昔ながらの製法で学ぶ、七国山の菜種油
うららかな春の日、町田市七国山周辺をお散歩していると……菜の花畑に通じる坂道にある「ふるさと農具館」で、七国山で収穫された菜種のみを使い、月に一回油しぼりをするという看板を見つけました。こんなに近くで菜種油がつくられていたことに驚き、嬉しく、お料理やお菓子づくりに愛用している菜種油ができあがるまでの工程をぜひ見てみたいと思い、伺ってきました。

まず、七国山(ななくにやま)についてご紹介します。

七国山は、町田市のちょうど中心にあり、標高128メートルほどの山の頂上付近から、かつては相模、甲斐、伊豆、駿河、信濃、上野、下野の7の国を見渡せたことから名づけられたそうです。

周囲には緑豊かな自然が息づく丘陵地帯が広がり、耳を澄ませば、何種類もの鳥のさえずりが聞こえ、ゆっくりお散歩していると全身で風を感じることも……。

そんな心地よい丘に、地元農家の「七国山ふれあいの里組合」のみなさんが、訪れる人々に昔ながらの農ある風景を楽しんでもらおうと、丹精込めて育てている広大な菜の花畑があります。

今回は、この菜の花畑で採れた「七国山産・菜種油しぼり」をフォトレポートでお届けしますね。

 

菜の花の見頃は天候により多少のずれはありますが、4月下旬から5月上旬。この日は風に揺れ甘い香りが漂い、ところどころで蜂が蜜を吸っていた

 

農家さんのご好意でいただいた、若い菜の花のサヤ。そのサヤを開いてみると……宝石みたいに美しい種

 

一回の工程で使われる菜種の量はおよそ15kg。15kgから5リットルの菜種油がとれる

 

菜種を焙烙(ほうろく。素焼きの土製の平たい炒り鍋。火のあたりがやわらかいので豆、胡麻、お茶などをいるのに適する)で羽根を回して焦げないようにじっくりと焙煎。煎り加減が一番難しいのだそう。経験と勘がものをいう職人技

 

煎った菜種を圧変器(ローラー)でつぶし、集めている

 

つぶした菜種はきれいな黄色

 

つぶしたものをボイラーで蒸し、蒸し上がったら4人のチームワークとスピード勝負

 

熱いものをじょうごに入れ、マットを敷いた桶に蒸した菜種を棒で押し込む

 

最後にマットで包む。熱い中での重労働

 

蒸したものを圧搾機でしぼる。菜種の良い香りが漂う。伝統的製法・圧搾法

 

油を絞った後の油かすの形が丸くなっているので、「玉締め」・「玉絞り」という。この油かすは良質な肥料になる。まさに循環

 

搾った後、数日静置・沈殿させてから、上澄みの油をガーゼとさらしでゆっくりとろ過し、不純物を沈殿させる

 

柔らかい光が差し込むお部屋で、一本一本手作業で瓶詰めした菜種油に不純物やゴミ、破損がないかなどの検品後、瓶を丁寧に拭き、農家の方がデザインしたオリジナルのラベルを貼る。なんて美しい黄金色……

 

伝統製法の菜種油しぼり、いかがでしたか?

国産で、しかも地元産、さらに丁寧につくられた一番搾り。貴重で贅沢な油であり、その香りと滴る油の輝きに、うっとりした一日でした。

今回取材した七国山の「なたね油しぼり」は、ふるさと農具館で毎月1回おこなわれています。

また、七国山周辺には鎌倉古道や里山、谷戸の風景が残り、町田市では散策マップも作っています。それを手に、秋には可憐な白いお花が広がる美しい蕎麦畑にも、ぜひ足を運んでみてくださいね。

Information

ふるさと農具館

〒195-0063

東京都町田市野津田町2288

TEL/FAX 042-736-8380

営業時間/9:30-16:30(11月-1月は16時まで)

定休日/月曜日(祝日に当たる時はその翌日)

駐車場なし/薬師池公園駐車場、または神奈川中央交通(バス)薬師ヶ丘バス停から徒歩約10分

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この記事を書いた人
おおかわらあさこライター卒業生
自然のもの、手仕事が放つ光を切り取り、写真におさめるフォトグラファー。ピュアでやわらかな感性から生まれる作品に、とびきり繊細でやさしい言葉をふわりと添えるフォトレポートが多くのファンを生んでいる。植物が好きで、フレッシュな姿もドライな様子も載せた植物図鑑をつくるのが夢。
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