学生さんと蜜蜂の素敵な関係。國學院大學万葉エコBeeプロジェクト
森ノオトのプーさんこと、山田恵里佳です。前回の「まじめな蜂蜜」レポートに続き、ハチミツを追っての取材第二段をお送りします。今回の取材先は國學院大學たまプラーザキャンパス。森ノオトエリアの中心に位置するたまプラーザ駅から徒歩5分の國學院大学で、なぜ養蜂を? それは読んでみてのお楽しみに……。(text:山田恵里佳)

7月第2週の土曜日、最高気温32,7℃という真夏日の午後、私と編集長のキタハラが向かったのは、國學院大學たまプラーザキャンパスのわかば21校舎の屋上でした。屋上の隅にあるのは小さな小屋……、中ではかわいらしい女子学生さんたちが作業着に身をつつんでなにやら忙しそうです。

 

いったい何をしていたのかと言いますと……、そうです、蜂のお世話です。
こちらではサークル活動として養蜂をおこなっています。

 

その名も万葉エコBeeプロジェクト。國學院大學創立130周年記念事業として横浜たまプラーザキャンパスを舞台に2012年4月にスタートし、今年で3年目を迎えます。指導員に「HamaBoomBoom!プロジェクト」主宰の岡田信行さんを迎え、18名ほどの学生さんが活動に参加しています。男女半々位の割合だそうですが、今日の屋上での活動は女の子のみの参加のようです。

 

「蜂さんにさわってみますか」
かわいらしい声にふりむくと、そこには3年生の名上友希さんが立っていました。手の上には1匹の蜂が手名付けられている(ように見える)ではありませんか!だ、だ、だいじょうぶなんですか。刺されないんですか?
「この子はオスなんですー。オスは針がないんですよ」

名上さんの手にいるオス蜂。懐いているようにも見える

オス蜂は巣箱の中に約1割しかいないのだそうです。あとはみんなメス蜂。ちなみに外に出て、花の蜜や花粉を持ち帰ってくるのはみんなメスで、いわゆる働き蜂はメス蜂のことをいうのです。

 

メス蜂の姿はオス蜂よりもずっとシャープな印象です。忙しいからかしら。女王蜂にいたっては、長身スラリのモデル体型で、一際目立ちます。女王蜂は毎日数百個の卵を産み続けるのです。

巣箱の中にいるのがオス蜂と女王蜂。外にいるのはメス蜂で

オス蜂は丸っこくて、マフラーなんかもふわふわしていて、おまけに針もないのでなんだかかわいい。私も手に乗せてみました。

 

しかしなんでしょう、この蜂の世界のオスとメスの関係は(笑)。働きづくめでシャープなメス蜂と、針で刺さずに可愛らしいオス蜂。なんともおもしろいではありませんか。

 

「ミツバチさんはとってもきれい好きなんです。この巣箱の中でも上段の方は蜜を貯める部屋、下段の方は赤ちゃんを育てる部屋ときっちり使い分けています。なぜ上が蜜なのかと言ったら、外敵が来ても上の蜜が取られて下の赤ちゃんは守られるからなんです」(名上さん)

 

ハチが採ってきたばかりの蜜は糖度が60〜70度。これを、80度(細菌が生きていけない糖度)に上げるために、ハタラキバチたちは夜通し羽ばたいて水分を飛ばします。80度まで糖度が上がると、ミツロウできちっと蓋をして、蜜を貯えます。蜂にはわかるんですね、完成のタイミングが。本当に蜜蜂は几帳面なのだなあ、思いました。

 

ミツバチたちがいかにきっちりと子を育て、食料を保存しているか。見習うべき点がたくさんあるように感じる私でした。

美しいハニカム構造の巣。ミツロウの蓋は採蜜の際に削り、余ったものでクレヨンなどをつくるという

そして、ちょっと切ない話も……。

 

ミツバチはきれい好きな故、もうすぐ自分が死ぬとわかると、自ら外へ出て行くのだそうです。病気の子がいると、他のハチが巣から追い出して巣を守る。種が生き延びるための社会を、ミツバチは完璧に作り上げているのです。
ここで私から名上さんへ質問させてもらいました。この活動の魅力をどんな風に感じていますか。

 

「うーん……ひとつの生命が産まれるところから見ることができること。卵から抜け出してくる瞬間を見ると、命って大事だなーって思います。そして成長して……ひとつの命の始めから終わりまでを見ることができることがとても魅力的です」
若くて感性のやわらかいときに、これは本当に貴重な経験だと思います。

女王蜂のための部屋。ひと際カラダが大きいので、一目でわかる。「蜂の社会性の高さには本当に驚かされます。他の昆虫とは違うし、子を育て上げるという、母性社会をしっかり築いているのです」と岡田さん

指導員の岡田さんには面白いものを見せてもらいました。

 

「これは女王蜂になるための戦いの跡です。女王蜂は生まれではなく、育ちで決まります。何匹か女王蜂の候補がいて、その子たちには主食としてローヤルゼリーをたっぷりと与えられます。そして最終的に一匹に絞られるのです」
國學院大學公報課の原口章さんからは、次のような驚きのエピソードが。

 

「ミツバチの行動範囲は半径2-3kmと言われていますが、実はこの近辺には大型緑地や公園がないんです。でもこの地域の蜜の採れ高はすごい。他の地域のミツバチプロジェクトの中でも群を抜いていて、驚かれるほどなのです。年間60kg程度を収穫している他地区のプロジェクトがある一方で、ここでの昨年・一昨年の平均取れ高が200kgでした。蜂の飼育数はほとんど変わりません。推測ではありますが、街の方々の庭の手入れが行き届いているからだと思うのです。このハチミツを、いずれ地域の方々とつながるきっかけにしていき、蜜のお礼として還元したい」

 

國學院大學には人間開発学部という、いわゆる教育学部にあたる学部があります。今回取材した学生さんの中には初等教育学部の学生もいて、こうした養蜂の経験は、将来彼女たちが先生になった時の授業にも役立つのではないでしょうか。ミツロウを使ってのクレヨン作りや石けん作りを企画したこともあるそうで、幼児や小学生など、学生さんから小さな子どもたちにも伝えて欲しい魅力的な企画だと感じました。

左から滝口恵美さん、藤島綾乃さん、佐々木祐衣さん、名上友希さん。右端は学生に採蜜やミツバチの健康管理を指導するHama Boom Boom!(ハマブンブン)のプロジェクト代表の岡田信行さん。都市環境づくりの第一人者だ

そうそう!

 

この活動の一番おいしーい部分をお伝えしなくては!
そう、採蜜です!!
ナイフでミツロウのフタを取り、人差し指でひとすくい……! その味の清らかなこと! 巣箱を遠心分離機にセットして回し蜜をとり、その後はサークル室に運んで瓶詰めまで、一連の作業を手伝わせてもらいました。

なんと、美味しいー!!

 

実際に遠心分離機を回して蜜を採ってみた

 

とろーり、採れたての蜜

 

屋内のサークル室では学生たちが蜜の瓶詰めや検品、在庫管理などをおこなっていた

國學院大學万葉エコBeeプロジェクトの皆様、ありがとうございました。

 

ハチミツを追って、こんな素敵なプロジェクトに出会えた私、幸せな一日となりました。ハチミツの持つパワー、そしてミツバチの社会性、養蜂を通じてできる地域とのつながり。なにかミツバチをきっかけに、とてもとても大事なことを教わっているような気がします。
この旅、第三弾も続くかも!? 乞う、ご期待!

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