毎年11月23日に藤が丘駅前公園で開催する「あおばを食べる収穫祭」。そのチラシのポップでキュートなデザインは、藤が丘のまちの印象を変えたと言われるほど。森ノオト=おしゃれ、のイメージをつくったのは、デザイナーの高山えりかさん(通称:ピリカちゃん)の功績が実に大きいのです。そんなピリカちゃんが奏でる森ノオトとは……。
「森ノオトって、なんだかおしゃれだよね」
よくそう言われるのですが、その印象をつくったのは、間違いなく「ピリカデザイン」のおかげだと、私は思っています。森ノオトのウェブメディア(2013年4月〜2017年4月)、団体のパンフレット(2013年〜2017年)、名刺、AppliQuéのショップカード、そして「あおばを食べる収穫祭」のフライヤーなど、森ノオトのメインデザイナーとして、長年活躍してくれています。
彼女のつくるデザインは、いつも明るく陽気で、目が見開かれるような斬新さがあります。私がピリカちゃんにデザインをお願いする時は、コンセプトだけを伝えて「あとは自由にやって!ピリカちゃんの感性を発揮して」と話しています。その時の彼女の感性、アンテナに何が引っかかっていて、それをデザインの形でどう表現するのかを、いつもワクワクしながら見ています。
そんなピリカちゃんが森ノオトに参加したのは2012年のこと。彼女との出会いを振り返りました。
―― 私とピリカちゃんが出会ったのは、確か3.11がきっかけでしたね。
ピリカ: 3.11後、自分の中で革命が起きたんです。環境のこと、原発のことを知りたい、知らなきゃだめだ、と思って。
私は当時、藤が丘駅前のマンションに住んでいて、娘は0歳でした。家の近くにあるオーガニックスーパーマーケット「MOTHER’S」によく通っていて、そこで働いていた小池一美さん(現在コマデリとして地産地消ケータリングで活躍中)のつくる豆腐のファンで、買い物しては、小池さんとしゃべっていたんです。
ちょうど震災の後、環境活動家の田中優さんのことが気になっていて、小池さんに「あざみ野で田中優さんの講演会があるんだけど、そこに関わっているのが北原まどかさんだよ」と教えてもらって、そこでまどかさんに出会ったんだよね。
確か同じ年に、藤が丘のイタリアンレストラン「ナチュラーレ・ボーノ」で、まどかさんが映画の上映会をやったんだよね(『地球にやさしい生活 ノー・インパクト・マン』)。近所で環境のことを学べて、しかも年の近い人がやっているから、それからまどかさんとよく会うようになった。
―― それで私、森ノオトのリポーターとしてピリカちゃんを勧誘したんだよね。当時、森ノオトはNPOじゃなかったし、一緒に活動する枠ってリポーターしかなかったから、森ノオト=リポーターだったな、って思う。
ピリカ: リポーターをやってみたものの、記事を書くのはそれほど好きじゃなかったな……というのが正直なところ(笑)。
(ピリカちゃんのリポーターデビューは2012年4月、料理が上手なので、レシピの紹介をしていました。2012年の「寺家回廊」フォトレポート、川和保育園の記事、センター南の「ワイルドライス」、子ども向け造形教室「にいはるびじゅつ」、森ノオトリポーターの「かばんの中身拝見!」「歯みがき粉」など、今でも人気の記事を手掛けています)
まどかさんに紹介してもらった人の縁で、川和保育園に子どもを入れたのも、人生の中で大きな出来事だったなあ。自然派で独自の方針をつらぬいている保育園で、かなり濃厚な時間を過ごしました。
―― 本当にいろんなことがあったね。
ピリカ: リポーターのみんなでフリマをして、それが活動資金になったり、それを今、ガレージセールのような形で続けてくれているのがうれしい。「森ノオセチ」は今でも続いていて森ノオトの名物だし、あの時にがんばって始めたことが、形を変えて今も残っているのが、本当にすごいな、って思う。
―― ピリカちゃんは2012年からのメンバーで、今はライターはやっていないけれど、長く森ノオトを支援し続けられる理由って?
ピリカ: 森ノオトの活動をコアにやっていた時期は、娘が2歳から小学生に入る前くらいで、今考えてみると、子育てでいっぱいいっぱいの時期だったなあ、って。未就学児を抱えていると、実は生活に余裕がないんだよね。そのなかでボランタリーな活動のボリュームが増えると、自分の時間を犠牲にしている感じが出てきて、「ああ、私、無理しているな」って感じるようになったの。自分の時間の優先度を取捨選択するなかで、森ノオトとは少し距離を置こうと思ったんだよね。そして、リポーターをやめて、NPO会員として応援することにしたんだ。
今、子どもが小学生になって、子育てがひと段落した感覚があって、ふと自分の生活を見つめ直してみると、森ノオトを通して得たものって本当に大きいなと気づいたの。森ノオトを通して、地域で人とつながることを学んだ。人と人をつなげるってことは、実はものすごいギフトを誰かの人生にもたらしているんだよね。そうしたら、森ノオトを10年続けているまどかさんに対して、ものすごい感謝と愛があふれてきて、「森ノオトを支えたい!」って気持ちが芽生えてきたんだよね。
だけど、自分を犠牲にするほど(地域活動を)やっちゃ、ダメなんだなあ、って思う。自分を犠牲にしないで、自分にとって「いい塩梅」でやるってのがいいんじゃないかな? 「いい塩梅」のアクションをみんながちょっとずつやれば、それがきっと(社会を変える)大きな一歩につながると思うんだよね。
きっと私の場合はそれが、デザインで貢献する、ってことなんだと思う。今、プラごみの問題が大きくて、何かできることはないかなと思っていて、それが私にとっては「森ノオトの10周年記念リユースカップをデザインする」ってことだった。デザインをすることで、地域に、地球にギフトができるならば、私は「与える側の人」になりたいな、と思ったの。
―― 先日、藤が丘で生まれ育った方から、こんなお話を聞いたの。「あおばを食べる収穫祭のチラシを見るのが毎年楽しみです。初めてチラシを手に取った時に、自分が住んでいるまちでこんなおしゃれなイベントが行われるなんて! と、藤が丘のイメージが変わったの。それから毎年、どんなチラシができるんだろう、私の生まれ育ったまちがこんなに素敵になるんだって、すごく誇らしかった」というようなことを言われたんだよね。ピリカちゃんのデザインが、こんな風に地域の人を勇気付けたり、まちの印象を変えたりする、素敵なエピソードだと思って感動したんだ。
ピリカ: 私は森ノオトに関わるまで、人のために、地域のために、社会のために何かしなきゃ! って思うことはあまりなかったの。まどかさんに誘われて、森ノオトでリポーター活動をしたんだけど、インタビューは肌に合わなくて。でも、自分の得意分野でもあるデザインをいろいろ手掛けさせてもらって、それで地域が元気になったり、私のデザインを地域の人たちに喜んでもらえたりすることで、「私のデザインで、地域の役に立てているんだ!」と感じられることが、本当にうれしいな、と思います。
それから、まどかさんは私のデザインを信頼して、自由にまかせてくれるのがとてもありがたいなと。フリーランスのデザイナーをやるなかで、実は自由にデザインを手掛けられることって少なくて。自分のインスピレーションがわいて、それが地域の人に喜ばれることで、逆に自分がものすごいギフトをもらっている感じがします。
―― ピリカちゃんは、これからどういう風に、地域や、環境に関わっていきたいと思う?
ピリカ: 都会で暮らしていると、「自然と遠い」なあって思う。それが人間関係にも反映しているような気がするんだよね。スマホ社会で情報があふれているのに、目の前にある大切なことを無視したり、見ないようにしたり、ちょっとでも自分に合わないとシャットダウンしたり。その原因って、都市の中に自然がなさすぎることじゃないかなあ、って思うんだ。
環境のこと、原発もそうだけど、それは遠い世界のことじゃなくて、全部自分の問題としてつながっていること。そんなシンプルなことを想像できる力って、大切じゃないかなあと思う。私のデザインは、これまでおしゃれなものとか、人気のあるものにインスピレーションを得てつくってきたけれど、最近はもう一歩進んで、「愛ってなんだろう?」ということを考えるようになったの。地域への愛、地球への愛、そんなものを表現できるようになればな、と思っています。
―― 愛にあふれたピリカちゃんの、これからのデザインも楽しみです。その愛がデザインの形で地域に滲み出せるような、そんな仕事をこれからもつくっていきたい!
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