まちの陽だまり 井土ヶ谷アーバンデザインセンター
枯れ木に花を咲かせるように、さみしかった空き家に人が集まり、賑やかな声が聞こえてくる……。そこから広がっていくのは、どんな景色でしょうか? 今年1月30日にオープンした、話題の井土ヶ谷アーバンセンターを訪ねてきました。

井土ヶ谷は、横浜市南区にある小さなまちです。

大岡川を挟んで、北に京急線、南に市営地下鉄ブルーラインが東西に走っています。最寄駅は京浜急行線の井土ヶ谷駅と、横浜市営地下鉄線ブルーラインの蒔田駅。

このまちにできた新しい地域交流の場が井土ヶ谷アーバンデザインセンター(以下UDCIと表記)。「公」と「民」が手を取り合ってつくられた、空き家を活用した地域の交流拠点です。

 

広々とした空間が広がっている

 

ここで定期的に行われているのが、地元を盛り上げたい、ここで何か仕掛けたいと思っている人たちが集まる「井戸ガヤ会議」。そこからはじまったことの一つに、本を持ち寄る「まちライブラリー」があります。その他、さまざまな団体が話し合いの場として、あるいはイベントスペースとして利用しはじめています。南区在住の森ノオトライター・船本由佳さんも井戸ガヤ会議に参加したことのある一人。家の近くなので、いずれ何か企画してみたいと話していました。

 

こちらの壁では、住まいに関する困りごとが10件集まったら出張工事をするサービスを提案。まだ依頼はないというが、最初の注文は何だろう? 誰からかな? と、気になる!

 

 

UDCIの管理を請け負うのは、株式会社太陽住建です。「公」の横浜市住宅供給公社が持っている空き家を、公社のかかげる「暮らし再生プロジェクト」のもと、「民」の太陽住建が企画運営を担う形をとっています。上に集合住宅のある建物の一階部分が空き家になっていたのを利用して、手前の部屋が会社の事務所、奥の部屋がオープンスペース「おひさまひろば」となっています。昨年の秋にこの話をうけてから、猛スピードで準備し、ちょうど手狭になっていた磯子区の事務所ごと思い切って移転してきたのだそうです。

 

もちろん太陽光システムも完備。室内置き、壁掛けのできるコンパクトなパワーコンディショナーと蓄電池のセットは、長瀬産業と村田製作所が開発した最新のもの! 今は実験的に室内の半分の電気を賄っている

 

蓄電池を室内置きできる理由の一つ、熱くならないというので触ってみたら本当でした! 自宅でオフグリッドもできてしまうが、系統につないでおいて、災害時に自家消費に自動で切り替える機能もついている

 

太陽住建は、現在、太陽光発電システムの施工を中心にリフォームや外構工事などを行っています。以前とりあげた、たまエンパワー株式会社とすすめている「DiO」で、お客さん参加型、みんなで太陽光パネルを取り付ける時の、施工監督を担う会社でもあります。もともとは、米軍基地周辺の防音リフォーム工事を主に請け負っていましたが、そこから派生して一般住宅やビル等の太陽光発電事業も始めることになりました。

 

太陽住建会長の河原英信さんは、5人のお子さんと4人のお孫さん、総勢13人の大家族で暮らしていることでも有名! ご長男の河原勇輝さんが社長をつとめている

 

「工事店というのは、どうしても下請けという位置付けで、実際の現場では、お客さんの近くにいるのに遠いというジレンマがありました。ですが、ある時、現場のご近所の方で、うちの職人の仕事や態度を見て『あの人たちに頼みたい』と工事を発注してくれる人がいたんです。その仕事が大きな転機となりました」と語る河原さん。

 

自分たちのファンをつくっていくという方向に、職人たちの意識を高めるために、何かされているのですか? と質問すると「月一回のお客様会議で、どういうことをして感動してもらったかを発表する時間がある」との答えが返ってきました。

 

地域貢献事業にも熱心で、社長の河原勇輝さんは、グリーンバードというまちの清掃活動ネットワークの代表の一人です。また、今まで行った太陽光発電の事業でも、福祉作業所の入所者と一緒にソーラーシステムの取り付け工事をしたりと、目先の利益追求だけではない価値のある事業をしようと努力しています。そうした姿勢が、今回のUDCIの管理者に声がけされた理由でもあるのでしょう。現在、ここだけでなく他の空き家を一部リフォームして開かれた場にしていくプロジェクトが始まっています。

 

今後は、本業自体を社会貢献とする仕事をしていきたいと語る河原さんからは、UDCIを地域の陽だまりのような場に! という意気込みが伝わってきました。

 

最初は太陽光発電システムの施工会社がアーバンデザインセンターを運営?! と異色のコラボ感を実はちょっと感じていましたが、考えてみれば、お客様を大切にすることを拡大解釈すると「地域のみんなが大切」に通じます。ここを起点に、これからの豊かな社会や地域をどうデザインしていくのか、誠実で綿密な計画のもとに、無理のない事業がうまれ、継続、発展していくといいなと思いました。

 

主婦と地域、生活者の目線と行政や企業をつないできた森ノオトの経験は、UDCIの役に立つかもしれないし、環境配慮型、エコロジーの視点はぜひ取り込んでほしいとも感じました。

 

入り口付近、来場者の手によって増えていく桜の花

 

この桜のイメージもあったのか、記事を書こうと思った時に、ふと、花咲かじいさんのお話を思い出しました。改めて、昔話を読んでみると、人の成功の表面だけ真似した悪いおじいさんは、さんざんな目にあって最後、殿様から牢屋に入れられてしまいます。(まんが日本昔ばなしデータベースを参照)

 

逃げてきた子犬をかわいがり、その助言にしたがって小判を手に入れ、なきがらを丁寧に埋葬し……、最後には枯れ木に花を咲かせたやさしいおじいさんの行動に、まちの発展のためのヒントが隠されているかもしれません。

 

 

Information

株式会社太陽住建

http://www.taiyojyuken.jp

住所:神奈川県横浜市南区井土ヶ谷南町27-1

(井土ヶ谷アーバンデザインセンターも同住所)

TEL 0120-460-025

 

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~講演とワークショップ~

日時:2017年6月16日(金)

DiO設置体験ワークショップ:16:00-18:00

講演:18:30~20:30

参加費:ワークショップ・講演通しで参加2000円

ワークショップのみ1000円

講演のみ1500円(市民電力連絡会会員は1000円)

会場:井土ヶ谷アーバンデザインセンター

 

主催:NPO法人市民電力連絡会

申し込み・問い合わせ ppn2014info@gmail.com

申し込みフォームから http://peoplespowernetwork.jimdo.com/kouza/

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この記事を書いた人
梅原昭子コミュニティデザイン事業部マネージャー/ライター
引き算の編集が好きです。できないこと、やりたくないことが多過ぎて消去法で生きています。徒歩半径2キロ圏内くらいでほぼ満ち足りる暮らしへの憧れと、地球上の面白い所どこでもぶらりと行ける軽さとに憧れます。人間よりも植物や動物など異種から好かれる方が格上と思っている節があります。
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