まずは、子どもとの時間が圧倒的に増えたという藤本エリさんのお話からです。
エリさんは息子さんを出産後、生後6カ月から一時預かりなどを利用して働いていたので、親子でべったりと過ごすのは5年ぶりだと言います。
「仕事が一向に進まないのは悩みですが、一緒にご飯やおやつを作ったり、洗濯をしたりしています。ゆくゆくは家事の戦力になればいいなーなんてちゃっかり思っています」とのこと。
家事は小さい頃から遊びの一つとして覚えてもらうのが一番かも知れませんね。
わが家は中学3年生の娘と小学6年生の息子がいます。この長期休みを利用して、ごみ捨て、トイレ掃除など地味な仕事に取り組んでもらっています。
一方、本気モードで家族に家事を覚えてもらうことに取り組んでいるのは中島裕子さん。
数日間、体調を崩していたという裕子さん。その時の反省からご主人と高校生の息子さんに、家事を教えることにしたそうです。そして、裕子さん自身も、何がどこにあるのかをすぐにわかるように、引き出しにラベルを貼り、中身を透明な箱に入れ替え「見える化」を目指しているのだと言います。
また、世の中が食品を多めに買っておこうという流れの中、裕子さんは食材を買いだめするのではなく、なるべく家にあるものを食べ尽くすことを心がけています。その結果、今まで「食品ロスの温床」だったという冷蔵庫に空間ができ、買い置きしてあった乾物や缶詰も利用するようになったと言います。
今回のような非常時には家事に関しても見直すことが多いですね。わが家でも今まで管理できていなかったレトルト食品や缶詰などをきちんと管理し、使った分だけ買い足すローリングストック法がようやく定着してきました。この方法はずっと続けていきたいと思っています。
地元の良さを再発見したというのは本田真弓さん。真弓さんはフットワークが軽く、出産後もお子さんを抱っこして、積極的に活動を続けています。
そんな真弓さんに変化が訪れたようです。新型コロナ対策の影響でバスや電車などの公共交通機関を使うのを控えるようになった真弓さん。身近にある自然の豊かさに気がついたと言います。
「自分の住んでいる団地の敷地の中に、桜やハナミズキなどいろいろな樹木が植わっていること、そこへスズメやキツツキ、ホトトギス、何種類もの鳥が集まってきていること、もっと目を凝らせば、草花や虫などたくさんの生き物が住んでいて、メダカの泳ぐ池までありました。この環境を頭で知っているだけでなく、遊び心を持って楽しみ尽くそうと思うようになりました」
真弓さんは「いつか団地で見つかる生き物図鑑を作りたい」と教えてくれました。
近くにあるものの魅力というのは、いつもは見過ごしていたりしますものね。私も家の近くを歩く機会が増え、猫の集会所などを発見し楽しんでいます。
また、テイクアウトが増えたことで子連れでは行きづらかった馴染みのお店に久しぶりに顔を出したり、前から気になっていたお店の味を楽しむことができるようになったと言います。
テイクアウトの情報がわかりやすくなったのは本当にうれしいことですね。新たなお店とのご縁もありそうです。
南部聡子さんは子どもたちの成長や、仕事のやりがいについて教えてくれました。
聡子さんのお子さんは小学3年生と4年生。二人は「自分たちでクリエイティブな時間の使い方をしている」と紹介してくれました。
「こんなに時間があってどうするのかなと思って始まった休校延長ですが、子どもたちはあまり気になっていない様子。いつの間にか、やることをそれぞれ見つけています。例えば、二人はそれぞれの水槽でいつの間にか、お兄ちゃんはヤゴ、妹はタニシを飼い始め、時間があればのぞきながら、表札を作ったり、観察記録(特に変化なしの……)をこまめにつけたりしています」
聡子さんは、そんなお子さんたちの様子を「限られた空間の中で力を入れずに、エネルギーをもやせる生き方をしている」と表現します。そしてその姿を間近で見られるのは自分のとって貴重な経験だと言います。
子どもたちの底力を感じるお話ですね。
中学校と高校の非常勤講師である聡子さんは、仕事面での気づきも教えてくれました。
「一つの学校では課題を作成してネットで配信という形で関わっています。でも、新しい受け持ちの生徒たちとはまだ一度も顔を合わせられてはいません。それは初めてのことで、ネット上で向こう側にいる生徒たちへの伝わり方を考えたり、伝え方を試行錯誤しています。ただやはり慣れないこともあるせいか、問題を作っていても少し張り合いがないのです。いつも、脚本を当て書きするような感覚で、授業の準備はそのクラスの生徒たちの顔を思い浮かべながら、この子はどんなリアクションするかな?とか、あの子はここに惹かれるのではないかな?と考えながら作っていたことを、これを機に自覚しました。それが、私にとってこの仕事のやりがいの中心なのだと思います。今は来月?会えるはずの生徒たちを思いながら少しでもその時一緒に良い学びが作れるように準備したいです」
この環境だからこそ気がついたとも言える聡子さんの「仕事のやりがい」。学校の先生がそんな風に課題を作ってくれているのかと思うと、温かい気持ちになります。再開が待ち遠しいですね。
聡子さんは家族とともに、恩田、寺家、早野の様々な尾根道を散策しているそうです。「自然の変化は見ていて飽きない」と身の回りの変化の少ない日々の中、感じています。
忙しく順調に進んでいる時には見過ごしてしまうことがたくさんあります。私たちは、今回のように時間の流れが変わったときにふっと思い出すのですね。
松井ともこさんが教えてくれたのは人と人とのつながりのことです。
ともこさんは疎遠になっていた人たちとの関係がリスタートしたそうです。
「学生時代の友人や遠方に住む友人には、生活の変化とともに忙しさを理由にして、連絡を取り合えずにいましたが、安否確認という理由で、ある意味コロナをきっかけとして、どちらともなく連絡を取り合うということが増えています。そこから始まる雑談や懐かしい話題は、実際の顔は見られなくても、今の生活の中での安心感や心の癒しにつながっていて、あぁこれは自分にとって大きいなぁと感じています」
ともこさんのこの話を読んで、私も早速、学生時代の友達に連絡をしてみました。お互い、近況報告するだけでもほっとします。
いつでも会えるわけではないけれど、声をかければいつでもつながれる仲間がいるというのは心強いものです。
今、人と近づかないように、なるべく人と会わないようにと他の人との距離を置くように言われています。でもそれが逆に会えない相手を思いやり、心のつながりを深めているようにも思えます。
最後になりますが、私は、今回の暮らしの中でわが家の食としっかり向き合うことができました。
買い物の回数を控えるため、少し食料を多めに買っておこう、非常食も少し買い置きしようと思いました。非常食=レトルト食品、インスタント食品というイメージでお店に行くと、インスタントラーメンなどは棚からほとんど消えていて、出遅れてしまったかと少し焦りました。普段それほど食べているわけでもないのでないのに……です。
少し冷静になろうと家に帰り、わが家の食卓に本当に必要なものを考えました。米と味噌、塩、醤油、梅干し、そして海藻や豆や野菜などの乾物があればなんとかなりそうです。それらは家に買い置きもあるし、肉、魚、野菜などは手に入ります。そして、うちには美味しいぬか床だってあるじゃないかと思ったら実は何を心配することはないのだと安心しました。そして、かなり脱線しながらではありますが、わが家で目指す食の方向はこっちだったのだなあと再確認しました。
今、自分たちにとって本当に必要なものと分量を想像し、家の中の保存食を確認できたことは、頭の中を整理するよいきっかけになったと思います。
また、ここ数年、面倒になっていた保存食作りですが、わが家にとっては非常食としても欠かせないのだと気がつき、「やっぱり今年もがんばって作ろう」と決意を新たにしました。
森ノオトライターのおこもり生活、いかがでしたでしょうか。皆、それぞれ暮らしの中で見つけた幸せや楽しみを様々な角度から紹介してくれました。
このおこもり生活中に気がついた、「感謝の気持ちや大切なこと」を忘れないでいたいなと思います。そしてせっかく見つけた「こっちの方がいいこと」は環境が変わっても続けていきたいと思います。
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