我が家のベランダがリビングに!? モチダノソノとのエディブルガーデン計画
家庭菜園やガーデニングを楽しむ人が多い森ノオトエリア。わたしも緑が好きですが、眺める専門で、時折プランター栽培に挑戦するも枯らしてしまう、通称「植物キラー」と呼ばれています。でも、今度こそ植物のある暮らしを実現したい! ……そう思い、森ノオトの夫婦植木屋ユニット「モチダノソノ」の持田智彦さん・三貴子さん夫妻に相談してみました。

完成したベランダが大のお気に入りの長女。プラントハンガーの毛糸の色鮮やかさも◎

 

突然ですが、キタハラ家は団地の小さな部屋に暮らしています。駅から近く、緑が豊かで、同じ世代のファミリーが多く友達もたくさん。コミュニティづくりに熱心な人が多くて多世代交流が盛んな我が団地での暮らしは、最高です。

 

一方で、築50年近い建物の最上階にある我が家は夏場の暑さがすさまじく、7-8月の室内温度は夜中でも30℃を下回らないほど。室内で軽い熱中症になったこともあり、エコや節電を言いながらも冷房は欠かせません。グリーンカーテンがある住まいは夏場の室内気温が5-6℃ほど下がるという声もあり、今年こそは挑戦しようと毎年思うのですが、実践には至らず……。

 

実はわたくし、近隣ではちょいと有名な「植物キラー」なんです。植物を買ったりもらったりするものの、こまめな水やりを怠るために枯らしてしまうことが多く、乾燥に強いと言われるアロエですら葉先が茶色くなっている始末……。ここはプロに頼ろう! 森ノオト周りには緑の達人も多い!

 

(ちなみに、植物を育てるのが得意な人をグリーンフィンガー、枯らしてしまう人をグレーフィンガーというそうです)

 

休日の夕方、家族の定番の過ごし方は「お外のお部屋」で「ビールに枝豆」。アウトドア用のチェアに深く腰掛けて、ゆったりと家族の時間を楽しむ

 

……と、真っ先に相談したのは、森ノオトでの連載も好評な植木屋ユニット夫婦「モチダノソノ」の持田智彦さん・三貴子さん夫妻。以前、namaotoのプロデューサーの新谷竜輔さんの「遥光の家」を取材した時に、智彦さんの手がけた庭の端正な美しさに惹かれ、そこに三貴子さんの明るくやわらかい感性が掛け合わされたら、どんな素敵な庭になるのだろう、と妄想していたんですね。

 

三貴子さんも庭乃持田園の仕事をしながら、自身もガーデニングデザイナーとして活動の幅を広げたいと考えていたそうで、今年の春先にさっそく第1回目の打ち合わせをおこないました。

 

「夏場には緑陰を楽しみ、照りつける熱を緩和し、季節ごとに違う表情を見せて、食べられる作物を育てる楽しみを子どもたちが味わえて、太陽光発電もできて、ベランダを屋外リビングとして楽しめるような空間で、なおかつ手入れが簡単な庭がほしい!」

 

……などというムチャクチャ贅沢かつわがままなわたしの要望にも、「……が、がんばります!」とキュートな笑顔で対応してくれた三貴子さん。果たして、どんなプランが出てくるのか、楽しみで仕方のないわたしでした。

 

ゴールデンウィークのある日、家族で採寸に来てくれた持田ファミリー。プチトマトとあさつきと雑草(スベリヒユ)が繁茂しているプランターが雑然と置かれている

 

三貴子さんが最初に提示してくれた案は、「食べられる&季節を楽しむ♪ オーガニックガーデン」。キンカン、ヒメイチゴノキ、ゲッケイジュ、ブルーベリーなどを鉢植えで育て、ウッドフェンスには取り外し可能なプランターハンガーを吊るして好みのハーブを植えることができます。ベランダ奥のタイル状のものは昔ながらの土間や玄関土間に使われている「三和土(たたき)」。型枠に砂利と土と塩化マグネシウムを溶かしたものを流し込み、ひたすらたたいて固めるという、とても手間がかかるものです。

 

ここでいくつか出てきたポイントは、「集合住宅のベランダは共用部だから、取り外し可能な素材で構成しなければならない。三和土もその場で施工するのではなく敷くタイプにはできないか。ウッドフェンスも同様で軽く取り外しができること、排水溝や排水経路はふさがないこと」。

 

植物の生態にまったく詳しくないわたしは、「基本的に植物はお任せ」と言いながらも、見た目が好きなオリーブと、祖父の実家がある山形県米沢市のウコギの垣根が連なる武家屋敷がルーツなのでウコギをぜひ入れてほしいと要望しました。

 

三貴子さんによる最初のプラン。完成版よりもウッディ感が強いが、基本的な構成は変わらない

 

こうしたやりとりを経て、8月、ようやく施工が始まりました。動きやすい作業服に着替えた三貴子さんは重い荷物をせっせと4階まで運び入れ、植木職人・樹木医として日々活躍中の智彦さんはさすがの貫禄。時に厳しい言葉が飛び交う様子は、まさに現場特有の緊張感です。

 

工事の様子を見たい気持ちを抑えながら、その日、臨月に入ったばかりのわたしは妊婦検診へ……。主なき家で二人は朝から晩まで必死に作業したものの、一日ではすべて終わらない作業量でした。しかも主(わたし)はその日緊急入院になり、9日間帰ってこられず退院して2日後に出産というドタバタ劇。工事は中途な状態ながらも、ウッドデッキと土間空間、そして高低差のある植物が入った「お外のお部屋」は、夫と長女の大のお気に入りになりました。母が入院中も産後すぐで動けない時も、二人は風呂上がりの「ベランダビール&ベランダおやつ」を楽しみながら、仲良く過ごしていたようです。

 

出産前日、病院から戻ってきて長女とベランダでべったり過ごした時間は、わたしにとって忘れることのできない宝になった

 

産後6週間が経ち落ち着いたころ、最後の仕上げ工事に入りました。ウッドフェンスは智彦さんが手づくりした、竹の木舞をシュロの紐で編んだもの。明るく光を通し、かつアンシンメトリーな柄は、ほかのどこにもないオリジナルです。そこに、三貴子さんが開発したプラントハンガーに吊るされたハーブ3種が並び、和風テイストと可愛い遊び心が絶妙にマッチングしています。

 

「取り外し可能」という条件で再考してもらった三和土は、智彦さんが完成形をイメージしながら細かいパーツにわけた型枠をつくり、土をたたいてタイル状に仕上げ、現場に置くタイプになりました。よく見ると葉っぱの柄が! 細かい気づかいに感激です。夏場の暑い時に打ち水すると、土間は水分を蒸散して、ベランダの外気温が下がり、室内も涼しく感じられるように。

 

ウッドデッキでも同じ効果が得られ、コンクリートのベランダに直接日が当たるよりも熱を緩和し、さらにレッドシダーの独特の芳香がさわやかな空気をつくってくれました。ちなみにこの夏、家であまり蚊に刺されなかったのですが、レッドシダーには天然の防虫効果もあるそうです。

 

土間三和土タイルをつくっている智彦さん。これ、売れると思うよー。ベランダに敷くだけで夏の暑さを緩和でき、快適になった

 

我が家のベランダに新しく入った植物は、オリーブの木、ゲッケイジュの木、ブルーベリーの木、キンカンの木。おしゃれな鉢、そして二人のオリジナルウッドプランターに植えられて、イキイキしています。元々家にあったアロエもいい感じで馴染んでいます。オオバギボウシは別名「うるい」と言って、やわらかい葉は山形ではよく天ぷらにして食べます。夏の間、可憐な花を咲かせてくれました。わたしが出産で入院中、長女はブルーベリーとミニトマトを収穫しては持ってきて、病室で一緒に食べました。ウコギは山形でも置賜地方特有の植物なので、関東の気候に合うかどうか観察するために、今は持田家にあるそうです。山形では初夏のころ、新芽を食べるのです。ごはんに混ぜ込んだり、おひたしにしたり、最近はジェノベーゼ風にしてパスタと一緒に食べることも。

 

室外空間が豊かになると、目線も気持ちも外に向く。閉ざされた室内空間で過ごすよりも、外の自然と同居するほうが、断然ナチュラルな暮らしになる

 

和風庭園を得意とする智彦さんのテイストと、女性らしい軽やかで可愛らしい三貴子さんの感性が融合した我が家のベランダは、友達の間でも評判! ちょうど赤ちゃんに会いに多くの友達が訪れてくれるタイミングだったので、「わたしの家でもお願いしたい!」と、話題沸騰です。

 

これまで洗濯物を干したり、物置に荷物の出し入れをする程度で、単なる「外と内との緩衝地帯」だったベランダが、「家族で楽しい時間を過ごす」場所に変化したことは、我が家にとって大きな発見でした。朝は丹沢山系や富士山を眺めながら植物に水をやる。夜は空を見上げて月を眺めて星を数える。料理をする時にちょっとハーブがほしい時にもベランダに出る。確実にライフスタイルが変わり、「身近な自然が近くなった」のを実感しています。

 

持田智彦さん、三貴子さん、緑を楽しむ時間をありがとう!

Information

庭乃持田園

http://www.mochidaen.jp

 

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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