麻生区虹ヶ丘から早野聖地公園の広々とした墓地を抜けて、鉄町、寺家ふるさと村へと向かう道は緑も多く、お気に入りの散歩コースの一つ。早野で炭焼きがおこなわれていることは前からなんとなく噂に聞いてはいましたが、その場所はちょっと奥まっていて、また特別に探そうという気も起きなくて、こんなに近くにあったのに、今までずっと知らないまま過ごしてきました。
この里山は大部分が川崎市の所有で、炭焼き小屋を管理しているのは、早野聖地公園里山ボランティアの方々です。ボランティアといっても活動がはじまってから早16年、平均年齢約70歳、会員数約70名を擁する立派な団体で、退職後も元気な男性たち(女性もいます)が、次の世代にこの環境を残すため、荒れていた里山の手入れをし、畑仕事やシイタケの原木栽培をして、冬場には炭焼きをおこなってきたのだそうです。
現在麻生区となっている地域一帯で作られていた炭は「黒川炭」といって、質もよく、江戸、東京で販売されていました。しかし石油や石炭といった化石燃料が普及するにつれて炭づくりも廃れてしまいます。里山ボランティアでは使われないまま残っていた窯を補修しながら大切に守り、炭焼きの文化を今に伝えています。ほとんど素人の状態からはじめて、今も試行錯誤の連続だそうです。
炭焼きの際に出る煙から木酢液をつくったり、伐採した木で木道をつくったり、あるものでなんでも作ってしまうおじさんたちのエネルギーには脱帽です。炭や木酢液は、お彼岸の時期に販売したり、近所の提携先に配ったりして消費され、残った炭は畑に撒いたりオブジェにしたり、小規模ですがエネルギーや資源の地産地消が成り立っていて、嬉しくなってしまいます。
実は、今回取材のきっかけを与えてくれたのは、ウィズの森のマルシェや、Vege&Fork marketへの出店でもおなじみの「森の扉」野原典彦さん。現在は栃木県にお住まいですが、かつて4年間ほどこの里山保全の活動に参加されていたことがあり、ぜひ取材してみてはと、今回案内役をかって出てくださったのでした。
炭焼きは1月から2月にかけて、計5回ほどおこなわれます。
かなり過酷な労働で、熱い窯の中に入って炭を取り出す作業などは本当にきつかったと、野原さんは実感をこめて語っていました。材料となる原木の伐り出し作業でも、年配の方々についていくので精一杯だったそうです。
若い人はすぐ辞めてしまうから会員募集は積極的にはしないし、すぐには入れないようにしてるんです、と小泉さんはおっしゃっていましたが、この場所がとても気に入ってしまった私は、取材という形で、こちらの活動を年間通じて追ってみたい! と思いました。毎月第1と第3土曜日が活動日で、これからの季節は平日も誰かしら来ているそうなので、行ける時には立ちよって、ここの空気に馴染んでいきたいなと考えています。
3月1日におこなわれたNPO総会で、若い植木屋ユニット、モチダノソノのご夫婦が、今後の夢として「森をつくりたい」と語っていたのですが、すでにこうして地域で森づくりをおこなっている人々がいるのならば、参加しない手はありません! その活動のバトンを引き継いでいく気持ち(と体力も……)があれば、次代に残したい環境を自ら作っていくことができますね。
森ノオトを通じて、自然が大好きな人、本気で森づくりしたい気骨ある若い人々がここに集まったらきっと楽しいはず。興味を持たれた方、まずは散歩がてら訪れてみることをお勧めします。今は菜の花畑がとてもきれいで、運が良ければカワセミにも会えますよ。早野聖地公園の中の事務所を尋ねると、炭焼き小屋への行き方を教えてもらえます。
早野聖地公園里山ボランティア
<活動方針>
1、里山再生
2、炭焼き
3、農業体験
4、地域とのふれあい
<参加案内>
年会費1000円
活動時間9:45-15:00
入会申込は活動日に現地で直接
連絡先事務局
川崎市麻生区早野732 早野聖地公園事務所
電話 044-987-6120
FAX 044-986-0813
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