してくれたのが、鴨志田惣菜店のチラシでした。

 

ある日、通りがかりでお店の前をチラリとのぞいたら、なんだかすごくにぎわっています。赤ちゃんを抱えたお母さんとママ友たち、常連さんとおぼしきおばさん、腰の曲がったおばあちゃん……。なんだか地元の社交場みたいな雰囲気だな、と思いつつも、その時は時間に追われていて、立ち寄ることはできませんでした。

 

 

カウンターがあって、テーブル席があって、店の奥には赤ちゃんもゆったり過ごせるソファ席が。家族連れや妊婦さんにも大人気:

 

気にかかりつつも半年が過ぎ、森ノオトに1通のメールが来ました。差出人は、あの鴨志田惣菜店の岡本麻希子さん。「地元で何かコラボしたい。私に何かできることがあれば」というメール。この人も、きっと地域の仲間になれる! そう直感して、すぐに返事を出しました。「取材にうかがいます」と。

 

果たして、キタハラと鴨志田惣菜店の岡本さんは出会うことになったのですが、まずお会いしてびっくり! わっかーい! 美人!! 勝手に、かっぽう着姿の年配のおばさんを想像していたのですが、予想は裏切られました(笑)。

住宅街のお惣菜屋さんだから、軒先だけの小さなお店だと思っていたらとんでもない! カウンターがあって、テーブル席があって、奥にはソファ席があって、10人以上は優に入れそうな広さです。この日も、ヨチヨチ歩きの赤ちゃんを抱えたご夫婦がのんびりとお茶を飲んでいて、地元のおばさまたちが次々とお惣菜を買い求めていました。

 

日替わりのランチプレート。肉団子、味の南蛮漬け、ごぼうの煮物などデリ3品+ごはんで690円。安い!

 

 

ナチュラルな雰囲気にプラスされたビビッドな色彩感覚、黒板に描かれたメニューの数々や豊富なドリンクの酒類、さりげなく置かれている本のセレクトを見ていると、岡本さんのセンスのよさがわかります。ていねいにつくるお惣菜は日に20品以上、だしもスープもマヨネーズも手づくりで、調理のプロセスがわかるアルバムまであります。

 

「料理はわたしが食べたいものを基本に出しています。でも、誰もが食べたい切り干し大根やポテトサラダなど定番のお料理と、新しい発見があるようなユニークなメニューと、半々の割合を心がけています」(岡本さん)

 

 

この夏に大ヒットした緑豆とココナッツミルクのお汁粉290円。バニラアイスクリームを添えて

 

こんなにオシャレな空間で、お料理もセンスがよいものばかり。だけどお店の名前は「鴨志田惣菜店」。地名+日本語という、ちょっと拍子抜けしちゃうくらいのシンプルさです。

「私は元々料理のプロじゃないし、素人が始めるお店だから、かえって“鴨志田惣菜店”くらいわかりやすいお店のほうが楽しんでもらえるんじゃないかな、と思って」

と謙遜する岡本さんですが、なるほどどうして、一つひとつのお惣菜はしっかり美味しくて、だからこそリピーターが多いのもうなずけます。

 

 

お店を切り盛りする岡本麻希子さん。 きっぱりとした美人さん。お子さんが喜ぶメニューや店内の過ごしやすさに、2児の母ならではの細やかな心配りが息づいている

 

 

岡本さんは実は2児のお母さん。これまで毎日しっかりお料理をしてきて、食べ盛りの子どもたちの食べたいもの、仕事が忙しい働き盛りの男性が食べたいもの、一人暮らしの男子が食べたいもの、そしてお店を始めてからは、この地域に多く住む子どもが独立したご年配のご夫婦が食べたいものを、しっかり把握しています。

 

チキンボックス、チキンポテトボックス、まぐろカツボックスなど、子どもが喜ぶフライボックス(1000円前後)や、ホールでも買えるケークサレ、キッシュなどのパーティーメニューも豊富で、お持たせにも喜ばれるような手づくりのマフィンやクッキー、選べる惣菜と揚げ物を組み合わせたお弁当(630円)など、テイクアウト限定ではありますが、知っておけばいざという集まりの時にも電話一本で慌てず、助かります。

 

 

デリやスイーツだけでない、地元で出会った方々の手づくり作品の販売もしている

 

さて、キタハラは仕事でどうしようも首が回らない時があります。忙しくささくれだった気持ちでごはんをつくると、最近ではいっちょまえに舌の超えたムスメ(3歳)が「おかあさんのごはん、きょうはおいしくない! つまんない!」などと言います(涙)。

そうだ、そんな日は、無理しなくてもいいんだ。だって、心をこめてつくられているごはんが、近くで買えるんだもの。

 

「お惣菜を買うことに罪悪感を持たないでほしい。買って帰ることがうしろめたい? そんな、家族みんながお気に入りを食べてうれしい気持ちで食卓に向かう方が、幸せじゃないですか」(岡本さん)

 

「ここでお店を出している以上は、地域密着にならざるを得ない」。岡本さんはきっぱりと言い切ります。住宅街の真ん中だから、場所柄、ここには知らなければ来られない。一度来た人はかなりの確率でリピーターになるそうです。だからこそ、毎日、地域の人たちの期待を裏切らないよう、美味しいものをつくって、「鴨志田の台所だと思ってもらえれば」と、今日も腕によりをかけて台所に立つ岡本さんなのです。

 

 

☆madoka’s eye

鴨志田惣菜店で使っている食材は、特別に高価なものでも、有機野菜というわけでもないのですが、調理のプロセスのアルバムを見ていると、いかに一つひとつの料理をていねいに、素材からつくっているかがわかり、これぞ本当に地域の味、おふくろの味なんだなあと思います。「地域の台所」とは言い得て妙で、地域の人の「美味しい!」の笑顔と喜びを思いながら愛情込めてごはんをつくるお母さん像を、岡本さんの姿に感じました。

これからは配達もできるようになりたい、熱々のモノを出したい、夜の営業もしてみたい、と意欲満々ですが、1年かけて少しずつお弁当の対応量を増やしてきたように、無理なく、地道に着実に、お店を続けていってほしいと思います。

だって、台所に立つお母さんが倒れたら困っちゃうから! 短期間でこれだけ愛され、浸透しているお店だから、これから末永く、一緒に楽しいことをやっていけると思うと、とても楽しみです。

Information

鴨志田惣菜店

 

住所:横浜市青葉区鴨志田町567-13 →Google Mapで見る

TEL:050-1341-0515

OPEN:11:00〜19:00

定休日:土日祝日・不定休(お電話でお問合せを)

アスセス:東急田園都市線青葉台駅よりバス「鴨志田中央」「寺家町循環」中谷都バス停下車徒歩3分

https://www.kamo-so.com/

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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