2011年3月11日、東日本大震災。そして、東電福島第一原発の事故。この日以来、わたしの生活は変わりました。
いまとなっては驚かれるのですが、わたくし、3.11前は人前に出て話すことなどほとんどありませんでした。森ノオトを始めて自分の名前を出すことはあっても、まさか自らが旗を振って市民活動を買って出るなんて……。でも、それほど、3.11はわたしにとって大きなことでした。自らが動くことなしに、世の中は変えられない。本気で変えたいから、変えるための行動をしていこう。どのように動いたら、人を動かすことができるのか? ……ひたすらその解を求めながら、試行錯誤してきた2年半でした。
「エネルギーシフト」、エネシフ、とも言います。カンタンに説明すると、次のようになります。地球温暖化の原因物質といわれる二酸化炭素を排出する化石燃料や、核廃棄物をもたらす原子力発電などに頼らず、太陽や風、森など自然由来で再生可能なエネルギー社会に移っていく過程を指します。エネシフ活動をするほど、エネルギー問題とは、ライフスタイル、消費の選択など、生き方すべてに関わってくる、と思います。
森ノオトと姉妹関係にあるあざみ野ぶんぶんプロジェクトは、震災から1カ月が経った2011年4月に、キタハラと、オーガニックカフェ・ソワ[礎・波]の岩崎玲子さん、森ノオトのマネージャー・中島美穂さんとで設立しました。3.11を経て、自らの意志と責任でエネルギーシフトを牽引していこうと立ち上がった、その日の覚悟をいまでも忘れません。その後、森ノオトの松山ちかこさん、デザイナーの吉村友希さんが加わり、震災から1年、5人で自主上映会の運営、勉強会の開催など、実に目まぐるしく動き回りました。
その後、梅原あき子さんがさわやかな視点から電氣の歴史をとらえる「エレキ女史の電氣文学 琥珀の子」の連載を始め、梅原さん中心に独立型ソーラーシステムのワークショップも盛り上がりを見せました。昨年9月には、時の民主党政権時代の大臣に、エネシフにかける主婦の想いを直接伝える機会にも恵まれました。
3.11から2年半を経て、あざみ野ぶんぶんプロジェクトは森ノオトの「エネルギー部」として、この11月より一緒に活動することになりました(エネルギーに関する活動は政治的な要素もあるので、独立・中立性を目指したい森ノオトでは、これまであえて分けて活動していました)。それぞれが「元さや」に戻り、日々の暮らしの中でいかに無理なく持続的に、エネシフを担っていくための場や仕組みをつくっていくのか、いまわたしは、そこに関心があります。母として、主婦として、アーティストとして、経営者として、ライフスタイルと経済活動、表現のなかに、エネルギーシフトという新しい選択を組み込ませていくのか、そんな新しいフェーズに入っていると思います。
本書『暮らし目線のエネルギーシフト』は、そうした意味ではすでに過去の記録であるとも言えます。2年半前、誰もが経験した肌身がヒリヒリする思いと経験。生まれて初めてデモに行った、生まれて初めて署名した、生まれて初めてパブコメを書いた、こうした、おそらく多くの人にとっての「初めての経験」を、等身大、かつ記者としての少し俯瞰した目線から語っています。
出版企画から本が出るまで、1年かかりました。その間、政権は代わり、震災は風化した印象もあり、原発事故をいまなお語ることはタブーのような雰囲気すらあります。
でも、何一つ終わってもいないし、始まってもいない。変化のただ中にある時には、いまが変化の時であるとは気づきにくいものだと思います。こうした激流の中で、大きくビジョンを描き、時勢や時流を読みつつも流されない、しなやかでたくましい感性が必要だと思っています。
市民活動も素人、特別に頭がよいわけでも、新しいことをやっているわけでもない、つたないながらも、誠実に、しつこく、コツコツと動いてきました。
青葉区周辺にお住まいの方にとっては、おなじみの方の名前も多く目にすることかと思います。ぜひ、お近くの書店で、お手にとっていただければ幸いです。森ノオト関係社にお声をおかけいただけましたら、直接お渡しすることも可能です。
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