(text&photo:ながたに睦子)
私の住む街から電車で一駅の小田急線「玉川学園前駅」。緑あふれる広大な敷地内に幼稚園から大学まである玉川学園が駅の北東に広がり、東西には線路と平行に走る道沿いに、昔ながらの様相を残すのどかな商店街が広がります。
ある日、その玉川学園にある一軒のカフェのホームページを眺めていた私。そこに「玉川つばめ通信」なるフリーペーパーが紹介されているのを見つけました。可愛らしい題字やイラスト、二色刷りのちょっとレトロなデザイン。フリーペーパー収集が趣味の私には、すべてがストライク! この素敵なフリーペーパーはいったい誰が作っているのだろうと興味津々。そこでクレジットを見ると、なんとそこには、以前に私がイラストの仕事でご一緒したことのある、フリーライター宇野津暢子さんのお名前が。これはなにかのご縁に違いない! と確信し、さっそく宇野津さんに取材を申し込みました。
宇野津さんと私が再会するのは5年ぶりのこと。以前はイラストレーターとライターという形でお仕事をご一緒しましたが、今回は私がライターとして宇野津さんに取材するので、ちょっぴり緊張です。同じフリーの編集者として活動する森ノオトの北原まどか編集長も、宇野津さんの話をすると興味をもってくれ、取材に同席してくれました。
「2015年の1月に、玉川学園にある二つの商店会から頼まれて、『玉川学園商店街ガイドブック』と『玉川学園商店街ガイドマップ』を同時に発行しました。そのときにたくさんのお店を取材して、玉川学園の魅力を再認識したのです。おかげさまで、そのガイドブックは好評で、その熱が冷めやらないうちにと、それから3カ月後に「玉川つばめ通信」を発行することにしたんです」と創刊のきっかけを語る宇野津さん。
「商店街のガイドブックの仕事は楽しかったのですが、商店街加盟店を紹介するのが原則なので、取材できないお店もあるなど、いろいろと制約もありました。なので、つばめ通信では、すべて自分の好きなように、自分の出来るペースで始めてみようと思ったのです」
今ではすっかり地元・玉川学園LOVE! な宇野津さんですが、新卒で大手出版社に就職して忙しく働き、東京暮らしに憧れがあり、それを満喫していた時期もあったそうです。その後、結婚、子育てを機に地元に戻ってきたものの、気持ちはしばらく多摩川を越えた先の「東京」に向いたままだったといいます。しかし、子育てに困ったとき、震災のときなどに心の支えになったのは、ご家族や、近所のママ友達でした。そこで、どんどん地元に気持ちが向いていった宇野津さん。「東京」ではなく、自分の住むこのまちで楽しいことを見つけよう! このまちでなにか新しいことを始めようと、そんな気持ちが「玉川つばめ通信」を発行するきっかけにもなったそうです。
「玉川つばめ通信」には、「玉川学園周辺で見つけた! 気になるお店訪問」「わがまちでお店体験!」「個人商店はまちの宝だ!」「まちのギモンにズームイン!」など、ちょっとユーモラスで、ついつい記事を読みたくなるコピーが並びます。
私が特に気になったのは、「わがまちでお店体験!」。「行ってみた! やってみた! 働いてみた!」というキャッチの通り、宇野津さんが気になるお店に「明日働かせてください!」と体当たり取材をするというもの。実際に宇野津さんがお店で一日働いた体験をリアルに綴り、そのお店の魅力も余さず紹介されています。宇野津さんと店主の絶妙な距離感のやりとりの面白さも魅力でした!
その他にも、「まちの名品、教えます」と、宇野津さんの目にかなった知られざる名品を紹介していたり、小さい頃からこの街で育った宇野津さんならではの「玉川学園の思い出」という連載があったりと、誌面からは宇野津さんの、地元、玉川学園への愛があふれていて、読んでいると思わず笑顔になります。
ところで、フリーペーパーを一人で取材、編集、発行までするのにかかるコストはどうしているのだろう……? とちょっと気になり宇野津さんに尋ねてみました。
現在「玉川つばめ通信」は、広告などはとらず、100部1000円で、商店主や個人に購入してもらい、そこからまちの人々に届けられるという形をとっているとのこと。発行を重ねるごとに地域に浸透し、今では二つの商店街と二つの団体が協賛してくれているそうです。
誌面には、「玉川つばめ通信が置いてある場所」として、趣旨に賛同してくれたお店が掲載されています。個人で購入してつばめ通信を広めてくれる方もいるそうです。その数はどんどん増えているそうです。
地元に目を向ける、地元を愛する、地元の魅力あふれるモノ、コト、ヒトを紹介する……、「森ノオト」と「玉川つばめ通信」は、WEBと紙媒体の違いはあれど、地域発信型の小さなメディアとして、目指す方向性はとても似ているのだと気付きました。
森ノオトで記事を書いたあと、嬉しいなあと思うのは、取材先の方から「あの記事のおかげで問い合わせやお客さんが増えました」など、ダイレクトに声を聞けること。「玉川つばめ通信」にも、誌面を読んですぐに反応を返してくれるまちの人々のことが書かれています。情報過多の世の中にあって、すぐに足を運んで確かめられる、気になる人にすぐ会える、この軽やかさがまちの通信のよさだと、宇野津さんは力説します。
これからも、自分の育った地元のまちを活性化させたい、玉川学園の魅力をもっとたくさんの人に伝えたいという宇野津さん。これからどのようなお店や人が紹介されていくのか、「玉川つばめ通信」の発行が楽しみでなりません。そしてまどか編集長と宇野津さんは、地域を愛するメディアの発信者同士、いつか協力して何かを出来たら良いですね、とそんな約束も交わし、いつか「森ノオト」と「玉川つばめ通信」のコラボが叶う日も来るかも? という楽しみもできたのでした。
この記事を読んで、「玉川つばめ通信」や玉川学園商店街に興味をもった方に朗報です! 11月で協賛店が30店舗を超えたことを記念して、12月5日(土)に、「つばめ感謝祭・冬」の開催が決定しました。これまでに「玉川つばめ通信」で取材したお店が出店したり、紹介した名品の販売や、宇野津さんが日頃からお世話になっている方が手作り品で出店するそうです(実は我が夫も、「みなづき珈琲」として、自家焙煎ドリップコーヒー屋を出店します)。
初めての試みなので、どれくらいお客さんが来るのかちょっと不安……という宇野津さん。玉川学園商店街に興味をもった方や、ご近所の方、ぜひお越しくださいね!
玉川つばめ感謝祭・冬
2015年12月5日(土) 10:00-14:00
会場:玉川学園商店街ポケットパーク(町田市玉川学園2-6)
小田急線玉川学園前駅北口下車徒歩5分
「玉川つばめ通信」へのお問い合わせ先
【玉川つばめ通信編集室】
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