たまプラーザ駅から歩くこと10分。Botanical 56は、閑静な住宅街の中にあります。地図を頼りに進むと、マンションの入り口に立てられたかわいい看板が。「本当にあった!」と隠れ家を発見したようなわくわくした気持ちになりました。
Botanical 56は「GREENPLAZA大和園」と書かれたアーチをくぐったマンションの1階にあります。木製の台などに大小の植物がさりげなくコーディネートされたエントランスを通りドアを開くと、カフェや雑貨屋と見間違うようなお洒落な空間が広がります。
白いペンキで塗られた壁と天井、石のタイルを敷き詰めた床、古材や無垢材をふんだんに使った什器やカウンター。そして、素敵な鉢やハンギングで彩られた観葉植物がそこかしこに飾られています。ラフでナチュラル、カリフォルニアスタイルのとてもリラックスした雰囲気は、まさにグリーンライフのショールーム。取り扱う商品一つひとつにもこだわりを感じます。
出迎えてくれたのは、マネージャーの谷野(やとの)ありささん。素敵な商品やインテリアのテイストはありささんの好みですかと尋ねると、「私と夫の趣味なんです。一緒にインテリアや雑貨のお店などをよく見て回っていて、段々好みが似てきたんですよ」とのこと。
ご主人の谷野功明(やとののりあき)さんは、株式会社グリーンプラザ大和園(以下、大和園)を継いだ三代目社長です。ありささんは結婚後に、勤めていた証券会社を退社し、大和園を手伝うようになったそうです。功明さんとは、共通の趣味であるサーフィンを通じて知り合ったと聞いて納得。ナチュラルなだけでなく、洗練されたお店の雰囲気はカリフォルニアのサーフカルチャーを思わせます。
店名の「56(ゴロー)」は大和園の創業者である功明さんの祖父のお名前「五郎」から名付けたそうです。昭和26年に貸植木業として創業した当時、おじいさまは今のたまプラーザから渋谷までの長い道のりを、植木を乗せた重たいリアカーを引いて営業に歩いたというので驚きです。おじいさまへの敬意とともに、創業60年を過ぎても創業当時の“リヤカースピリッツ”を大切にと店名に「56(ゴロー)」を入れたのだとか。
聞けば、功明さんは大学卒業後、一年ほど別の造園会社で修業。その後、大和園で働き始めて数年でお父様がご病気になり、急遽三代目を継ぐことに……。当時功明さんはまだ20代。「働いていた方がごっそり辞めてしまって、まだ経験も技術も浅かったので本当に大変だったようです」と、ありささんは当時の功明さんの苦労を語りました。
そんなピンチを乗り越え、大和園を盛り返してきたとは、功明さんも“リヤカースピリッツ”を確かに継いでいるように思います。
住宅街に位置するのは、ここが大和園の本拠地だから。大和園の事務所をリノベーションしてお店にしたそうです。同じ敷地内には大きな温室もあり、ここには種類も大きさもさまざまな植物がたくさん。さすが大和園の管理とあって、どの植物もいきいきと元気!「リースして戻って来た植物は格安で提供しています」とありささん。
お店では植物に関する相談も気軽に答えてくれます。私は部屋に大きな観葉植物を置いてみたいと思っているのですが、植え替えを考えるとなかなか手が出せずにいます。そう話すと「お持ちいただければ植え替えますよ」との返答が。
Botanical 56では、植物に合った土を必要な分だけブレンドして販売するほか、植え替えも行っています。他店で購入した植物や鉢でも植え替えてもらえるとは嬉しいですね。(3号鉢 100円~10号鉢 1500円)
好きな植物を好きな鉢に植え替えてもらい、持ち帰ることができますので、初心者でも無駄なく、無理なく、グリーンのある暮らしを始められます。「グリーンにまつわるお悩みは、どんな小さなことでも話してください」と語るありささん。サービスのオーガニックコーヒをいただきながら、グリーンに囲まれたおしゃれな店内で色々と相談してみたくなります。ちなみに、コーヒーの淹れ方を教えてくれたのは、森ノオトでも先日取材した藤が丘のビーガンカフェ「ドイス バナネイラ」のシェフの中西弘章さんだそう。
「アンテナショップを始めたい」と言い始めたのは功明さん。ありささんが大和園を手伝い始め、植物のリース業や造園という未知の分野について勉強している最中でした。「まだ本業もままならないのに無理だと思ったんですが、熱のこもった話を聞いているうちに段々その気になってきました(笑)」とありささんは振り返ります。
そうして早速オープンに向け店舗のリノベーションに取りかかると、ありささんの妊娠が発覚しますが、準備は続行しました。そして、オープン直前にありささんは女の子を無事出産したそうです。「さすがにオープンは予定を3カ月遅らせました(笑)」と笑いながら語るありささんですが、「え?3カ月でオープンですか?」と驚く私。
当初はお店は土日のみにし、娘さんのお世話をしながらお店を営業していたそうです。「授乳している時にお客さんがいらして、気まずかったです」と明るく笑うありささん。オープン当初から、基本的にありささんが一人でお店を切り盛り。文字通り赤ちゃんを抱えてのスタートでした。
ご夫婦で趣味のお店を持つなんて素敵!と呑気なことを考えた私ですが、初めての子育てだけでも大変なのにお店を始めるとは余程のこと。Botanical 56には深い思いが込められていると感じ始めていました。
「どうしてアンテナショップが必要だったんですか」と質問してみると、功明さんは仕事をする中で、顔が出ないことにジレンマを感じていたと教えてくれました。確かに、マンションや商業施設、通りかかった庭先で日常的に観葉植物や植栽を目にしますが、誰がデザインし、施工したのかはわかりません。功明さんも目にした人たちと直接触れ合う機会はそうないでしょう。Botanical 56には、大和園のテイストを伝えたい、そして、お客さんが実際に植物を目にすることで信用につなげたいという思いが込められていました。
子育てをしながらの営業ということもあって、これまで特に宣伝はしてこなかったそうです。ありささんは「まだまだ軌道に乗ったとは言い難いのですが……」と前置きしてた上で、この2年くらい客足も伸び、遠方からわざわざお店に訪れる人も増えてきたことを教えてくれました。
転機は、功明さんが参加したツリーハウス作りを学ぶ講座でした。日本のツリーハウスの第一人者、小林崇氏が主催する講座に千葉まで1年ほど通ったそうです。ここで感性の近い多くの仲間を得たことが大きいとか。彼らは飲食業、アパレル業、カメラマン、サラリーマンと業種はさまざま。彼らとのつながりやアドバイスから、3年ほど前からイベントに出店するようになりました。「OCEAN PEOPLES」や「GREENROOM FESTIVAL」といった大きなイベントのほか、地元のマルシェなどに積極的に参加するようになったそうです。イベントでの評判も上々で、さらに新たな出会いや人とのつながりが生まれました。買ってくれたお客さんがお店まで訪れたり、SNSや口コミでBotanical 56の存在が徐々に広まっていったようです。
さらにBotanical 56を見て、二人の感性に共感した方が本業である大和園に造園を依頼するといった好循環が生まれ、アンテナショップとして重要な存在となりつつあります。転機となったツリーハウスですが、いつか敷地内に作りたいと考えているそうです。こちらも楽しみですね。
取材の帰り道、会社を辞め夫の家業を手伝うことにしたありささんや、急遽三代目として家業を継いだ功明さんについて思いを巡らせていました。
功明さん夫婦の感性を表現し、共感したお客さんとつながっていく。引き継いだ家業をより面白く、自分たちらしくしていくために、Botanical 56は大きな意味を持っているのだと感じました。そして、行動を起こすことの大切さ、夢を形にしていく上で力になるのは、やっぱり人とのつながりなんだなと思うと、購入した柱サボテンを抱えながら熱い気持ちになりました。
<Botanical 56(ボタニカル ゴロー)>
住所:横浜市青葉区美しが丘五丁目25-5
電話:045-507-9770(Botanical 56)
0120-417-128(フリーダイヤル)
営業:火曜日~土曜日 9:00~17:00
※イベントへの出店などのため臨時休業があります。
事前にウェブサイトなどでご確認ください。
HP:http://www.botanical56.com
ONLINESTORE:https://botanical56.theshop.jp
Blog:http://ameblo.jp/botanical56/
Facebook:@botanical56.jp
Instagram:@botanical56
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