わたしに、地球に、心地よい、手作りコスメのすすめ
【2018年ライター養成講座修了レポート】ほとんど毎日、肌に使う化粧品。みなさんは、どんなポイントで選んでいますか? 「子どもやペットを抱き上げたとき、顔に触れられたり、舐められたりしても、心配しなくてもよい、使っていて心地よいものを知ってほしくて」。そんな想いでコスメ作りをしている萩倉志保さん。ご自身の豊富な経験を生かして、親身になってアドバイスをしてくれます。

萩倉志保さんが手作りするコスメは、化粧水や美容液、シャンプーなどのスキンケアアイテムから、ファンデーション、チークにリップ、アイシャドウなどメイク用品に至るまで、さまざまです。普段は、整形外科の看護師としてお勤めの志保さん。その傍ら、川崎市の武蔵小杉にある自宅サロンや、各所イベント会場で、コスメを手作りするワークショップを主宰しています。ワークショップで作るコスメは、会場の規模やお客様からのリクエストなど、そのときどきの状況に応じて、決めているそうです。

 

ご自宅の一室を開放して行われるワークショップ。少人数制で、和気あいあいと会話も弾みます。志保さんのもつざっくばらんな雰囲気が、アットホームな空間を作り出しています

 

 

わたしは、現在、志保さんに教わりながら作ったコスメを使っています。もともと、香りやベタつきが苦手で、お化粧することを避けてきたわたしの肌にも、手作りコスメはすんなり馴染みます。その原料は、ホホバオイルに、ココナツオイル、月桃やカモミールの蒸留水、みかんの花から採取されたはちみつ、自家製のチンキなど、食べられるものがほとんど。

 

志保さんは、環境に配慮した生活を送ることを意識して、実家の庭で採れるドクダミやクチナシをコスメの材料に使ったり、有機栽培をしているハーブ園を訪れたり、自らの目と足で情報収集することを心がけているそう。

「実家のある御殿場市では、薬局でへちま水を精製してもらえたり、おばあちゃんがチンキを手作りしていました」と、昔から植物を生活に取り入れることが志保さんには身近だったのでしょう。

 

ホホバオイルやココナツオイルがベースのスキンケアクリーム。そこに、SPFが高いとされるレッドラズベリーのオイルを配合。チタンや亜鉛を加えれば、日焼け止めになり、マイカで色をつければ、BBクリームに。鉄や鉱石を使うことに抵抗がある方には、カカオやイナゴマメなど、植物由来の材料で対応してくれる

 

 

志保さん自身が、コスメを作る際に大切にしているのは、

「ただインターネットで検索して見つけたレシピを使うよりも、地球の環境にちょっとだけ配慮ができて、自分にも、自分の大切な人にも優しいものを選ぶ。それが、わたしにとって、心地よいことだったんです」という、エシカルな視点です。

たとえば、日焼け止めクリームに珊瑚の粉末を使用する際には、こんなことを教えてくださいました。

「市販のクリームに含まれるオキシベンゾンという成分が、珊瑚の発育に影響を与えているという研究論文があり、スキューバダイビング業界では、珊瑚に有害な成分を除いた日焼け止めが話題になっているんです」といったことや、ファンデーションの色づけにカカオの粉末を使うときには、海外にあるカカオ農園で、児童労働が問題になっていることを伝え、同時に、フェアトレードに取り組んでいるチョコレート会社についても紹介します。

 

こうした情報を伝えるのは、「地球や誰かのために、わたしにはできないことをしている人や企業を応援したい」という志保さんの思いがあるからです。

 

コスメを製作中にも、「分量は適当です!適当!」と笑いながら、使用している材料が、何でできたものなのか、どこから仕入れたものなのか、また、どんな社会問題が取り巻いているのか、丁寧に説明してくれます

 

 

志保さんがナチュラルコスメの世界に興味をもったのは、ご自身のつらい経験があったからでした。中学生のころから重い月経前症候群に悩まされていたそう。人によってその症状は異なりますが、生理の起こる前に腹痛や頭痛、眠気が起こることがあります。志保さんの場合は、イライラして、人に触れられることを極端に嫌がり、もともとの明るい性格とのギャップに、周囲を驚かせることもあったそうです。

看護師の仕事に就いたあとも、月経前には情緒不安定になり、採血の最中に、突然、泣き出してしまうなど、周りの人を困惑させてしまうことがありました。

 

志保さんは悩んだ末に、一旦、仕事から離れる決意をしました。新しい環境で気分転換をしながら、人生経験の幅を広げようと、ワーキングホリデーを利用して、オーストラリアへ留学することに。そこで、もともと興味のあったアロマテラピーを、本格的に学ぶきっかけとなる先生と出会います。

有機化学の観点から、精油の成分を学び、ラベンダーの香りで月経前症候群の症状が緩和されたり、ハーブティで便秘が改善されていくのを実感したのだそうです。

「アロマは、おまじないではないんだ。これを、誰かに教えてあげたい!自分が体感したことを近しい人に還元したい」と思うようになりました。

 

志保さんが自然療法を学ぶきっかけになったアロマの精油。コスメ作りにも生かされています。オーストラリアから持ち帰ったという「フラゴニア」の精油も

 

 

一年間のオーストラリア滞在を終えた直後、さらに学びを深めるために、バリ島に渡った志保さん。バリニーズマッサージを学び、オイルトリートメントと出会います。一カ月間の集中講座を経て、看護師をしながら、ホテルや個人サロンの出張トリートメントをして経験を積み、マッサージの基礎と手法を身に付けていきます。 さらに、知識を深めるために、NARDアロマインストラクターの資格やホリスティックマッサージのイギリスITEC認定国際ライセンスを取得しています。

その一方で、もっと日本人の身近な生活に、アロマやオイルトリートメントを取り入れるには、どうしたらいいのか考えていました。

 

志保さん自身、せっかく自作のスキンケア用品を使っていても、メイク時に原料の見えない化粧品を肌にのせることに疑問を抱き、手作りコスメについて調べることにしたのです。そんな時に出会ったのが大阪を中心に活動している薬草魔女SHOKOさんこと、増岡晶子さんで、志保さんは増岡さんのもとでコスメ作りを学びます。現在、志保さんのワークショップで配られる手作りコスメのレシピは、師匠である増岡さんの考えを参考にしながらも、志保さん自身の経験や知識を盛り込み、独自のアレンジを加えています。

 

「お客様に何を聞かれても答えられるように」と、学びの姿勢を貫く志保さん。海や森などの環境保全に取り組んでいる団体や、オーガニックや無添加など食の安全と向き合う料理家、価値観を共有する方々と積極的に知り合い、横のつながりを大切にしています。

今後は「コスメをより心地よく使うために、木でできた容器を考案したい」と笑顔で意気込みを話してくれました。

 

コスメ作りに使われる材料やアロマテラピーに関する豊富な知識に加えて、つらい月経前症候群を克服された、志保さんご自身の経験談。それを明るい口調で、ざっくばらんに伝えてくれるので、肌の悩みも相談しやすく、手作りコスメが決して難しいものではなく、身近なものに感じました。口にするものと同じく、化粧品も、一つひとつの原料を知ることで、それぞれを取り巻く環境が見えてきます。

 

自分の肌にも、肌が触れる距離の相手にも優しく、地球にもちょっとだけ配慮した心地よいコスメ。材料からこだわりをもって選べるのが、手作りならではのよさです。わたしも、化粧品を肌にのせるときに、自分や家族のことだけではなく、環境へ与える影響にも思いを馳せて、使っていきたいです。

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この記事を書いた人
本田真弓ライター卒業生
横浜市南区で生まれ育つ。とにかく好奇心旺盛で、外へ出ては、新しい発見を探している。海や山で遊んだり、土いじりをしたり、動植物と触れあうのが好き。第一子が誕生したばかりの新米母。
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