“ミツバチ”と仲良くなって 地域にポジティブな風を巻き起こす!
ミツバチを通じて、「人・街・環境」のつながりを創りだす「Hama Boom Boom! プロジェクト」。ミツバチの目線でまちづくりを手掛ける岡田信行さん(オルト都市環境研究所)に、地域にポジティブな流れを生み出すアイデアを伺いました。

森ノオトと岡田信行さんの出会いは4年前。横浜市青葉区の國學院大学たまプラーザキャンパスを舞台に2012年にスタートした「万葉エコBeeプロジェクト」を取材したことがきっかけでした。この事業は大学の屋上でミツバチを飼い、はちみつを採取する活動の中で、「はちみつづくり」だけでなく、環境指標動物でもあるミツバチを通じて、地域の人に、人や街、環境のつながりを感じてもらおう、花と緑に囲まれた暮らしに貢献していこうという試みです。
「Hama BoomBoom!プロジェクト」を主宰する岡田さんは、学生さんたちの指導員として事業の立ち上げから参画し、今年4月に6年目を迎えた今も毎週大学に通い、指導を継続中です。

「活動が地域に根付いて、循環していくのが喜び」と、ハチを飼うための指導をはじめとした数々の役割を引き受けている岡田さん。「大変ではないですか?」とお聞きすると、「よく、T.M.Revolutionみたいだねって言われます。Hama Boom Boom!プロジェクトってグループ名はついているけど、一人じゃん!ってね(笑)」

 

岡田さんがミツバチを通じた活動を始めたきっかけは、「横浜の未来社会を考えよう」というテーマのもと、各分野の専門家が集められた「UDSY(アーバンデザインスタディヨコハマ)」という団体の活動がはじまりでした。“郊外空間”、“環境空間”といったさまざまな部会がある中、岡田さんは“緑地空間”のメンバーとして参加していました。

 

「横浜の緑は減っているし、どうやったら守れるのかと。緑を増やすということを目的とした施策は多いけれど、もっとツールとして“緑”を使い、その過程の中で緑が増えていくプロセスが健全なのだろうと考えました。緑をやみくもに増やしても、その後に機能しなければあまり意味がない。緑があることを楽しんで、結果として増えていくためのバリエーションを考え始めました」

 

岡田さんが考えついたアイデアはどれも驚きに満ち、ワクワクするようなものばかり。ハチミツにたどり着く前には、なんと、みなとみらいに牧場をつくろうとしたのだそうです。

 

「みなとみらいのビルを背景に牛がいるというのは、すごくいいなぁと思ったんですよね。あの頃はまだ放置されていた野原もたくさんあったので。アイスクリームなども作っていけば話題にもなりますしね。今は“Hama Boom Boom! プロジェクト”をやっていますが、その時は“Hama Moo Moo!”で頭文字がみなとみらいの“MM”と同じでいいじゃないかと(笑)」

 

みなとみらいに牧場をつくろうとした岡田さんのアイデアを惜しむのは森ノオト事務局長の梅原。「もしもヤギだったら、太陽光発電のための草刈り対策のために放す例もあるし、いけるかも……!?」とさまざまな話題に花が咲く

 

残念ながら、牛の世話や匂いの問題で断念することになってしまいましたが、ほかには「おやじ」を活用するというアイデアもありました。

 

「横浜の未活用資源として、リタイヤしたおやじさんたちがいるじゃないかと。力はあるけれども発揮する場がない彼らを資源としてとらえて、やりたいことをやってみんながハッピーになれたらいいなということで、おやじさんたちは蕎麦打ちが好きな人が多いよね、だから蕎麦畑をつくろう!という話も出ました」

 

こちらも実現するためにはハードルが高く、何か面白いものはないか?と試行錯誤するなか、ミツバチにたどり着いたそうです。

 

ミツバチを扱うと決めたからには、いい加減なことはできないと横浜市内の養蜂家を訪ね、一から養蜂を学んだ岡田さん。「商店街の活性化をしていくため」「社会貢献活動として」など、ミツバチというツールは一緒でも、関わる団体によって、目的や視点はさまざまです。「万葉エコBeeプロジェクト」は國學院大学の創立130周年創立記念事業として始まりました。教育を学ぶ学生さんが講座を組み立て、知られざるミツバチの活動を、わかりやすく伝えることを大事にしています。

 

今年の「万葉エコBeeプロジェクト」の様子。学生さんたちの自己紹介から始まり、紙芝居を使って女王蜂や働き蜂の違い、ローヤルゼリーについてなど、紙芝居を使って分かりやすく説明してくれる

防護服を来て、いざミツバチが暮らす屋上へ!「働き蜂の寿命は?(答:1カ月)」「1匹のハチが一生で集めてくるハチミツはどのくらい?(答:ティースプーン1杯)」。クイズ形式でミツバチの生態について説明してくれるので、小さな子どもたちにも分かりやすい

遠心分離機を使って、ハチの巣からハチミツだけを採蜜。ぐるぐるとハンドルをまわすと、黄金色のハチミツがトロリと下に流れてたまっていく。糖度78度以上のものがハチミツと認められるそう

 

お楽しみの試食タイム。本物のハチミツは、砂糖水を混ぜた安価なハチミツとは違って、スーッと口の中で甘さが自然に消えていき、後味がさわやか。たまプラーザキャンパスから半径2キロメートルの花々の蜜の味だと思うと、自然がくれた恵みだということが実感できる

 

ハチを使ったプロジェクトのいいところは、ミツバチの行動範囲が2〜3キロということで、地域が限定されて分かりやすいところだと岡田さん。徒歩30分くらいの圏内なので、集中して考えられるといいます。昨年度から始まった横浜市南区の弘明寺にある横浜市立大岡小学校での試みは、小学校の屋上でミツバチを飼い、その過程で学んだことや採れたハチミツを活用し、6年間お世話になった地域の人への感謝を伝えようという総合学習に活用されました。

 

大岡小学校では、子どもたちがミツバチの行動範囲を歩き、自分の足で花を探して蜜源マップもつくりました。自分たちが住む街を見つめ直し、自然という環境資源を意識する流れは、ただ自然単体を見て大切さを学ぶよりも、大きな広がりが生まれたそうです。

 

「担任の先生の段取りが素晴らしかったこともありますが、教育分野のツールとしても有効なんだなということが分かりました。子どもたちが学ぶために動き出すと、地域の方も積極的に関わってくれるんですよ。これはハチを応援するというよりは、子どもたちを応援したいという気持ち。地域がつながって、『○○のお母さんがあそこでお店をやっているよね」と、ハチの行動範囲を意識することから、人同士の近い関係性へと話が展開していく場面もたくさんあって、とてもいいなと思いましたね』

 

そして、一つひとつのプロジェクトが、いつしかお互いを意識し合うようになり、重層的なつながりへと広がっていくと理想的、とお話は続きます。

「例えば“万葉エコBeeプロジェクト”や、大岡小学校での試みのように、全然違う目的を持った人が、ミツバチという共通点があることで一緒になれるきっかけになればいいな、お互いの活動を見ながら気づきがあるといいなと思います。それぞれにポリシーを持ちながら、ゆるやかに連携していく形がとれたら理想的ですね」

 

ミツハチはさまざまな切り口があるので、地域の自治会再生などにもきっと役立つと思います、と話す岡田さんの夢をお聞きしました。

 

「大岡小学校の動きがいまとても良くて、子どもたちや地域の方が入ってきた段階まできたので、次は地域ぐるみで盛り上げていくところにつなげていきたいと思っています。具体的には、ハチミツが地域にまわり、それを源泉に地域の経済がまわっていくという形ですね、活動資金も含めて。活動自体に価値を見いだすこと、これなら少し割高でもハチミツを買おう、それを使った商品を買おうという動きになり、それが活動や周辺の緑化に活かせるようになったらいいですよね。それぞれの地域が自立して、ポジティブな流れが回ることが理想です」

 

ミツバチを通じて、各地域で自然への理解が深まり、そこに住む一人ひとりに継続的に身近な環境を大切にする気持ちが生まれたら、こんなに素晴らしいことはありません。2018年から始まる、森ノオトと青葉区との協働事業「フラワーダイアログあおば〜花と緑の風土づくり〜」でも、9月に岡田さんのお話しを直接聞ける会を企画しています。國學院大学を会場に行いますので、興味を持たれた方はぜひご参加ください。

 

Information

フラワーダイアログあおば 〜花と緑の風土づくり〜

9月のプログラム「生きものと共に町の魅力を高める」

2018年9月7日(金)10:00-12:00

会場:國學院大学一号館のAV1教室(横浜市青葉区新石川3-19-9)

話題提供者:岡田信行さん
・「万葉エコBeeプロジェクト」の活動紹介

・「生きものと共に町の魅力を高める」岡田さんのお話

・ 参加者を交えたダイアログ(=対話)の時間

 

申込 :参加者全員の氏名、住所、電話番号、メールアドレスを明記の上、event@morinooto.jpまでお申し込みください。eメールをお持ちでない方は、上記内容を明記の上、FAXでお申し込みください。

 

主催:青葉区役所・NPO法人森ノオト

問い合わせ:

青葉区区政推進課 企画調整係 電話:045-978-2216  FAX:045-978-2410

 

万葉エコBeeプロジェクト

https://www.manyo-ecobee.jp

 

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この記事を書いた人
団桃子ライター卒業生
編集の経験を経て、森ノオトライターに。森ノオト編集部内では圧倒的にエコ度が低いことに引け目を感じつつ、“はぐれ森ノオト”目線で書ける記事もある、と開き直って記事をお届け。エネルギー源は、ヨガ、キャンプ、音楽、読書、コーヒー、美術館でのんびりすること。男子と女子、二児の母。
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