お友達大作戦!ご当地メディア訪問Vol.2 ウェブタウン横濱
ご当地メディア訪問第2回目は、お隣都筑区の「ウェブタウン横濱」さん。第1回目で紹介した港北経済新聞さんとシェアオフィスをしているNPO法人「I Love つづき」が運営しており、都筑区の地域活性化に多大なる貢献を果たしている、横浜市北部だけでなく全国的に注目される公益法人です。運営の主体はほとんどが女性で、パワフルに、チャーミングに、たくましく活躍されています。

NPO法人I Loveつづきが運営する港北ニュータウンのウェブメディア「ウェブタウン横濱」。ネット上の商店街みたいなイメージだ

 

NPOのオフィスがあるのは、横浜市営地下鉄線ブルーラインの中川駅徒歩すぐ、ハウスクエア横浜内。前回の記事でご紹介した「港北経済新聞」と同じ場所です。街を活性化してニュースそのものをつくる事業体とメディアが同居し、さらに自身でもウェブメディア「ウェブタウン横濱」を運営しているので、旬の情報を逃さず戦略的にしかけまちづくりに生かしています。

 

I Love つづきの活動がスタートしたのは1999年のこと。都筑区役所の地域活動振興課が市民活動を活性化しようと、“環境”をテーマに市民グループを募ったのがきっかけで、当初4名のメンバーが3年間補助を受けながら環境関連の講座を組み立てていました。現理事長の岩室晶子さんがこの活動に加わったのは途中からでしたが、子育てをしながら地域のスーパーマーケットの環境配慮度調査をしたり、地域の公園の環境配慮度マップをつくったり、地元の交通事故多発地帯の調査をして地図に落とし込むなどの活動を精力的に行っていました。

 

I Loveつづきの原点とも言えるマップ。その取材力、調査力は驚くばかり。民間のシンクタンクに委託したらどれだけのお金がかかるのか!

 

 

例えばスーパーマーケットの環境配慮調査では、どれだけの野菜が包装されずに裸の状態で買えるのか、スーパーの精肉コーナーにタッパーを持って行ったらそこに肉を入れてくれるのか、ベビーカーが通りやすいゾーニングか、中で飲み物を売っているのにも関わらず屋外には過剰に自動販売機が設置されていないか、など、徹底的に生活者目線を貫き、実際に調査してみた成果がマップには現れています。

交通事故多発地帯調査では、区役所はもちろん、バス会社、警察、タクシー会社、小学校のスクールゾーンなどに足しげく通い、細かいデータをもとに分析。こういった情報は、何かを糾弾したり批判するものではなく、買い物の際の選択肢や、町づくりの参考にしてほしいというポジティブなスタンスが、次第に行政やメディアからの注目を集めるようになりました。

 

区役所で成果発表の場を与えられるまでになり、「どうせやるならばプレスリリースを出して記者発表も行い、子連れでも足を運びやすい仕掛けをつくり、地図に落書きできるコーナーやクイズなどをつくり、アンケートを集めてデータ化しよう」と、徹底的に外に仕掛けをしていったのです。

 

「地図をつくって発表することは、調査だけでなく、地域の環境を変える一歩になった」と10年前を振り返る岩室さん。「一言で“環境”とは言っても、それぞれの関心によって公園や緑化、福祉、子育て、エコ、クッキングと、切り口はさまざまです。市や区とのつながりができ、みんながやりたいことをみんなで実現しながら仕事として委託を受けていくには、NPO法人の仕組みが一番だった」と、2003年にNPOを立ち上げた経緯を語ります。

 

オンラインショッピングサイト「横濱良品館」では、自家焙煎のオーガニックコーヒーやハーブティー、ハンドメイド小物、スイーツなど、厳選した地元産のアイテムが販売されている

 

NPO法人化してから9年、これまで幾つもの大きな事業の委託を受けてきたI Love つづき。代表的なのは「子どものサバイバルキャンプ」です。災害の危機管理や自分で自分の身を守るためのプログラムで、武蔵工業大学(現・東京都市大学)の体育館を借りて地域の防災マップをつくり、小学校の地下給水タンクの操作を学んだり、水を運搬し、非常食をつくって試食したり、段ボールで寝床をつくって1泊し、翌日はキャンプ風に朝食をつくり、簡易トイレをつくるなど、1泊2日で子どもたちが地域の防災を学びます。さらに、キャンプで出た宿題を持ち帰り、1カ月後にはこども防災シンポジウムをするなど、「体験し、学び、発表する」までの一連のプログラムを企画・運営しています。

 

ほかにも、オンラインショッピングサイト「横濱良品館」の運営が有名です。地元都筑区の福祉施設でつくったお菓子やお茶、地元の芋を使った芋焼酎「夢のつづき」の企画と販売などを通して、福祉施設のメンバーさんのやりがいと時給の向上につながり、地域にとっても地元産物が生まれるなど、よい芽がどんどん育っています。

 

ほかにも、「横浜市ひとり親家庭等在宅終業支援事業」で子育てをしながら働く人のためのお助け情報をまとめたり、在宅で副業できるテレワークセンター横浜の運営やネットワーク作りと研修(デザインやホームページ制作、データ入力等)、地域ポータルサイト「ウェブタウン横濱」の運営等、これまでに手がけてきた事業は数知れず。これをほとんど女性が担ってきているのですから、驚きです。

 

「私たちはNPOの人数は少ないけれども、大きなプロジェクトも、イベントにもだんだん慣れてきて、準備を綿密にする、現場での判断でOKなど、力の入れ具合がわかってきています。メンバーそれぞれをお互いにリスペクトしていて、それぞれの能力を信頼し、補い合い、最高の仲間だと誉め称え合っています(笑)。また、こんなことやりたいな、と言うと、地域の人たちに助けていただき実現できるから不思議ですね」と岩室さん。ご自身もお子さんを育てながら音楽家としても活躍中で、「どこからが仕事で遊びかわからない。時給換算できないですね」と笑います。

 

今年の6月にはまちづくり功労者国土交通大臣賞を受賞。全国29の団体のうち、さらに表彰を受け取る3団体に選ばれた(写真はI Loveつづき公式ホームページより)

I Loveつづきはこれまでの活動が認められ、今年6月にはまちづくり功労者国土交通大臣表彰を受賞しました。これからもやりたいことは次々と浮かんでくる、と岩室さん。

 

「横浜と言えば多くの方はみなとみらいや山下公園など、港の方を思い浮かべるでしょう? 都筑区は人口が増えてようやく流入の方も住み慣れてきた時代。これからは“暮らす”から“訪れて楽しい”街として発信しようと、横浜市北部エリアの観光やプロモーションに力を入れています」。

 

都筑区や青葉区はドラマのロケ地としても知られています。ロケ地ツアーやロケの適地調査、それから地元の飲食店へのロケ弁当手配、それから交通費のかからないエキストラ集めなど、具体的なアイデアが次々に飛び出てきます。

「例えば中川駅前は商店街があまりにぎわっていません。それって、架空の商店街をつくりやすいという利点にもなる。時間はかかるかもしれないけど、ロケ地として中川が盛り上がる可能性は大きい」

 

ほかにも、NPO法人は公益事業だからボランティアが当たり前という風潮ではなく、地域活動に対してきちんと対価が得られるように、また責任のある仕事として社会的価値を高めていきたい、と岩室さんは話します。

 

I Loveつづき理事長の岩室晶子さん。ご自身は音楽家で、有名なテレビ番組の音楽やアイドルの曲などの作曲を手がける

 

実は、岩室さんのお話を聞きながら、森ノオトもいつかこの地域でI Loveつづきのような存在になれたらいいな、と憧れの先輩を追うような目で見つめてしまいました。参加するメンバーがそれぞれお互いを信頼し尊重し合い、能力を高め補い、よりよいまちづくりのために公益活動をしていく。いつか同じ北部地域で協働できるような関係性になるよう、この日の取材を礎に、じっくりとネットワークを醸成していければいいな、と思っています。

 

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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