青葉区でフューチャーセッションが開催されました!
2013年3月21日(木)、「都市郊外の農的空間」をテーマに、青葉区内で大規模なフューチャーセッションが開催されました。まだ一般になじみの薄いこの言葉、実際どんなことをやっているの……!? ということで、参加レポートを兼ねてご紹介します。

皆さん、「フューチャーセッション」という言葉をご存知ですか? ここ1、2年でにわかに耳にするようになった方もいるかもしれません。カンタンに説明すると、「対話を通じて地域や組織の課題を解決するアイデアを生み出す場や機会」と言うことができます。じゃあ、「対話と会話ってどう違うの?」「会議とは異なる概念なの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんね。

あざみ野ぶんぶんプロジェクトの『お母さん版エネルギー基本計画』発表会は、「これは小さなフューチャーセッションですね!」と評していただいた

 

キタハラはこれまでに何度かフューチャーセッションの現場に参加しており、「おお、これはおもしろい! こういった機会が地域のあちこちで自然発生すれば、街を愛する人が、自分たちの手で街を楽しくするアイデアを実現できるようになるかもしれない」と、ワクワクして、どうにかこれを青葉区のあちこちで仕掛けることができないかなあ、と思っていたのです。

 

フューチャーセッションは、年齢、性別、会社など組織内での立場を超えて、誰もが公平でニュートラルな環境で意見を述べ合うことで、オリジナルのアイデアを生み出していきます。

 

だから、私が何らかの講座を主催する時も、ただ一方的に情報や知識を提供するのでなく、参加者がそれを聞いて何を感じ、自分はどう動きたいのかを必ず問いかけるようなプログラムを構成してきました。

 

そんな風に、フューチャーセッションの真似事のようなこともやってきて、いつの間にか、「青葉区でフューチャーセッションをやりたいね!」という仲間が増えてきたのはこの半年ほどのこと。

 

3/21に開催された「第5回Futures」。横浜市と川崎市が共催した

 

3月21日(木)に、アートフォーラムあざみ野をメイン会場に開催された「第5回Futures」。これまで企業の枠を超えて新しい知的社会を創造しようと活動してきた、ブリティッシュ・カウンシル、株式会社富士通研究所、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)、株式会社フューチャーセッションズによる新しい試みで、2012年度は「高齢社会」をテーマにプレも含めて5回のセッションが行われてきました。

 

そして、「第5回Futures」は、横浜市と川崎市が共催し、次のテーマが掲げられました。

 

【Across Borders】

 

地域・世代・セクターの境界を超えて、高齢化社会における都市郊外の新しいライフスタイルを構想する

都市郊外の農的空間をキーワードに、高齢社会の課題解決策と新しいライフスタイルをみんなで考えていこう、というものでした。

川崎市早野地区の「はぐるまの会」が運営するハーブ畑。障がいをもった方がハーブを育て、地域で加工し、販売する

 

午前中は、横浜市青葉区の寺家ふるさと村と、川崎市麻生区の早野地区をフィールドワークして歩きました。ヒアリングには森ノオトで取材した方々にも多数ご協力いただきました。

 

午後は、アートフォーラムあざみ野に場所を移し、セッションです。

 

プレゼンテーション、対談、公開インタビューの時間をみんなで共有し、その後4人のメンバーで「郊外の農的空間 × ライフシーン」から、新たな暮らしの文化を考えるワールドカフェを3セット、そして最後はグループのメンバーで30秒のミニビデオを撮影し、テーマに対する一つのプロットタイプを表現してシェアするというもの。

 

詳しい内容や報告は、主催者のホームページをご参照いただくとして、フューチャーセッションのプロによる綿密な場づくりとプログラム構成、そして最後に参加者全員でつくった9つの30秒ミニビデオクリップを見た時に、寺家ふるさと村や早野に限らず、都市郊外の農的空間にわたしたちが入っていく時の心得の共通解が浮かび上がってきて、このエッセンスを森ノオトのメンバーにも共有したい、と強く感じたものです。

 

午後のセッションでは、森ノオトでも紹介した「アグロスつちのさと」の大橋二郎さんが公開インタビューを受けた。「有機農法では土をつくるのに10年かかる」。その言葉は農的空間への向き合い方についての多大なインスピレーションを与えた

 

フィールドワーク、インプット、対話、試行錯誤、発表、共有……という、1日のなかで、学び、感じ、もやもやしたり迷ったり悩んだりしながら、最後に集中して一つの表現を共有するなかで、「ああ、そうなのか! これが課題の本質なのか!」と腑に落ちる瞬間が訪れるのが、フューチャーセッションの醍醐味かもしれません。

 

フューチャーセッションでは、「知識や意見を誰かから聞く、学ぶ」という一方通行ではなく、その場に参加する万人がフラットな立場で、新鮮な視点でアイデアを共有するという対等な双方向性が何よりの魅力です。偶発的にプロジェクトが形になるように見えてそれが必然解だった……という、スリルとともに達成感も味わえる、大人の知的創造の時間と言えます。新しいビジネスやサービス、プロダクト、そしてライフスタイルをつくり出すために、企業や行政からも注目されている手法なのです。

 

ワールドカフェとは、カフェでの雑談のようにリラックスした雰囲気のなか自由に会話をし、創造的なアイデアを生み出していくための手法。実際にお茶を飲んだりお菓子を食べて会話する時間も大切にする。最近では企業の会議などでもよく使われる

 

これを地域のさまざまな現場に落とし込んでいくには、まだまだ多くの時間や実践の積み重ねが必要です。

 

街のあちこちで、いつもワクワクするようなアイデアが生まれる「編集会議」が開催されていて、誰でも参加自由で、みんなが自律して責任もって街に関わり、未来をつくっていく――。そんな街にしていくために、フューチャーセッションの手法はとても有益だと思います。

 

昨年秋からたまプラーザで定期的に開催されてきた東急電鉄と横浜市による「次世代郊外まちづくり」プロジェクトも、フューチャーセッションの一つの形(しかもかなりハイレベルで実践的な!)と言えます。

 

森ノオトの注力ポイントは、いつも同じ。

 

地域で過ごす時間が長い、未来世代そのものを抱える子育て世代が、街のプレイヤーになっていく仕組みをつくりたい。

 

その一つがメディア運営であり、横の線をつないでいく活動です。

 

そして、未来に向けた街づくりの実践という、縦の線を積み重ねるために、フューチャーセッションのような仕組みを活用し、「街の編集会議」を多様なプレイヤーと共有していきたい。

 

そんなことを感じながら、これからも地域で小さなフューチャーセッションを重ねていきたいと思いました。

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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