山と坂と森田んぼ、歴史と未来をつなぐ「みやまえ人(びと)」が輝く!
しみ抜きが上手なクリーニング屋さん、メロン農家、かっぱ頭のパフォーマーさん、1000年以上の歴史ある古刹、さくら祭の人間ジュークボックス、草笛名人、スリランカ語をあやつるご住職、太鼓の達人……こんなに多彩な人のるつぼ、宮前区。まちの宝を発掘する「こんなところに!みやまえ人」のワークショップをレポートします。

8月31日のワークショップで挨拶する宮前まち倶楽部代表の辻麻里子さん。手前が笠原千恵子さん。宮前まち倶楽部の名付け親は、たまプラーザの次世代郊外まちづくりをサポートしてくださっている東京大学の小泉秀樹先生というから驚いた! 

 

『たまプラーザの100人 〜たまプラーザの人がたまプラーザの本を作っちゃいました〜』の出版から1年、わたしはこのプロジェクトでつちかった「本づくり=まちづくり」のノウハウを、横展開していければいいなあと思っていました。森ノオトで市民メディアを運営して、地域の主役は住んでいる人そのもの、大手メディアが取り上げきれない小さな活動も思いも、同じ地域の仲間ならばそこに光を当て、価値を伝えることができる。取材する側もされる側も、地域の主役になれる仕組みが、メディアの運営にあると感じていました。

『たまプラーザの100人』では、印刷資金の調達のためにクラウドファンディングに挑戦しました。広く多くの方から資金を集めるのは並大抵のことではありません。毎日のように「本づくり=まちづくり」の可能性を伝えるなかで、「私のまちでもやりたい!」と手を挙げてくださったのが、宮前区に住む笠原千恵子さんです。笠原さんとの出会いは、森ノオトで映画『よみがえりのレシピ』を上映した時。「子どもたちの未来に残したい、今足元にある大切なふるさと」をという思いから、宮前まち倶楽部の仲間たちを説得して、クラウドファンディングの「あなたのまちでも!本づくりワークショップ開催コース」のプレゼントに応募して、バトンを引き継いでくださったのです。

8月31日のワークショップでは予想を超える人の集まりに、急きょ会場を変更して対応した。参加する人の多彩さに「みやまえ人」の底力を見た

 

2015年に入ってから、笠原さんを窓口に何度も打ち合わせを重ねてきました。宮前まち倶楽部のメンバーお一人おひとりと出会うたびに、まちの未来を思う熱い志があることを知り、人の数だけ、地域の数だけ、美しい花が咲いていると感じました。

 

8月31日、ついに「こんなところに!みやまえ人(びと)」のワークショップが開催されました。参加メンバーは予想をはるかに越える40人超。森ノオトからは、『たま100』メンバーの遠藤聖子さん、清水朋子さん、お隣高津区から東海林更央莉さんが参加。参加者の皆さんの熱気に「みやまえ、すごい!」と、みんなびっくり。何がすごいって、人の名前が出てくる出てくる。そして青葉区と少し違うのは、まちの歴史の深さでしょうか。

 

宮前区は1300年の歴史がある古刹「影向寺(ようごうじ)」があり、聖徳太子の時代から「橘樹(たちばな)郡」と呼ばれるこの地域の郡都だったそうです。そういえば、以前東海林さんが取材した「たちばな」の農地も、宮前区と高津区に広がる川崎の顔の一つですね。メロン、枝もも、はぐるま農園のハーブ、梨、農園フェスの小泉農園さんなど、有名農家さんの名前もずらり。忘れてはならないのは映画『オオカミの護符』の制作者・ささらプロダクションの小倉美恵子さん。宮前区に伝わる山岳信仰の文化に、わたしも感激したものです。

 

国際交流、アート、地域メディア、著名人、商店街の歴史……たくさんのキーワードが生まれたなかで、一同爆笑したのが「右手に鎌、左手にビール」という、地域活動を楽しみながら、地域を耕す宮前区らしさがあらわす言葉。「宮前区は多彩な人が多くて、さまざまな地域活動が点在しているが、山坂が多くつながりにくい」という課題も見えて、ではいかに「地域の宝を発見しつなぐ」のか、その次のステップに進もうと動き始めたのが今回のプロジェクトでもあるのだと思いました。

 

イキイキとグループファシリテーションをする遠藤聖子さん(中央)。

 

9月14日には、実際に取材をし、記事を書くためのノウハウを伝えるワークショップでした。この日は初回に参加した人限定のクローズドな会。北原が森ノオトと『たまプラーザの100人』で経験した、記事の書き方、アポイントの取り方やインタビュー術などをじっくりみっちりお伝えしました。

 

参加者同士のペアインタビューでは、お互いの話に耳を傾け、「この二人」だからこそ生まれる一期一会の会話を楽しんでいただきました。

 

「二人の息子が結婚して、人生の節目でもあり、思い切って参加した。皆さんの活躍や問題意識に刺激を受けた。メディアのつくられ方がわかり、今後、雑誌やテレビを見る目が変わるかも」

 

「地元で地域情報を発信しており、地域のことを知っているつもりでいたが、改めてこんなに素晴らしい人が宮前区にいることを知り驚いた!」

 

「ワークショップに参加したことで、地域につながりができた」

 

……などの感想が集まり、宮前まち倶楽部の辻麻里子さんは「これだけのみやまえ人が集まり、参加してくださった。これをどう形にしていくか、責任を感じる反面、とてもワクワクしています」と、充実した面持ちで語りました。

 

そして、森ノオトと宮前区をつないでくださった笠原さんは、最後に声を詰まらせながら「子どものふるさとを残したいという気持ちでここまできた。この宝を、何とかしたい!」と語り、その言葉にわたしは「たまプラーザでがんばってきたことが、横に広がって、自立したんだなあ」と、安堵の気持ちでいっぱいになりました。同時に、『たまプラーザの100人』が一区切りついたのだと実感しました。

 

「山・丘・坂」「歴史」「農」などのキーワードが多く見られたグループ発表。お隣高津区や青葉区、都筑区からの参加者もいた

 

たくさん集まった「みやまえ人」は、今後、宮前まち倶楽部のホームページで発信を始め、いずれ本の形で伝えていくことを目指していくとのことです。

 

わたし自身も2回のワークショップと、打ち合わせで出会った、たくさんの素敵なみやまえ人にすっかり魅せられました。人は土地をつくる。宮前区が大好きになったわたし、これからも宮前まち倶楽部と、ここで出会った皆さんの活動を応援していきます!

9月14日の取材・編集術の講演は、少人数で内容濃く、集中した時間だった。ペアインタビューでは参加者同士、お互いを深く知る時間に

Information

宮前まち倶楽部

メール info@machi-club.net

HP http://machi-club.net

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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