(text&photo:ながたに睦子)
小田急線の玉川学園前駅の北口を降り、左右の商店街を眺めながらまっすぐ歩いていくと、その一番端っこにひっそりと灯りをともしているのが
「HUTTE」です。
HUTTEは、藤川悟さん、千恵さん夫妻によって営まれています。この日、厨房で忙しく働く店主の悟さんに代わって、奥さまの千恵さんが取材に応じてくれました。
HUTTEがオープンしたのは、2014年夏のこと。その前には千恵さんが、町田市にある薬師池公園の近くで、自宅の一部をカフェとしてオープンしていた期間がありました。その時の名前は「NATURAL CAFE 橙(だいだい)」。千恵さんのお母様が以前に相模原市で営んでいた「Orange」という飲食店をたたむことになり、そのお店を手伝っていた千恵さんは、そのまま名前を引き継ごうと考え、「Orange」を和名にして「橙」はどうかな? と思いつきました。また「橙」には「代々続く」などの縁起の良い意味もあることも気に入り、新しくオープンするカフェの名前に決めたそうです。
実は私、この「NATURAL CAFE 橙」を偶然にも訪れたことがありました。こだわりのインテリアが落ち着き、天然酵母のパンや素材にこだわった野菜中心のランチが食べられる、とても素敵なカフェでしたが、3年ほどの営業を経て「橙」は惜しまれつつ一時休業。その後、お休みを経て玉川学園で再開されたのが、「HUTTE」なのでした。
もともと、HUTTEの場所には「Yuge」という素敵な雑貨屋さんがありました(現在はHUTTEの隣で営業中)。「Yuge」のオーナーと「橙」時代から親交があった千恵さんは、「橙」の休業中に、「隣の店舗が空いたから引っ越して来ない?」と誘いを受けます。「そろそろカフェを再開したいなあ」と考えていた千恵さんが悟さんにその話をすると、当時は別の飲食店で働いていた悟さんも、「自分も一緒にやりたい」と言い、二人で新しいカフェをオープンすることを決めます。
ですが、すんなりオープンとはいきませんでした。空き店舗だった場所にはキッチン設備がなく、厨房設備をつけるには費用もかかり、一度はオープンをあきらめます。そんな時、キッチン設備を備えていた「Yuge」のオーナーから「それならうちと場所を変わってもいいよ」と嬉しい申し出があり、2014年の夏、玉川学園に「HUTTE」がオープンしました。
店名を「橙」から「HUTTE」へ変えた理由を、千恵さんに訪ねました。
「もともと私は登山が好きで、『橙』時代には休みの日に、夫も連れてよく山を登っていたんです。登山の後にいつも、山を降りたあとに余韻に浸れるカフェがあったらいいなあと思っていたのですが、なかなかそういうお店がなくて。それなら自分でそんなお店をやろうと、店名をドイツ語で「山小屋」という意味のある、「HUTTE」にしました」(千恵さん)
千恵さんは、外見はとてもふんわりとした可愛らしい女性なのですが、意外にも地元の山岳会に入るくらいの本格的な登山やアウトドア好き。現在は、ご近所のお店仲間たちも誘って、近郊の山に出かけているそう。
HUTTEの本棚には、登山以外にも、暮らし、食べ物、エッセイなど、コーヒーを飲みながら、じっくり読書をするのにぴったりな本が並んでいます。千恵さんの好みで時々本の入れ替えがあるのですが、私はHUTTEに来るたびに、真っ先に本棚を覗きます
HUTTEに置いてある雑貨や本など、インテリアに関するものは、全て千恵さんのセレクトです。イベント出店で出会ったり、陶器市で惚れ込んだ作家さんのものなどを置くことが多いそうです。
この日、厨房で忙しく働いていた店主の悟さんは、HUTTEで提供される料理やデザートなど、全てを担当しています。千恵さんがメニューを提案すると、悟さんがそれを形にしてくれるのです。
以前は、「HUTTE」を悟さんに任せ、千恵さんは別の場所で仕事をしていたこともあったのですが、千恵さんが退いたあとは、なんとなく、お店のバランスが崩れてしまったそうです。周りからの助言もあり、千恵さんは仕事を辞め、HUTTEに戻ってきました。「やはり二人揃って、お互いが支え合ってのHUTTEなんだろうなあと思います」と笑顔で話してくれました。
「『HUTTE』で使う素材は、オーガニックなどにこだわってはいないですが、できるだけ地元の素材を使うことを心がけています。近くの野菜直売所などに仕入れにいって、ドレッシングなどもできるだけ手作りを心がけています」と千恵さん。
HUTTEでは、毎月第4日曜日に、同じく玉川学園でお店を出す友人たちと始めた「ニチヨウツキイチ」というイベントも行っています。こちらでは、普段お店で出していないお惣菜なども出品しているそうです。
「今はHUTTEの店先を使って仲間うちだけでこぢんまりと行っていますが、少しずつ商店街の中にも協力してくれる人たちが出てきました。いずれは玉川学園の商店街全体が賑わうような『ニチヨウツキイチ』ができると良いなあと思っています」(千恵さん)
最後に、千恵さんにHUTTEのこれからについて伺いました。
「今は二人でできることを無理しないでやっていこうと思っていますが、いつか、もう少し緑の多い場所で、一軒家を改装したような本当に山小屋のような『HUTTE』ができるといいなあと思い描いています」(千恵さん)
「わあ! それは素敵ですね!」と思わず声をあげた私に、千恵さんは続けました。
「そこまではまだ時間がかかりそうですが、まずはこのお店を、もっと山好きの人にも知ってもらえたらなと思っています。小田急線近郊の登山帰りの人が、ふらっと玉川学園に降りて、ここで登山の思い出話をしてくれたら嬉しいなあ」
そう言って穏やかに笑う千恵さんの話を聞いていると、HUTTEのアンティークのランプが山小屋のように暖かく店内を照らす中、登山好きの老若男女が登山話に花をさかせている絵が、私の目に浮かびました。
私の大好きなカフェ、HUTTE。これから雨が多くなる季節ですが、HUTTEを訪れて美味しいランチを食べたあとに、本をじっくり選び、ゆったりと読書にふける過ごし方など、いかがでしょうか? 登山に興味があったり、これから登山を始めたい方などにも、HUTTEの本棚が案内係になるかもしれませんね。
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HUTTE
東京都町田市玉川学園1-4-33-103
090-7236-5953
11:30~22:00(16:00~18:00は準備中)
日曜は11:30~16:00まで
定休日 : その他臨時休業あり
変更がある時は、ブログにてお知らせします。
facebook https://www.facebook.com/machidahutte/
BLOG huttee.exblog.jp
ニチヨウツキイチ
毎月第四日曜日、HUTTEや協力店の店先で開催中。
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