震災を経て、日本人であることの誇りを感じた「とおりにわ」オーナーの嶋田智臣さん。自身の地元、京都のものづくり文化を「日本人として大切にしていきたい」「もっと多くの人に伝えたい」という思いが、都筑ふれあいの丘駅近くのショップ「とおりにわ」のオープンにつながりました。そこには、私がまだ知らない京都がたくさんありました。
千年の歴史のある京都。山に囲まれ、寺社仏閣がいたるところにある誰もが知る観光地。京都が大好きな私も何度も訪れました。そんな京都の魅力を集めたショップが都筑ふれあいの丘駅から徒歩3分のところにあると知り、訪ねてみました。
京都出身でオーナーの嶋田智臣(しまだともおみ)さんは、8年前に京都から横浜に移り住みました。学生時代に経験した阪神淡路大震災、そして2011年の東日本大震災時、思いやりのある日本人の行動を見聞きするうちに、日本人としての誇りを感じたと言います。「日本人に生まれて良かった」との思いを抱き、「日本の文化を知り紹介していきたい」と考えた嶋田さんは、自分にできることとして、自身の地元<京都>を知ることからはじめました。
地元を離れていたことで、初めて気づいた京都の良さが多くありました。桜や紅葉の時季の町の美しさだけでなく、「今まで何気なく通ってきた町並みにものづくり文化」の伝統が溶けこんでいたのです。
嶋田さんは日本人として誇れる京都の文化の中から、独自の目線で選び、知らなかった京都を伝える場として、「とおりにわ」を横浜・都筑につくりました。
「とおりにわ」とは京都の町家形式の住居で見られる土間のこと。京都の町家では「通り庭」は表の商店部分と奥のプライベート部分をつなぐ場所でした。その通り庭をお店にもつくったのです。
店の「通り庭」からの店内は、まるで万華鏡の中を覗いたような色鮮やかな空間。キッチン用品から食品、衣類など様々な種類が並びます。その数、約60ブランド。嶋田さんは、これらの商品のつくり手に必ず会い、その商品がつくられる一つひとつのストーリーを聞いて選んでいます。つくり手の想いを、お店を訪れたお客さんに伝えていきたいと言います。
しかし、商品の中には、つくり手の想いがとても強く、一度会っただけでは店に商品を置くことを許してもらえなかったものもあります。3回訪ねようやく嶋田さんの熱意が通じたそうです。「とおりにわ」に並んでいる商品は、そのようにつくり手と対話を重ねたものばかり。
特に目立つのは、京都の伝統技術と若手クリエイターのコラボレーション商品。古くからある染物屋とデザイナーがユニットを組んで作ったバッグや、若手の木版画家の作る行燈(あんどん)など、どの商品にも一味違った面白みとストーリーがありました。お店にいた京都出身のお客様も、「ここには私の知らない京都があって、すごく楽しいの」と言っては、よく足を運ぶそうです。
私の旅の楽しみは、その土地に根付いたものを食べたり、買ったりすること。地元の人も知らない京都がここ都筑区で知れるなんて! と、ちょっとした旅気分を味わいました。
現在、「とおりにわ」さんでは、毎月「京野菜のマルシェ」と「京都・北山のパン祭り」を開催しています。日程など詳しくはHPでご確認ください。
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