芸術にふれながら人と出会いつながる場。もえぎ野・ギャラリーカフェ「リンデン」
キンモクセイが香り、ちょっと冷たくも澄んだ空気。長く続いた残暑から、落ち着いた秋の気候に移り変わると、様々なことに意欲が湧いてきます。読書や、何か創作したり、芸術にふれたり、時間を忘れて物思いに耽ったり……。でも、仕事や家庭があって自分の時間がなかなかつくれない! という方もいます。ここにいるだけで芸術が身近になる、そんな素敵なギャラリーカフェをご紹介します。(text:高鳥可那)

青葉台と藤が丘を結ぶケヤキ並木が美しいもえぎ野。もえぎ野公園から桜台に抜ける丘の上に、カフェギャラリーリンデンはあります。藤が丘駅からは徒歩10分、青葉台駅からは徒歩13分ほどの場所です。丘の上から見下すもえぎ野公園やもえぎ野ふれあいの樹林の景色はとってもきれい! 吹き抜ける風も心地よく感じます。

カフェギャラリーリンデンは、その名の通りアプローチに植えられた菩提樹(リンデン)がシンボルツリーです。ガラス張りの看板にはコンサートの予定や展示会の予定が掲示され、可愛らしいお花の中を進むと、扉の前の黒板には季節のメニューが書いてあります。ドア越しからもよく見えるテディベア展に目を奪われながら、入り口に近づくとなにやら美味しい料理の香り! 秋の夕刻が一瞬で温かい雰囲気に包まれました。

ドアを開くとベルの音と一緒にオーナーの近藤典子さんが笑顔で迎えてくれました。

 

季節を感じる近藤さんの素敵な演出。横の窓はまるで額縁のよう。ここから満月が見えた時は何ともいえない贅沢な気持ちになりました。ピアノがあり、木の温もりで溢れる店内はまるで森の中のカフェにでも来た気分

 

カフェギャラリーリンデンがオープンしたのは2011年5月のことです。

「お茶をゆっくり飲めて、遠くの美術館に行かなくても自分でなにが好きかを発見でき、そこで出会った人がつながる場所をつくりたかった」

と、近藤さん。

自宅の建て替えの時、夢だったギャラリーカフェを1階につくりました。当初は4月のオープン予定でしたが、忘れもしない東日本大震災が発生。開店を1カ月延期しました。こんな時代だからこそゆったりと落ち着く時間と、くつろげ、アートに出会える場所が必要だ、とオープンし、それから、地元の方々を中心に多くの方から愛される場所になりました。

 

月替わりハーブティー(500円)。この日「暖」を選びからだがぽっかぽっかに。リラックスできるものやビタミンCを含んだものなど、体と心の調子を整えてくれそうなラインナップ。コーヒー(450円)もとっても美味しい

 

近藤さんと芸術との関わりは幼少期に遡ります。戦争により画家への道を諦めたお父様の影響が大きかったと言います。近藤さん自身もお父様の画集をよく眺めていたそうですが、同時に、画集を見る時のお父様の目が普段と違ったことも、強く記憶に残っているそうです。また、近藤さん自身も、つらい時に1枚の絵に救われたこともあり、芸術の持つ癒し、やさしさ、同時に楽しさやワクワクする心を、多くの人と共有したいという気持ちが開店の後押しになりました。

「父の背中を見ていた幼少期の思い出や、自分が惹かれた絵の意味と自分の人生が重なるなど、芸術は出会う人との縁でより輝くものだと感じました。作者の魂を感じ、作者から離れてなお光るものがある作品をリンデンに招いています」

深い深い思いを込めて運営しているリンデン。近藤さんの温かな気配りは、建築・内装からカフェメニューにまで行き届いています。

壁は漆喰、オーガニック素材のカーテン、断熱材も天然素材。建材の化学物質が苦手な人でも安心して過ごせるような、細かい心配りに感激しました。ここにいると、いい空気だからこそ、時間を忘れリフレッシュができるのだと実感します。

お料理の食材は安心できるものを使いたいと、野菜だけでなく、調味料も主に生活クラブから取り寄せています。

「みんなにいい空気を吸ってもらいたいんですね。お茶をしながら1時間だけでもボーッとでき、普段の忙しい生活のなかで抱えているものを解放して、自分を取り戻していってほしい」

 

予約制のランチのメニュー(1500円/ドリンク・デザート付き)。偶数月が和風、奇数月が洋風の季節の料理。キュウリのスープ(初めての味わい。ピクルスとレモンが効いていて美味しい!)、鶏もも肉と野菜のダッチオーブン焼き、黒米のパン、ぶどうとベーコンの秋のサラダ。どれも長年住んでいたドイツの家庭料理がベースだ

 

近藤さんはマイクロソフト株式会社と横浜市の女性起業支援事業「女性起業UPルーム」の第3期卒業生でもあります。ギャラリーカフェの開業に向け、カフェの専門学校に通いながら受講。ここでの経験がとても身になったといいます。

「自分の揺るがないコンセプト、計画性をもち、人にどれだけ伝えられるか、起業にはそれが大切だとわかりました。利益を出すことは大切ですが、私にとってはそれが最優先ではなく、人と人がつながる場をつくることが何より大事でした」

自宅をお店にして、一人でまかなえるところから始めたので、お店にかかる固定費を最小限に抑えることができました。そのぶん、体に優しく厳選した食材にこだわり、料理もカフェもお手頃な価格を実現することができました。一つひとつの手間を省かず丁寧に、素朴だけど本来の味を経験してもらいたい、というリンデンの“お母さん”のおいしい料理は、心から元気になります。

「アートは料理と一緒、生き物みたい」という言葉も印象的でした。

 

丁寧に裏ごしされたランチメニューのカボチャのケーキ(単品 400円/ドリンクセット750円)。こちらもドイツ風。「ドイツでは3時のティータイムをみんな大事にしている。家庭ごとに代々受け継がれたおやつをつくってもてなしてくれました。お店でつくる料理やケーキは、その時のお返しの気持ちを込めてつくっています」と話してくれました。優しくて本場の味わいが楽しめるリンデンのケーキの大ファンです

 

リンデンに行くといつも出展者やお客さん同士が交流している光景を目にします。地域でもっと身近に、気軽に文化を楽しめる場所をつくりたいとギャラリーカフェをオープンして2年半。藤が丘、そして青葉区をもっと面白くしていきたいという地元の人が集まってくるそうです。

この秋冬もたくさんの展示やコンサートが決まっています。また、最近はカフェを開業したい人に自己実現の経験の場として、1日キッチンと場所を貸し出す「1日カフェオーナー」も始めました。

 

リンデンは近藤さんの誕生花の樹。「葉っぱのプロペラで種が自分から飛べるようになっているの! 自分で育ち飛び立って根を下ろす姿がコンセプトそのもの」。建物のあちらこちらに種のモチーフがあります。お店に来た際はぜひ探してみてくださいね!

出展者として、ワンデイカフェのオーナーとして、さまざまな形で関わることができ、人とのつながりを広げることができるカフェギャラリーリンデン。

もちろんお客さんとしても!! 近藤さんの温かい笑顔とくつろげる空間は、そこで過ごすだけで本当にほっとできます。ぜひ、読者の皆さんも足を運んでみてください。私もすっかり芸術と食欲の秋を満喫してきました。リンデンで出会う人同士が、またつながり、そこで新しい何かが生まれるかもしれません。

Information

カフェ・ギャラリー リンデン

住所:神奈川県横浜市青葉区もえぎ野22-25

TEL:045-532-5288

URL: http://www6.ocn.ne.jp/~linden/

営業日:水-日曜日

定休日:月・火

営業時間:12:00-18:00 (ランチの予約は前日17:00まで)

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