森ノオトとあざみ野ぶんぶんプロジェクトでは、生活者視点でのエコやエネルギーを学び、考え、実践し、伝える活動をコツコツ、しつこく続けてきました。わたしたちがやっているのは、路傍の花のようにとても小さなこと。そんな活動を見守ってくださった方々の後押しがあって、キタハラ、ついに「国際会議」に登壇してしまいました。
……といっても、わたしは、普段は5歳児のおねしょにハラハラドキドキしている一介の母ちゃんです。森ノオトが市民メディアとして注目を集めるようになり、この半年ほど、人前に出てしゃべる機会は増えました。チャンスとテーマをいただくたびに、森ノオトが生んできた価値とは何なのだろう、どうして自分がこの場に呼ばれたのだろう、と考えました。すでに先駆者がいる分野では、わたしが呼ばれることはないはずです。社会に求められる「ニーズ」と、わたしたちが持っている価値「シーズ」がよいバランスで引き合っているかどうか、未開拓の分野を耕しているかどうかなのだろうな、と考えました。
こと、エネルギー分野でお話しするとしたら……拙著『暮らし目線のエネルギーシフト』に記した通り、「敵をつくらず、たたかうことからイチ抜けて、チャーミングに仲間を増やしていく」。そのアプローチで、女コドモからダンディやマダムに仲間を広げていった発信のあり方なのだろう、と。
わたしが招かれた「コミュニティパワー国際会議」は、世界各国で自然エネルギーを推進する機関の研究者や、自然エネルギー100%を実現したコミュニティのリーダー、日本各地で萌芽する「ご当地電力」の担い手などが一同に会する、300人規模の国際会議です。2日目のセッション3-A「ネットワーキング」セッションで、世界風力エネルギー協会のステファン・ゼンガーさんや、自然エネルギー信州ネットの小田切奈々子さんら、有識者や実践者とともにパネリストとしてお話しすることになりました。
あっこ「わたし、赤坂憲雄さんのファンなんだよねー。エネルギーの勉強の前に赤坂さんの本、読んじゃったよ」(赤坂憲雄さんは『東北学』で知られる民俗学者、哲学者です)
まどか「サムソ島のソーレン・ハーマンセンに再会できるかな? 祝島でのつたない英会話、挽回したいなー」
あっこ「富士通総合研究所の高橋洋さんって、テレビや新聞でよく見かける人だよね?」
まどか「オーストラリアのヘップバーン風力協同組合のタリン・レーンさんって、すんごい美女! わたし、この人と一緒に並ぶの? マジ?」
……ほとんど、修学旅行のノリです。
わたしを招いてくださったのは、主催団体のISEP(環境エネルギー政策研究所)の特任研究員で本会議の事務局長を務めている、青葉台在住の山崎誠さん。衆議院議員時代、あざみ野ぶんぶんプロジェクトでつくった『お母さん版エネルギー基本計画』を、当時の国家戦略担当大臣に一緒に届けてくださった方です。会場で山崎さんの顔を見つけて、高ぶってた気持ちが落ち着き、ほっとしました。ワクワクとドキドキ、しみじみが交錯するなか、いよいよ、国際会議が始まりました。
気候変動の専門家で再生可能エネルギーの国際的なキャンペーンを展開してきたワールド・フューチャー・カウンシルのステファン・シューリグ氏による基調講演からスタートしました。
「ドイツの子どもたちが家の絵を描く時に、一昔前は三角屋根で煙突があった。石炭がエネルギー源の象徴だった時代のシーンだ。今の子どもは風景に風車の絵を入れる」
それほどドイツで太陽光発電や風力発電が日常生活で受け入れられるようになったのは、農家や地域の住民が主体となり、小さな電力会社を次々と立ち上げ、その動きに対して実に多くの住民が参加して、ビジネスの担い手として便益を得てきたからだそうです。ステファンさんは「社会における農家の役割は、食とエネルギーを供給すること。農家がもう一度社会の先導的な役割を担ってほしい」と励ましました。その話を聞き、わたしは、地域で農を担うあの人、この人の顔が浮かんできました。安全、安心な食を顔の見えるつくり手から買うことと、エネルギーを得ることは、実はとてもよく似ているーーと。
ステファンさんが残したキーワード「エネルギー社会の転換は、参加型民主主義を実現すること」。
これは、基調パネルディスカッション「福島からコミュニティパワーを考える」、そして2日間の会議全体でも共有された大きなテーマです。
コミュニティパワー(ご当地電力、地域電力とも言われます)を今後どう定義していくのか。環境経済学者で京都大学教授の植田和弘さんは、「エネルギーを市民と地域社会に取り戻すこと」と言いました。IT技術の進展を組み合わせてエネルギーの自治、自立の基盤をつくり、分散型のネットワークをつくる。日本で起こっているコミュニティパワー一つひとつを見ると小さな動きかもしれませんが、数年の間で同時多発的にものすごい萌芽が芽吹いている、これは歴史的な転換点ではないでしょうか(変化のただ中にいると、自分はその潮流には気づかないものです)。
では、わたしたちは今後、具体的に何を学んでいけばいいのでしょうか。トーマスさんは「情報・知識と経験の共有、そしてコミュニティパワー同士の競争ではなく協力が必要です。コミュニティパワーの創出にはなるべく多くの人ーー企業、自治体、政治家、個人が関与し、将来的に自分たちがメリットを得られる低コストの電力源に投資する流れをつくること」と言いました(たまプラーザ電力って、まさにこれじゃない?)。
さらに、リーダーに必要な資質は「地域を巻き込み、情報を共有し、企業や人々のスキルを取り込むことができる巻き込み型」であること、とも。……これには、梅原さんと目を見合わせて笑ってしまいました。「タイフーン・ガール(巻き込み型)」の異名を持つわたし?(自意識過剰ですかね?)……あ、トーマスさんは「億万長者になれるわけではない」と断言していましたね。「プロフェッショナルなパートナーも必要!」と、ステファン・ゼンガーさんは会場から一声。
ソーレンさんは「地域の資源や可能性をどううまく活用できるのか、マスタープランを描き、確実に実行すること」と。地域にあるリソースで、何が使えるのかを把握していく。これはエネルギーに限らず、人材活用・雇用創出に結びついていきますね。
モデレーターの飯田哲也さんは「これは現代の自由民権運動。地域を豊かにする形で経済成長のあり方を変えられる。この福島からエネルギー社会を変えていこう」と、締めくくりました。
再生可能エネルギー界のVIPたちによる議論は、難しさはなくわかりやすいメッセージで、一つひとつが腑に落ちる、地域から変えていける身近な知見の宝庫でした。巨大なシステムの中に組み込まれない、自分たちで試行錯誤しながらつくり上げていく社会システム。
初日の最後には、全国から100人以上のコミュニティパワーの担い手が大集合。
北海道、オホーツク、青森、岩手、秋田は鹿角や大潟村、キタハラの友達もいっぱいの山形、福島から双葉、富岡、南相馬、会津など何団体も、新潟、群馬、埼玉、神奈川からは生活クラブ生協、小田原のほうとく、ご近所では世田谷、多摩、調布、千葉はいすみ、静岡、信州、兵庫は宝塚、岡山、徳島、南は山口、大分……。規模も経験も様々で、間伐材でパンを焼く人からすでにメガワット級の市民電力を実現しているところまでバラエティ豊か。地域性と一人ひとりの個性がほとばしり出てくるようで、梅原さんと「来年はたまプラーザもこの仲間として呼ばれるといいね」と話しました。
これから8つのセッションを2人で網羅して、地域の仲間たちにどう還元できるかねえ、と梅原さんと打ち合わせしつつも、話はとことん、ミーハーです。
「おひさま進歩エネルギーの原亮弘さんにすれ違ったね」「えねぱそぱぱ、竹村さん来てたねー、多分あとで一緒に飲むよね」「世田谷区の保坂区長が斜め前に座ったよ」「城南信用金庫の吉原理事長、いつもダンディだねえ」
さて、次回からは、セッションAの1-4、セッションBの1-4について、網羅的にレポートします。
生活マガジン
「森ノオト」
月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる
森のなかま募集中!