私が「セントポーリア こどもの国店」を営む染谷暁子さんとはじめて出会ったのは、共通の知人が主催するチャリティー・バザーでした。お互いに出店者として参加しており、毎回染谷さんが販売するお弁当をとても楽しみにしていました。気が付くと、私の家族たちもその味の大ファンとなり、それ以来、車で20分ほど離れたセントポーリアへ時々通っています。
セントポーリアの味をひと言でいうと、家庭的で、食べるとほっとする味。昔、母がつくってくれた料理やその雰囲気がよみがえるような感覚を覚えます。イタリアンやフレンチといったジャンルの店では、決して味わうことができないこの味の源はいったい何だろう? この疑問の答えを探るために、友人でもある染谷さんにいろいろと話を伺ってきました。
「セントポーリア」のはじまりは古く、染谷さんのご主人である染谷信幸さんのお母様が1978年に藤が丘に店をオープンして以来、場所を代えて受け継がれています。その間に、当時店でアルバイトをしていた染谷さんとご主人が出会い、結婚後、新たにこどもの国で店をスタートしました。
現在は、染谷さんが料理と雑貨の仕入を担当し、ご主人がケーキや焼き菓子類の製造を担当しています。また、数年前からは娘さんがつくるアイシング・クッキーも店に並ぶようになり、ご家族で店をつくり上げているのがよく分かります。
では、染谷さんの味の源は? やはり、小さい頃からお母さんが料理をするところを横で眺めているのが好きだったそうです。5人兄妹の大家族のなかで育ち、揚げ物や餃子などは必然的にたくさんつくるため、お手伝いもよくしていたとのこと。今では、さまざまな場所で“おいしい!”と思ったら、その記憶を頼りに、家で再現することが好きだといいます。
「私の料理は子どもにつくってきた料理の延長だから……。まさに、家庭料理! レシピ本もほとんど見ないし、何しろ想像してつくるのが好きなの。仕事上、大量につくることも多いのだけど、流れ作業のようにはしたくない。自分がその味に出会って感動した時のように、その人にとってはその時に出会ったたったひとつの料理であって、感動するものであってほしい」
昔、お母さんから学んだ記憶、自分の子どもたちへつくってきた料理の記憶、そして、ご主人のお母様がつくり出したセントポーリア代々の味(ソースやタレなど)に、染谷さんの食への探求心や思いがあって、今の「セントポーリア」をつくり出している気がします。
セントポーリアでは、洋食、ケーキ、雑貨の販売以外にもお弁当や総菜の注文も受けています。また、前日までに家庭のお弁当箱を持参すればそこに詰めて渡してくれるといったサービスもあります。これは、仕事や病気など様々な理由で子どもにお弁当をつくることができないお母さんのために始めたことで、以前にお客様からリクエストがあり、そのまま続けているとのこと。何でも相談してもらえれば、できる限りそれに応えていきたい、ととても心強い言葉が返ってきました。
しかし、こんなにもたくさんのことを続けるのは大変ではないのでしょうか。意外にも、こんな答えが返ってきました。
「まったく大変ではないですよ! もちろん、自由な時間をもっと欲しいと思うけど、先のことはあまり深く考えず、目の前のことを一つひとつクリアしていくから。逆に、心配することの方がストレス。自分にとって嫌なことは聞こえないフリをする、……というより聞こえないしね! 」
と、朗らかに笑いながら話す染谷さん。ご本人いわく、自分はいろいろとアイデアを考え、いいなと感じたことはすぐに導入するタイプで、それを陰で支えるのがご主人の存在だといいます。導入したことをきちんと着実に続けていけるのはご主人のおかげであり、その存在はとても大きいようです。
染谷さんのこうした大らかな性格や人柄も、料理や店の雰囲気にたっぷりと表れています。
昔から料理や家の中でする作業が大好きだったという染谷さんですが、手芸に関してもかなりの腕前。次のアイデアは、手芸カフェの開催や大好きなワインの種類を少しずつ増やして、おつまみセットなどができたらいいな、と話していました。きっと、そのアイデアが形になる日はそう遠くはないはず。楽しみです。
セントポーリアの愛情たっぷりのあったか料理は、愛情たっぷりのご家族から生まれた賜物でした!
セントポーリア こどもの国店
住所:横浜市青葉区奈良5丁目16-1
TEL:045-961-4768
営業時間:10:00-20:00
定休日:火曜日
Facebook:セントポーリア こどもの国店
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