台所も家族の胃袋もお任せ! お客様を笑顔にする料理代行の仕事をのぞいてみました。
みなさんは時々、「誰か、ご飯を作ってくれないかな……」と思うことはありませんか?忙しいときや疲れたとき、体調がすぐれないとき、私は毎回思います。ある日テレビで家政婦さんが3時間で15品の料理を作っていました。依頼した家族は大喜び。プロの技術はすごい!間近で見てみたい!と興味がわいたので、今回は料理代行のお仕事をしている友人の現場をレポートしました。

15年前、私は0歳の息子を保育園に預けて、正社員として会社勤務をしていました。19時45分に保育園から帰宅後、手洗いうがい、息子にスルメをしゃぶらせて、スーツのまま風呂をわかして洗濯し、夕飯をつくって息子と食べて、入浴し、絵本を読み21時30分には寝かしつけ、その後、夫が帰宅する、というドタバタな平日の夜を過ごしていました。休日は、煮物やゆで野菜などのおかずの作り置きや、溜まった家事に追われて、息子を外遊びに連れて行く余裕は全くありませんでした。

 

今で言う“ワンオペ育児”で疲労困憊だった私は、当時社内で配られた福利厚生の冊子で、家事代行サービスを知りました。利用したくて調べましたが、1時間5000円の価格は、高く感じました。育児も保育園に頼っているのに、主婦が家事まで他人にお任せしてよいのだろうか……、周囲にも批判を受けるかもしれない……、という気持ちもありました。保育園は見学をして信頼できる園を選べたけれど、家事代行はどんな人が来るのかわからない不安もあり、結局利用には至りませんでした。

 

お料理代行キャストの渡辺愛さんです。愛さんはCaSyで働いてまだ1年強ですが、お客様の評価が高く、年1回のキャストセッションパーティーで表彰されました。胸のバッジやイニシャルの刺繍入りエプロンは、優秀なキャストの証です

渡辺愛さんは、私の所属する書道サークルの部長さんで、お料理代行のお仕事をされています。愛さんは20代の頃から、お母さまが経営する飲食店で厨房のお手伝いをしていました。CaSyのお料理代行の仕事は、手早く料理が作れる技術や経験が活かせて、お子さんが小学校から帰宅する時間には家にいられるので、働きやすいそうです。お料理代行サービスとはどういうものなのか、興味津々で愛さんのお仕事の現場をレポートさせてもらうことにしました。

 

愛さんの所属する株式会社CaSyは、関東・関西エリアで家事代行サービスを提供しています。お料理代行のほかに、キッチン、トイレなどの日常の掃除をするお掃除代行、専用機材や洗剤を用いてエアコンやレンジフードなどをプロが掃除するハウスクリーニングのメニューがあります。

 

CaSyでは所属するスタッフをキャストと呼び、愛さんはお料理代行のキャストとして働いています。キャストは定期利用者の専属となります。利用者とキャストのお互いの合意でマッチング成立となるので、利用者は、ぴったりのキャストに巡り会うためにキャスト登録ページでプロフィールや料理写真を閲覧できます。

 

お料理代行は3時間以上から利用でき、調理から片づけまで行います。料金は、スポット利用で1時間2500円。3時間の利用だと、7500円(税別・別途交通費700円)となり、定期利用だと料金は安くなります。食材や調味料、調理器具やラップ、保存袋や輪ゴムなども利用者宅にあるものを使用します。

料理の品数はキャストによりますが、愛さんは2時間半で10品以上の料理を作ることができます。目安は汁物1品、メイン3~4品、副菜3~4品、副副菜(小鉢のおかず)3~4品、プラス、リクエストがあれば、ごはんなどの主食がつき、残り時間に余裕があれば、追加で1品作ることもあるそうです。調理終了後は、残り時間30分で、盛り付けや片づけ、洗い物をすませ、調理に使用したところを拭き掃除し、調理開始前の状態に戻します。

 

今回のメニューです。チンジャオロース、サバの竜田揚げ、ブリの照り焼き、手羽先甘辛、山芋いそべ焼き、煮豚、ピラフ、キノコ汁、ブロッコリーと塩卵の炒め物、春雨とユリの花の炒め物等12品を予定し、結果16品の料理が出来あがりました!

愛さんのお客様は、共働き、産前産後、育児休暇中など、主に妊娠中や乳幼児のお子さんがいる女性が多いそうです。愛さんが調理中、お客様は別室で赤ちゃんやお子さんと遊んだり、室内でゆっくり過ごしたりしているとのことです。曜日や時間変更も、キャストとお客様との調整がつけば可能です。小さな子のお母さんが多いので、「離乳食を作ってほしい」「つぶすのは自分でやるので離乳食用の野菜を煮てほしい」「子ども用に野菜を小さく切ってほしい」「子どもの苦手な野菜を隠して料理に入れてもらいたい」といった細かいリクエストにも、愛さんは応えて調理をしています。

 

お客様のひとり、川崎市在住の小泉璃恵さんは、5歳、2歳、10カ月の3人のお子さんの子育てをしながら、ご夫婦二人で司法書士事務所を開業しています。料理代行を利用したきっかけは、思うように事務所のアルバイトを雇えなかったことです。アルバイトを雇う代わりに仕事をがんばって、そのぶん家事の負担を減らすために料理代行を依頼することにしました。現在は週1回の定期利用をしています。

 

「全ての料理が美味しいし、自分たちが作れない料理を食べられるのがうれしい。お店で食べる料理みたい」と小泉さん一家は、みんな愛さんの料理を喜んでいます。そして、一番良かったことは、時間の余裕ができたこと。夕飯を作る時間に追われない分、保育園から帰宅して毎晩30分、子どもたちとブロックやおままごとで遊ぶ時間ができたと、小泉さんは嬉しそうに話してくれました。

 

小泉さんと愛さん(右)。「頼んで良かった。もう、やめられない」と笑う小泉さん。「前回のガパオ、夫が喜んでいました。今回の汁ものも夫のリクエスト」。「気に入ってくれて良かった。今日のスープにはひき肉のお団子も入れておきました」と話すお二人。信頼関係が伝わってきました

愛さんの仕事ぶりを見せてもらって、さすがプロ!と感じたのは、調理に一切無駄な動きがなく、台所をきれいに使うところです。メニューから考えた調理手順は完璧に頭に入っていて、何品も同時調理を行います。ガスコンロ3つと電子レンジはフル回転です。

 

愛さんはメニューがかぶらないよう、お客様毎にノートをつけています。ノートを開き、同時調理の食材や調味料を全て並べていきます。牛乳パックは、まな板の汚れ防止用

今回使ってほしいとリクエストがあった中国の食材、乾燥したゆりの花。水で戻して使います。少し酸味があり、日本の芋がらに似た食感。持て余し気味な食材、冷蔵庫にあるしなびた野菜、冷凍焼けした肉や魚も、事前に連絡しておけば、料理に使ってもらえます

調理前、シンクを空にしてから調理がスタートします。愛さんは必ず牛乳パックをまな板に敷いて肉や魚の調理をするので、まな板を汚しません。テキパキと調理をしながら、道具はこまめに洗って次の調理に使うので、シンクに洗い物が溜まらず、調理中にでるゴミも、食材を袋やトレイから出すごとにビニール袋に入れてしっかり分別。調理後は、シンクの水回りや五徳だけでなく、ガス台周りの壁や台所の床まで拭き掃除していきます。

 

調理後、洗い物がどーんとシンクに溜まる私には、調理と片づけが同時に進んでいく光景がとても新鮮で勉強になりました。仕事で疲れて帰宅して冷蔵庫を開けたら、たくさんの美味しい料理が入っていて、ピカピカの台所が迎えてくれたら、とても嬉しいですよね。

 

調理をしながらすぐに洗い物。テキパキした仕事ぶりに惚れ惚れ

調理した16品のお惣菜は、冷蔵可能な3日では食べきれないほどのボリューム。付箋にメニュー名と冷凍可能の旨を書いて、冷蔵庫に入れる細やかな心配り

ピラフは一膳ずつラップに包んで冷凍します

周囲に頼る環境がなければ、自分ひとりで家事、育児を全て頑張るのは、ときに辛いこともありますよね。私は、今回の取材を通して、疲れているときはプロを頼っていいんだな、と思えました。外食してお店で同じくらいの品数の料理を頼めば、家族で1万円以上することもあるでしょう。自分の用意した食材と調味料で料理を作ってくれるのも安心です。また、料理の負担が軽くなる分、自分の時間が増え、身体が楽になり心の余裕ができるので、家族としっかり向き合えます。美味しい心尽くしの料理と、きれいな台所と、お気に入りのキャストさんと話すことで癒され、自分も家族も笑顔になっていくはずです。

 

私は現在の料理代行サービスに、支払う価格以上の価値を感じました。「他人に任せてしまっていいのかな……」という罪悪感で利用しないのは勿体ない。仕事や育児など、食事作りが大変な人にとって「頼れる人やサービスがある」と思えることは、きっと心強い味方になるでしょう。

Information

家事代行サービス CaSy(カジー)

https://casy.co.jp/

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この記事を書いた人
中島裕子ライター卒業生
川崎市中原区在住。高3男子の母。現在は、地元のタウン誌やfacebookで記事を書く。美味しいものや手作りが好き。今の関心テーマは、食と教育。趣味は書道。今年の目標もダイエットの成功と断捨離。森ノオトでは、ライターとして経験を積み、イベントに参加して世界を広げたいと思っている。
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